【終活・遺言・相続相談】相談例46 遺言執行者

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例46 遺言執行者についての記事です。

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【相談内容】
相談者(76歳男性)から、「遺言書を書くつもりだが、長男(38歳)は、遺言執行者は費用がかかるだけなので、不要だと言っている。それでも遺言執行者を置く意味があるのだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
遺言者は、遺言執行の費用(遺言執行者報酬)について、あまり気にしません。自分の死後のことだからです。しかし、遺言執行者報酬によって取得財産が減る推定相続人は、「本当に遺言執行者が必要なのか」と気にされることがままあります。遺言執行者の必要性について説明する必要があります。

【1】遺言執行者

① 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
② また、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げるべき行為をすることはできず、これに反した相続人の行為は無効です。この無効は善意の第三者には対抗できません。
③ また、遺言による子の認知や相続人の廃除については、遺言執行者の執行行為が必要不可欠です。
④ これに対して、相続分の指定や遺産分割の禁止では、遺言の執行行為が存在しないため、遺言執行者は不要です。

【2】遺言執行者の必要性

遺言で遺言執行者を指定するメリット(必要性)については、以下のように整理出来ます。

【2-1】遺贈がある場合

① 遺言が遺贈を含む場合、遺贈義務者となる共同相続人全員が手続きに協力してくれるなら遺言執行者がいなくても遺贈は実現できます。
② しかし、共同相続人の一人でも協力してくれなければ、遺贈は実現できません。共同相続人が遺贈に反感を持つこともあるでしょうし、全員の協力を得るには手間もかかります。
③ そこで、遺言執行者を指定しておけば、共同相続人の意向に関係なく、遺言執行者による遺贈の履行を期待できます。なお、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとされました(平成30年改正、民法1012条2項)。

【2-2】特定財産承継遺言がある場合

① 遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人の相続人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)の場合、相続開始と同時にその相続人にその財産の権利が移転しますから、その相続人は単独で名義変更等の手続をすることができます。
② しかし、平成30年の相続法改正で、相続による権利の承継は、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ法定相続分を超える部分の取得を第三者に対抗できないとされましたので、その代わりに、遺言執行者が対抗要件を備える行為を当然に行えることになりました。
③ そして、特定財産承継遺言によって財産を取得した相続人が対抗要件の具備を放置する可能性もありますので、遺言執行者を指定して、その遺言を確実に執行させるべきです。

【2-3】清算型遺言がある場合

① 遺言者が、遺産分割方法の指定として、「遺産たる不動産Aを売却して、その代金を相続人甲と相続人乙が2分の1ずつ取得する」といった条項を含む遺言をした場合(清算型遺言)、これを実現するためには、共同相続人全員の協力を得て不動産を売却しなければなりません(売却する対象が、株式や投資信託等の場合も同じです)。
② 遺贈と同じく、共同相続人全員が快く協力してくれる保証はありません(売却代金の配分に不満を持つ相続人がいる場合はなおさらです)。
③ そこで、遺言者は、遺言で遺言執行者を指定し、不動産Aの売却と代金分配の権限を与えておくことによって、清算型遺言の実行を確実なものにすることができます。

【2-4】預貯金の処分がある場合

① 遺言者が「○○銀行の預金は解約して相続人甲及び乙に半分ずつ相続させる」という内容を含む遺言を残した場合も、清算型遺言と同じく、遺言執行者を指定する意味があります。
② 次に、遺言者が「○○銀行の預金は相続人甲に相続させる」と遺言した場合は、特定財産承継遺言ですから、相続人甲が単独で預金の名義変更又は解約払戻しができるはずです。
③ しかし、金融機関は、自筆証書遺言の検認調書や検認済証明書又は公正証書遺言を確認できても、それらの遺言より後に作成された(優先することになる)遺言が存在しないことまでは確認できません。
④ そこで、金融機関は、その遺言に頼ることなく、相続人甲に対して、その預金の処分に関する法定相続人全員の同意を明らかにする書面(相続人代表者指定届などと呼ばれ、法定相続人全員の自署と実印での捺印と印鑑証明書の添付が必要になる)を徴求し、そのような場合には、権利者(甲)以外の相続人の協力が必要になる可能性があります。
⑤ これに対して、平成30年改正の民法では、遺言執行者は「その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる」と明文化されましたので、少なくとも、遺言執行者から払戻し等の請求を受けた金融機関は、これを拒むことができなくなりました。
⑥ したがって、(金融機関の対応によりますが)預貯金の解約等に関しても、遺言執行者を指定する意味があります。

【2-5】遺言で遺言執行者を指定しなかった場合

① なお、遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができますが、そのために相続手続きがストップし、その間に、共同相続人が遺産を処分するといったリスクもあります。
② したがって、遺言で、確実に就任を承諾してくれる人を遺言執行者に指名するべきでしょう。

【3】遺言執行者の適格性

① 相談例のように、長男が遺言執行者の報酬を気にしているのなら、その長男を遺言執行者に指名することも考えられます。
② ただし、遺言執行者は、相当期間を定めた就任承諾の催告を受けて確答なければ承諾とみなされ、就任後遅滞なく相続財産目録を作成して相続人に交付し、遺言内容に疑問ある場合は遺言者の意思を合理的に解釈して遺言執行しなければならず、遺言執行者が任務を怠ったときその他正当理由がある場合には解任請求されることもありますから、財産管理等の経験のない相続人には荷が重いでしょう。
③ また他の相続人は、特定の相続人が遺言執行者になることを不快に思うかもしれません。これに対して、第三者の専門家を遺言執行者に指名すれば、事実上、共同相続人や受遺者の緩衝材としての役割を期待できます。ベテランの士業であれば、遺言執行手続きに精通している上、相続人や受遺者の相談や不満にも適宜対応できるので、円滑な遺言執行に適しています。

【4】遺言執行者の報酬

【4-1】遺言執行の費用

① 「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする」とされ(民法1021条)、遺言執行者の報酬、検認手続や相続財産目録作成の費用、相続財産の管理や遺言執行に必要な一切の行為をするための費用がこれに当たります。
② このうち、遺言執行者の報酬が最も高額になるでしょう。相談者の長男も、この点が問題だと思っているので説明が必要です。

【4-2】遺言施行者の報酬の額

① 遺言執行者を指名する場合、遺言執行者の報酬も遺言で定めることができます。そして、弁護士の場合は「遺言執行者報酬は、旧日弁連基準による」と定めるケースが多いように思われます。
② 金融機関は遺言時の契約で遺言執行者報酬について詳細に定めており、ある大手信託銀行の場合は、100万円の最低額を設け、1億円以下の部分につき、1.8%、1億超3億以下の部分につき0.9%などと、定めております。
③ 執行対象財産額が1,000万円の場合、弁護士が44万円で、銀行が100万円
3,000万円の場合、弁護士が84万円で、銀行が100万円、
1億円以下の場合、弁護士が154万円で、銀行が180万円
3億円の場合、弁護士が354万円で、銀行が360万円
④ 弊所の遺言執行者報酬は、最低額が30万円
3000万円の場合は60万円
1億円の場合は130万円
3億円の場合は330万円となっております。
⑤ なお、金融機関は、自社又はグループ会社の預金や投資信託は遺言信託の割引対象とし、遺言信託の手数料が安くなると勧誘しますが、もともと遺言信託は金融商品を売り込むツールだったのであり、投資信託等の取引で手数料を得るわけですので、よくよく考える必要があります。
⑥ また、遺言執行者報酬の算定基礎にも注意が必要です。遺言信託では、算定基礎となる財産の額を財産評価基本通達に基づく相続税評価額としつつ、小規模宅地の特例については、特例適用前の価額とするとか、消極財産は含まないといった定めを置くことがあります。
⑦ これらの規定で考えると、算定基礎の価額はかなり高くなりますし、かなりの額の相続債務があった場合でも、金融機関に支払う遺言執行者報酬は高額になってしまいます。

【4-3】遺言執行者費用の負担者

① 遺言では、誰が遺言執行の費用や遺言執行者の報酬を負担するのかも決めておくべきです。たとえば、「遺言執行者がすべての財産を売却換価し、そのうち3分の2を甲に、その3分の1を乙に相続させる」という内容の遺言だった場合、遺言執行者の報酬等を先に控除するのか、取得分に応じて負担するのか、折半なのかという疑問が生じかねません。
② したがって、「遺言執行者がすべての遺産を売却換価し、遺言執行者の報酬その他遺言執行の費用を支払った後、残額の3分の2を甲に、その3分の1を乙に相続させる」といった内容にしておけばよいと思います。もともと遺言執行費用は相続財産の負担ですし、こうしておけば無用のトラブルも回避できます。