【終活・遺言・相続相談】相談例56 調停不成立と遺産分割審判

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
パスポート申請、車庫証明申請も多く手掛けております。

【終活・遺言・相続相談】相談例56 調停不成立と遺産分割審判についての記事です。

東京都世田谷区の車庫証明は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の遺言書は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・戸籍収集支援・銀行手続は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の成年後見制度・任意後見契約・死後事務委任契約は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区のパスポート申請は【090-2793-1947】までご連絡を

【相談内容】
相談者(52歳男性)から、「亡母(享年83歳)の相続の件で弁護士に依頼し、長女(55歳)と次女(53歳)を相手方として遺産分割調停を申し立てたが話し合いがまとまらず、調停委員から、このままでは次回調停期日に調停を不成立とし、後は審判で判断してもらうことになると言われた。今の弁護士は信用できないので、審判になったらどうなるのか教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
この相談内容も行政書士や司法書士では対応できない、弁護士さんの独占業務の内容ですが、関連する相談として取り上げます。
遺産分割調停を不成立として、遺産分割審判に移行するとなった段階で、依頼人がようやく思惑通りにいかないと気づくことがあります。そうすると依頼人が依頼していた弁護士に対して不満を持ち、このような相談に来られることがあります。こういう事態を避けるためにも、遺産分割調停が不成立になり、遺産分割審判に至った場合を予想して、弁護士の先生方は依頼人に、説明しておく必要があります。

【1】遺産分割審判の説明

遺産分割の審判について相談者に説明すべき点は、概ね以下のとおりです。

【1-1】遺産分割審判の進行

① 遺産分割調停が不成立になれば、自動的に遺産分割の審判に移行します。遺産分割の審判は、裁判官が一切の事情を斟酌して遺産の分割方法を決める手続きです。
② 遺産分割調停の申立てから調停成立や遺産分割の審判迄の平均審理期間は、約12か月とされています。審判手続きでも、当事者の意見を聞き、あるいは立証を尽くさせるために審問が開かれることはありますが、調停事件で提出した書面や資料で十分と判断されたときには審問は開かれません。したがって「第一審がダメならば、第二審で最初から」という考えは通用しません。
なお、審判に対しては、2週間以内に即時抗告できます。

【1-2】遺産分割審判の対象となる遺産

① 遺産分割の対象となる遺産については、相続開始時点に存在していても、審判時に現存しないものは、審判の対象にはなりません。ですから、相続開始後に処分されてしまった遺産も対象にはなりません(民法906条の2第1項によって遺産とみなされるものは例外です)。
② また、審判では、当然分割される不当利得返還請求権や損害賠償請求権などの債権も、当事者間が審判対象とすることに合意していなければ対象外です。その結果、審判対象は、主として、審判時に現存する不動産と預貯金と株式になります。

【1-3】遺産の評価

① 遺産の評価については、特別受益や寄与分の計算では相続開始時の評価が基準になり、遺産分割の審判では分割時における評価が基準になります。
② 不動産については、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、実勢(鑑定)価格とするのかなどといった問題があるため、裁判所の手間を省くためにも、遺産分割調停の段階で、当事者にどの評価方法を採るのか合意しておくべきです。
なお、不動産や非公開株式の評価に関しては、抗告審での再燃を防ぐために鑑定が推奨され、費用を予納すれば鑑定はほぼ認められます。

【1-4】不動産の処分

① 審判は後見的立場からの具体的妥当性を重視するので、当事者の意図したとおりの分割にならないこともあります。たとえば、ひきこもりの相続人を自宅から追い出したいといった主張は、かえって裁判官の心証を害することになりかねません。
② また、遺産の価値の大半を自宅が占めるような場合は代償分割の審判が合理的ですが、相続人に代償金を払うだけの資力がないなどの事情を勘案し、当事者が望まなくても、自宅の任意売却や競売による換価を命じたり、共有分割の審判が下されることもあります。

【1-5】寄与分を定める処分の審判

① 特別受益の主張に関しては遺産分割審判の中でも考慮されますが、寄与分は、審判に移行した後、改めて家庭裁判所が定める期間内に寄与分を定める処分の審判を申立てる必要があり、それを怠ると遺産分割の審判の対象外とされることがあります。

【2】審判の予想

① 相談例では、相談者が申し立てた遺産分割調停の争点が明らかになっていません。そこで、相談者からこれまでの遺産分割調停の経過について事情を聞き、審判に移行することが相談者にとって有利か不利かを考えます。
② たとえば、相談例において、相談者が長女や次女の特別受益(あるいは使途不明金や名義預金)を問題にしたのに、長女や次女がこれを否定し、調停委員会もそれを追求してくれないというパターンが考えられます。
③ もちろん相手方に特別受益があることは相談者の側で主張立証しなければならず、それが奏功しないなら、特別受益がないものとして審判される可能性が高いでしょう。そうすると、調停不成立にするよりはむしろ調停で妥協を図った方が相談者の利益になるでしょう。
④ また、相談者の言い分が、自分は長男だし両親の面倒をみてきたことが評価されないのはおかしいとか、亡父の一次相続では長女や次女が得をしたので、今回は譲れないといった程度の主張であれば、審判でそれらの主張が認められる可能性は少ないので、調停不成立は避けたほうがよいと思われます。
⑤ 逆に、長女や次女の特別受益等については十分な主張立証があるものの、長女や次女が頑なにそれを認めない場合や、調停にも出頭しないような場合も考えられます。この場合にはむしろ審判を下してもらった方がよいでしょう。
⑥ なお、家庭裁判所は、調停が成立しない場合でも、調停に代わる審判をすることができます。これは、他の相続人は同意しているのに相続人の一人だけが調停案を頑固に拒んでいる場合や、調停期日に出頭しない場合に用いられます。
⑦ 相談例でも、調停委員会は、調停不成立とするのではなく調停に代わる審判を下す可能性がありますが、これによってある程度審判の結果を予想できること、調停に代わる審判に対しても異議を申し立てれば、審判に移行することを説明します。