【終活・遺言・相続相談】相談例14 判断能力に疑問がある高齢者と金融機関

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例14 判断能力に疑問がある高齢者と金融機関についての記事です。

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【相談内容】
相談者から「これまで父(85歳)の生活費を父名義の預金口座からカードで引き出してきたが、預金残高が少なくなったので、父と一緒に銀行へ行って1年前に契約した投資信託の解約を銀行に申し込んだ。ところが、待たされた末、銀行は成年後見人をつけないと解約に応じられないという。銀行を訴えられないか」と相談された。

【検討すべき点】
銀行が成年後見人の選任を求めたのは、預金名義人(父)の認知判断能力に疑問を持ったからでしょう。銀行を訴えたとしても、解約に応じるよう銀行に命じる判決が出る可能性は低そうです。父の投資信託を解約するためには後見開始を申立てるしかないと思われます。なぜそのようなことが起きるのか、これからどうすればよいかについて、相談者に説明します。

【1】高齢者に対する金融機関の対応

① 金融機関にとって高齢者は投資信託等金融商品売り込みのターゲットですが、逆に、高齢者による預金の引き出しや投資信託の解約は難題の一つです。
② 認知判断能力が低下したと思われる高齢者との取引に応じたのでは、後日、金融機関の責任を追及されかねないからです。預金名義人のキャッシュカードと暗証番号を利用してATMから出金される場合はともかく、やや頼りない高齢の預金名義人が直接窓口に来られて多額の預金や投資信託の解約を申し込まれた場合には、この問題が顕在化します。
③ 金融機関は預金名義人の認知判断能力に疑問があれば、受領権者としての外観を有する者への弁済(民法478条)の要件を満たさない可能性があるため、ほぼ例外なく、「成年後見人を付けてください」という対応をとります。
④ 相談者としては、後見開始を申立て、成年後見人から金融機関に対して投資信託の解約を申し入れるしかありません。
⑤ 最高裁判所事務総局家庭局作成の「成年後見関係事件の概況」によれば、法定後見の審判の申立ての動機として、「預貯金の管理・解約」を挙げるものが37.1%で最多です。つまり、金融機関がこのように対応するため、認知判断能力に疑いありと見受けられる場合には成年後見等を申立てせざるを得ない状況です。
⑥ しかし、相談例では、1年前に投資信託契約を締結しているので、相談者が納得できないものも当然です。

【2】金融機関の取り組み

① このような問題に対応するため、金融庁は、令和2年7月、高齢者に金融商品を頻繁に売買させて手数料を稼いだり、投資信託を勧誘する場合に他の商品と比較させないといった金融機関の手法を問題視するとともに、高齢者の預金の引き出しについても、それが医療や介護など明らかに預金名義人本人のための支出であれば柔軟な対応が望ましいとして、行政指導に乗り出しました。
② 全国銀行協会も、令和3年2月18日、認知判断能力が低下した高齢者らに代わって親族などが預金を引き出すことを条件付きで認めるとの見解を発表しました。
③ これによると、預金引き出しには原則として預金者本人の意思確認は必要で、依然として認知判断能力に問題がある場合には法定後見制度の利用を促すものの、医療費や介護施設の費用の支払など預金者本人の利益になることが明らかな場合には、引き出しにも柔軟に応じるよう全国の銀行に促すようです。
④ そうだとしても、診断書や主治医の意見書は必要か、医療機関等への直接振込に限って認めるのか、投資信託などの金融商品の解約はどのような条件下で認めるのか等の詳細はまだ決まっていません。

【3】代理出金機能付信託

① 金融機関でも、認知判断能力が減退した高齢者の預金の出金について、代理出金機能付信託という商品を用意しています。
② 「代理出金機能付信託」とは、預金契約者の認知判断能力が低下した場合に備え、契約者が金融機関に預金を信託し、契約者が指定した家族等の代理人が契約者の信託預金を引き出せるという信託商品です。
③ 大手銀行のどの信託も仕組みはほぼ同じですが、契約者は一定額以上の預金を信託銀行に信託し、その際に信託額の1~2%程度の管理手数料を支払い、出金の権限を持つ代理人と閲覧者を指定します。信託された預金を引き出せるのは代理人のみで、閲覧者が監視するというシステムで、代理人が預金を引き出した際には、閲覧者に通知されるため、不正の防止に役立つとされています。
④ このシステムを導入すれば、契約者が自分の意思を表示できず預金を引き出せなくなっても、代理人が生活費などを契約者の口座から支払うことができるということになります。

【4】代理出金機能付信託の問題点

① 代理出金機能付信託は契約行為ですから、その契約を行う時点では、預金契約者に契約を締結する意思能力が備わっていることが前提です。したがって、父の言動が怪しくなってきたと気づいたときには手遅れかもしれません。
② 代理出金機能付信託の長所は、後見開始の申立てと比べれば、比較的簡単であり、長男が代理人、次男を閲覧者と指定すれば、、家族の中で完結することです。それは専門職後見人や成年後見監督人に介入されることがないことを意味しています。
③ 受託者である銀行に対しては管理手数料を支払う必要がありますが、月額の利用料は少額に抑えられるので、専門職後見人等に支払う報酬に比べれば割安と思われます。
④ しかし、代理出金機能付信託は、家族の中で完結するが故に心許ない点があります。出金されたお金の使途は限定されませんので、閲覧者(次男)にも、代理人(長男)が出金したお金を何に遣ったかはわかりません。また、閲覧者に指定されなかった推定相続人(たとえば三男)には、出金の事実は通知されないので、蚊帳の外に置かれるような状態になります。このことが将来の争族(相続紛争)の原因になる可能性があります。

【5】相談者への説明

① 今回の相談例では、父に認知判断能力に問題があると思われる事情があるなら、銀行の言う通り、後見開始の申立てをするしかないと説明せざるを得ません。
② 仮に医師の診断書などで、父の認知判断能力が投資信託の解約に必要な判断能力を保持しているとされた場合は、その診断書などで金融機関と交渉することになります。

【終活・遺言・相続相談】相談例13 「借家人がおひとり様」大家さんの悩み

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【相談内容】
相談者(41歳男性)から「父が亡くなり、祖父の代から部屋を貸している長屋を相続したが、借家人の1人(88歳女性)は身寄りがなさそうだし、認知症が始まっている感じもするので、先のことを心配している。今のうちにできることはないか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
高齢者に部屋を貸している貸主もサ高住のケースと立場が似ています。ただし、サ高住の場合、入所者の生活を観察・把握しているのに対して、高齢の借家人は孤立しており、貸主も気づかないうちに孤独死されていることもあります。さらに、古くからの借家の場合は契約書がないことも多く、貸主は相続開始後の対応に苦労します。

【1】貸家の相続

① 昭和20年代は戦災で住居を失った方々の多くが長屋(木造1階建て壁共通の建物)の借家人になりました。都市開発により少なくはなってきましたが、今でも長屋は残っており、賃貸人も借家人も代替わりして借家契約が存続している例があります。
② このような借家契約は・「建物賃貸借契約書が見当たらない」・「契約書があり連帯保証人の署名と押印があるが、その保証人はすでに他界している」・「賃貸人と借家人の相続が繰り返されることにより両者の関係が疎遠になっている」・「不動産管理業者に借家の管理を委託せず、賃貸人が自ら集金する形態が多い」・「借家人が高齢化し孤独死の可能性が高くなる」等の問題が予想できます。

【2】借家人の死亡に関する問題

① 相談例の場合で建物賃貸借契約書が見当たらず、かつ、何も対策を講じないまま借家人が死亡した場合には、以下の問題が生じます。
第1 借家人(被相続人)の相続人が不明で、親戚・縁者にも連絡がつかなければ、相談者は葬儀、火葬、埋葬について対応できません(無縁仏になる可能性が高いでしょう)。
第2 借家人が死亡しても借家契約は相続人に承継されますし、厳密にいえば借家契約の合意解除には相続人全員の同意が必要ですから、弁護士や司法書士などによる相続人調査(職務上請求)が必要です(借家契約は一代に限るという契約書があれば別です)。
第3 借家契約を解約できても明渡しや原状回復の問題は残ります。サ高住のような介護施設の貸室ならば部屋も狭く動産も限られますから、貴重品を役所や警察に預かってもらって現状回復ができますが、長年の借家で荷物が多ければ遺品整理業者に原状回復を依頼するため数十万からの費用がかかります。
第4 借家人に相続人がおらず、又は相続人全員が相続放棄をすれば、相続財産管理人の選任申立てが必要になり、この申立てにも予納金が必要です。
したがって、相談者が貸家を相続した直後なら、この機を逃さず、新たな借家契約を締結し直すべきでしょう。

【3】孤独死

① 「孤独死」とは、一人暮らしの者が誰にも看取られることなく、自宅での突発的な事故や疾病により、助けを呼ぶこともできないまま死亡することを言います。
② 借家人が孤独死された場合は発見が遅れるため、ご遺体は腐敗や腐乱が進み、部屋そのものにダメージが及びます。したがって、家主は腐敗後の痕跡を消し、死臭を消臭するなどのため特殊清掃業者にクリーニング(特殊洗浄)を依頼せざるを得ず、全面改装が必要になることもあります。
③ 孤独死のあった部屋を新たに賃貸する場合、それが心理的瑕疵に当たるほどのものなら、貸主は告知義務を、仲介業者は重要事項として説明する義務を負いますので、次の借り手を探すのは困難です。したがって家主は借家人がどうやって生活しているのか気になって当然ですし、頻繁に借家人の安否を確認しなければなりません。

【4】借家人とのコミュニケーション

① 建物賃貸借契約書と連帯保証人を確認します。次に借家人から四親等内の親族を聞き出し、一度連絡を取って借家人の状態を知らせておくべきでしょう。また、借家人の認知症が進行するようでしたら、成年後見人をつけてもらうようお願いします。
② もちろん88歳の借家人が41歳の家主に親族を教えてくれるとは限りませんが、借家人も、常に孤独死の恐怖を感じておられるはずです。そうであれば、相談者自ら足しげく借家人を訪問し、思い出話などを交えて健康を気遣えば心を開いてくれるかもしれません。
③ 機械警備を行っている警備会社も、一人暮らしの高齢者の異変を察知できる見守りサービスを展開しています。これは、高齢者が体調の異変を感じたときに警備会社を呼び出したり、高齢者からの通報がなくとも、人感センサーなどを設置して緊急事態を感知するといったサービスで、月額数千円程度の基本料金がかかりますが、借家人やその家族のみならず、家主にとっても利用価値があるサービスです。

【終活・遺言・相続相談】相談例12 おひとり様の入所者の終活

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【相談内容】
サービス付高齢者向け賃貸住宅(サ高住)の担当者から、「身寄りがなく認知症の入所者(95歳女性)の病気が進行し、余命いくばくもないと分かった。連帯保証人がいないので、これから先の、財産の管理、延命治療、ご遺体の引取り、葬儀埋葬、賃料の請求、貸室の明渡し等について、どうすればいいかわからず困っている」と相談を受けた。

【検討すべき点】
介護施設も、身寄りのない入所者にもしものことがあった場合には、対応に苦慮します。認知症が進行して事理弁識能力がないなら、財産管理契約も遺言もできません。利害関係人である施設は、後見開始の申立権者ではありませんので、本人申立てを検討します。

【1】サ高住の実情

① サ高住は高齢者の居住の安定確保に関する法律によって創設された民間施設で、比較的健康な高齢者向けの住まいとしてスタートし、特別養護老人ホーム待機者の受け皿として発展してきました。
② 様々な業者が参入して過当競争状態になり、令和元年度は53施設が倒産又は廃業しました。サ高住は賃料だけでは経営が成り立ちにくいので、約8割の施設が訪問介護ステーションやディサービスを運営し、これらのサービスと併せて収益を上げています。

【2】介護施設の立場

① サ高住の経営的な視点だけで考えれば、要介護度が高く、自社が提供する介護サービスで売上を稼ぐことができ、かつ、手のかからない高齢者で部屋が埋まっているのが理想です(介護サービスが不要な自立した方は割に合いません)。その上、入所契約の際に保証人(推定相続人)がいれば安心できます。
② しかし、空室が多いと経営が苦しくなるので贅沢は言えず、保証人がなく、身寄りもない高齢者でも生活保護受給者でも、とりあえず入所させることがあります。そのような入所者が死亡した際には、ご遺体の引取り、賃料等の請求、貸室の明渡しなどの処理に窮します。
③ ちなみに、縁者がいないケースでは、市町村長に申告することによって無縁仏として処理してもらえますが、財産はあるが、相続人が不明な場合、その後の処理も問題になります。

【3】成年後見の活用

① 認知症の入所者について後見が開始すれば、施設(サ高住)は成年後見人に入所者の財産管理を任せることができます。
② 入所者死亡時には、成年後見人が死亡届を提出し、火葬及び埋葬に関する契約の締結に関する家庭裁判所の許可を得て、火葬、埋葬手続きを行うこともできます。
③ しかし、被後見人の葬儀については民法873条の2第3号に例示されておらず、成年後見人が葬儀を執り行うことまでは認められていませんので、葬儀は直葬になります。
④ 被後見人の相続開始後、成年後見人は貸室の明渡しや入院費通院費の支払いも弁済期の到来した債務の弁済(民法873条の2第2号)として行うことができます(残置物の廃棄や保管のための寄託契約の締結は「その他相続財産の保存に必要な行為」(同条3号)として、家庭裁判所の許可を得て行ないます)。
⑤ 成年後見人には延命治療の同意権はありませんが、相続開始すれば相続人に管理財産を引き渡す義務があるので、事前に入所者の戸籍を調べて親族(推定相続人)の有無や所在を確認し、連絡を取ってくれると期待できます。そうすれば、延命治療、葬儀及び埋葬などについて、親族の意見を伺うこともできます。このように身寄りのない入所者の成年後見人が選任されることは施設(サ高住)にとっては好都合になります。

【4】後見開始の申立て

① 後見開始の申立ては、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人等に限られており、介護施設などの利害関係人は含まれません(民法7条、11条、15条1項)。そこで、身寄りのない入所者でも、多少なりとも事理弁識能力が残っているなら、その入所者本人からの後見開始の申立てを試みることになります。
② しかし、入所者が意思表示できなかったり、あるいは「自分はまだ大丈夫だ。金を他人に任せる気はない。」と主張するならば、この方法は使えません。そうなると、四親等内の親族を探し出し、事情を説明して後見開始の申立てをお願いすることになります。
③ 四親等の親族も判明しないときは、市町村長から後見開始の申立てをお願いするしかない(老人福祉法32条)ので、市区町村の老人福祉課に相談することになります。

【終活・遺言・相続相談】相談例11 施設入所に関する相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例11 施設入所に関する相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(55歳女性)から、「同居している母(82歳)が転倒した際に腰椎を骨折し、介護が必要になった(要介護3)。母は自宅から離れたくないというが、自分たち夫婦にも仕事があるので、母の面倒を見るのが難しい。在宅介護するべきか施設入所させるべきか迷っている」と相談された。

【検討すべき点】
高齢者や家族にとって在宅介護か施設入所かは喫緊の課題です。できればケアマネジャーとも相談して解決方法を探します。在宅が無理ならば介護施設のパンフレットを取り寄せ、各施設のサービスの内容、費用、環境、本人の意思との適合性を考え、実際に現地を見学することも必要です。

【1】在宅介護の可能性

① 高齢者の家族から「親を施設に預けたい」と聞くことはよくありますが、ほとんどの高齢者は住み慣れた自宅を出て施設に入所することを希望されません。
② そこで、まずは、在宅のまま、介護サービスを受けて対応できないかを検討します。在宅の場合の介護サービスとしては、訪問型サービスと通所型サービスがあります。
③ まず、自宅への訪問型サービスとしては、訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリなどの方法があります。また、施設への通所型サービスとしては、ディサービス、ショートステイ、等の方法があります。
④ それぞれのご家庭によって組み合わせは異なりますが、たとえば、月・水・金曜日は日中ディサービスを利用し、火・木曜日は在宅で訪問介護を利用し、平日の夜と週末は子が親と一緒に過ごすというパターンなどをとるご家庭もあります。それでも、高齢の親が一人で過ごす時間帯が残ります。

【2】在宅介護の危険性

① 在宅における介護者の負担は、重くなることはあっても軽くなることはありません。そして、その状態が長く続くと、介護者も被介護者とともに高齢になって「老々介護」や「認認介護」(認知症患者が認知症患者の介護をする状態)を招きます。
② そして、介護者が自分の役目をこれ以上果たせないと悲観して、自殺や心中などの結末に至ることもあります。そのような悲劇を避けるためには、いずれ、施設入所を決断するしかないでしょう。
③ 住み慣れた家から離れたくない、子と一緒にいたいといった親の気持ちや、頼りにしてくる親を見捨てられないという子の気持ちは理解できますが、共倒れは避けねばなりません。

【3】介護施設の種類

① 相談者の母親の状態、相談者の家族や仕事の負担などをケアマネジャーに説明し、在宅介護で対応できないなら、介護施設への入所を検討します。以下に介護施設の概要を記します。
●【特別養護老人ホーム】入居対象(要介護3以上):「特徴」終身対応可能な公的施設。認知症患者も受け入れ可。費用が安いので、入居待ちが多く、入所まで待たされる。
●【介護老人保健施設(老健)】入居対象(要介護1以上):「特徴」リハビリ目的の公的施設。費用が安く、認知症患者の受け入れも可。入所待ちが多く、入所まで待たされる。終身を予定していないため、帰宅可能になると退所を促される。
●【介護療養型医療施設】入居対象(要介護1以上):「特徴」公的施設。認知症患者も受け入れ可。現在このタイプの施設は廃止される流れである。
●【軽費老人ホーム】入居対象(自立~要介護3):「特徴」公的施設。認知症患者も事情によって受け入れるが、入所まで待たされる。
●【ケアハウス】入居対象(自立~要介護3):「特徴」公的施設。認知症患者も事情によって受け入れるが、入所まで待たされる。
●【介護付有料老人ホーム】入居対象(自立~要介護5)「特徴」民間施設で認知症患者も入所可。ケアマネジャー他のサービスを提供するが、通常その施設指定の介護サービス以外選択できない。
●【住宅型有料老人ホーム】入居対象(自立~要介護5)「特徴」民間施設で、認知症患者も事情により受け入れる。
●【グループホーム】入居対象(要支援2~要介護5)「特徴」民間施設で認知症患者も入所可。9人を1ユニットとして集団生活をさせる。
●【サービス付高齢者向け住宅(サ高住)】入居対象(自立~要介護3)「特徴」2001年施行の高齢者の居住の安定確保に関する法律により創設された民間施設。ケア専門家が常駐するバリアフリー構造の賃貸住宅。認知症患者の受け入れは要相談。入居まで待たされる傾向。国土交通省管轄で厚生労働省管轄の住宅型有料老人ホームと区別されるが、内容はほぼ同じ。
●【健康型有料老人ホーム】入居対象(自立のみ)「特徴」民間施設。認知症患者は入所できない。
●【シニア向け分譲マンション】入居対象(自立~要介護5)「特徴」民間施設。認知症患者も事情により受入可。設備が充実しているものは高額。売却時にはかなり値下がりする。

【4】施設の検討(費用の比較)

① 施設入所に当たっては、施設入所にかかる費用を検討します。施設利用料には、入居一時金、月額費用(施設利用料、食費、介護費用、管理費など)があります。
② いくつかの施設の10年間でかかる費用を比較します。なお、受給年金額での変動費や都市部での割増、個室使用料、医療費介護費用の変動などは考慮していません。
【特別養護老人ホーム】入居一時金0円、月額費用10万円、10年間費用1,200万円
【グループホーム】入居一時金20万円、月額費用18万円、10年間費用2,180万円
【サ高住】入居一時金20万円、月額費用18万円、10年間費用2,180万円
【介護付き有料老人ホーム】入居一時金200万円、月額費用27万円、10年間費用3,440万円
③ 特別養護老人ホームの安さが目立ち、希望者が殺到して順番待ちになる理由がわかります(公的施設は入居一時金がないことが多く、月額利用料も数万円に抑えられ、特養は最後まで面倒を見てくれます)。
④ 民間施設である「介護付き有料老人ホーム」などの「有料老人ホーム」は、入居一時金が高く設定される傾向があり、サービスが充実しているので、月額利用料であまり差がないように思えても、10年も利用すれば大きな差が出ます。
⑤ 最近主流になりつつある「サ高住」や「グループホーム」では、入居一時金を比較的安く設定され、賃料以外も含めた月額費用は約20万円が目安です。
⑥ 検討すべき点は、この費用を利用者本人の年金収入で賄えるのかという点です。相談例での母の年金収入が、老齢基礎年金と亡夫の遺族厚生年金だけであるとすれば、月額約12万円程度でしょう。サ高住やグループホームを利用すると、確実に赤字です。収入と施設利用料の差額を利用者の現有資産で賄えるのかが問題です。
⑦ 同居の親子でも、子が親の資産(預貯金額等)を把握しているとは限りません。「親の為だから、自分が負担すればいいや」という考えも浮かぶでしょうが、共倒れは避けねばなりません。

【5】施設の検討(費用以外の要素)

① 入所候補の施設が清潔で、職員を含め雰囲気が良いかどうかも検討すべき点です。経営がしっかりしていなければ、介護施設の倒産もあり得ます。
② 相談例の母がその施設を気に入るかどうか、家族が訪問しやすいかどうかも検討します。家族はケアマネジャーと相談して候補となる施設を選び、パンフレットなどを取り寄せ、実際に母と一緒に施設見学に行きます。もっとも、高齢者は、いろいろと気に入らない理由をつけて施設入所を拒む傾向があり、家族やケアマネジャーが協力して説得することになります。
③ なお、成年後見人に選任されている弁護士や司法書士が、家族やケアマネジャーから施設入所について相談された際、「身上監護には関知しない」と突き放すような対応があると批判されていますが、後見人も下見に同行して被後見人の説得に当たるべきです。

【終活・遺言・相続相談】相談例10 介護に関する相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例10 介護に関する相談についての記事です。

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【相談内容】
母親(79歳女性)と同居している相談者(46歳男性)から、「母に認知症の症状が出始め、一人で外出することも危なくなってきた。妻(40歳)にも仕事があり、2人の子ども(9歳・6歳)もいるので、これ以上、家族で母の面倒を見るのは難しい。どうすればいいか。」と相談された。

【検討すべき点】
同居している親が自分のことを自分で出来なくなり、家族による介護も限界を迎えれば、介護サービスを利用するしかありません。また、親の介護と子の養育が重なる場合は、仕事との両立も困難です。相談者に対しては介護サービスの内容を説明します。

【1】介護保険

① 介護保険は、平成9年(1997年)に制定された介護保険法により、平成12年(2000年)4月1日に始まった社会保険制度で、高齢者が尊厳を保持し自立した生活を営むことができるよう保険医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うものです(財源は公費と介護保険料と自己負担で賄われます)。
② 寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする「要介護状態」になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要とする「要支援状態」になった場合に、介護給付や予防給付を受けて、介護サービスを利用することができます(介護保険法1条、2条)。

【2】地域包括支援センター

① 介護保険の適用を受けるため、相談者に、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターへの相談を勧めます。
② 地域包括支援センターは、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関で、保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士などが置かれ、専門性を活かして連携しながら業務に当たります(介護保険法115条の46)。
③ 地域包括支援センターは、地域ごとに置かれており(中学校区などに一つ程度)、高齢者にとっては「駆け込み寺」ないし「なんでも相談所」の役割を担いますので、介護保険に関する事以外でも、日常生活の支障に関することなら地域包括支援センターに相談できます。

【3】地域包括支援センターに置かれる専門職

① 「保健師」とは、看護師資格を持ったうえで国家試験を受け、厚生労働大臣の免許を受けて保健指導に従事する者(保健師助産師看護師法2条)、約5万人が稼働しています。なお、助産師は約4万人、看護師は約121万人、准看護師は約30万人です。
②「ケアマネジャー」(介護支援専門員)とは、介護保険制度においてケアマネジメントを担当する有資格者(介護保険法7条5項)で、要支援・要介護認定者とその家族から相談を受け、介護サービスの給付計画を作成し、自治体や他の介護サービス事業者との連携や調整を行ってくれます。平成28年時点で約66万人が合格しています。
③ 「社会福祉士」とは、日常生活を営むのに問題がある人からの相談に対して助言や指導、援助を行う専門職の国家資格で、全国で約25万人が登録し、成年後見人にもよく選任されています。

【4】介護保険適用の流れ

① 地域包括支援センターでケアマネジャーに相談し、要介護認定(要支援・要介護)を受けて、ケアプラン(介護サービス計画書)を作成してもらいます。要支援・要介護の認定者は、全国で約700万人います。介護認定を受けると、原則1割の自己負担で、介護サービスを受けることができます。
② 介護サービスの対象となる要介護状態や要支援状態にあるかどうか、該当するならどの程度かの判定を行うのが「要介護認定」で、保険者である市区町村に設置される介護認定審査会が判定します。
要介護認定は、介護サービスの給付額に反映されるため、その基準は全国一律です。そこで、保険・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会が、高齢者の心身の状況調査に基づくコンピューター判定結果(一次判定)と主治医意見書などに基づいて、審査判定(二次判定)を行います。
③ なお、この過程で認知症と診断されることもありますが、介護保険の適用に関しての調査ですので、その判断をもって、遺言能力等の有無を判断する決定的な材料とすることはできません。

【5】要介護認定の基準

① 要介護認定は「介護の手間」を表す「ものさし」としての時間である「要介護認定等基準時間」を、所定の事項にあてはめ、さらに認知症高齢者の指標を加味して実施するもので、「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令」として定められています。

【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居についての記事です。

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【相談内容】
相談者(62歳男性)から、「田舎で一人暮らしをしている母(86歳)が認知症のようなので、心配している。弟(次男59歳)もいるが、私は長男だし、私の2人の子も就職して家を出たので、母を引き取って、妻(60歳)と3人で暮らそうと思うが、どうだろう」と相談された。

【検討すべき点】
子が認知症の親を引き取って面倒を見るというのは美談とも言えるいい話です。しかし、実際の世話をするのが息子ではなくその配偶者であれば、その配偶者の理解は不可欠ですし、先々のことも考えておかなければなりません。また、兄弟姉妹への配慮や田舎の実家の処分も検討材料です。善意だったとしても、それが仇にならないように、将来を予測したアドバイスが必要になります。

【1】親と同居のパターン

① 別々に暮らしていた子が高齢の親と同居して面倒を見るパターンとしては、概ね以下の4つに分類されます。
(1)子が親を田舎から呼び寄せる「引取り」
(2)子が実家に戻って親と同居する「実家での親との同居」
(3)複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション」
(4)子が自宅と実家を行き来する「半同居」
相談例はこのうちの(1)のパターンです。

【2】当事者の心理

① 一般的に高齢の親は住み慣れた自宅から離れたいとは思わないので、母の気持ちを考える必要があります。それでも、母が長男の申出に応じたのなら、自宅で自立して暮らす自信がなくなり、地元の施設にも入りたくない(大勢の前で恥をかくのが怖い)といった気持があるからかもしれません。
② 長男としては、長男の責任を果たしたい(在宅介護してあげたい)という気持ちが強いのだろうと思います。男性で単身の子が親を引き取るというパターンはあまり見られないので、配偶者(妻)が母の面倒を見てくれるだろうという、甘い考えがありそうです。
③ しかし、相談者の妻としては、義母との同居は歓迎できることではないケースが圧倒的です。そうであれば、同居すれば義母の資産を流用させてもらえるとの期待を抱くことは当然あり得ますし、いざとなれば施設に入居してもらうという考えもあり得ます。
④ 一方、次男は母の介護問題から逃げられるので、あまり文句を言わないでしょう。長男一家が母の財産を多少流用することも想定範囲かもしれません。しかし、母の財産が一気に減少したり、母から長男一家への恨みつらみを聞かされたり、長男が母を引き取って間もなく施設に入所させたりといった事情が生じれば、「親孝行は口先だけ」と長男夫婦を非難し始めるでしょう。

【3】同居と介護

① 親との同居は、もちろん在宅介護を意味しますが、在宅介護のたいへんさは経験してみないとわかりません。介護サービスを利用するとしても、徘徊、癇癪、愚痴、下の世話などを経験し、それまでの生活が制約され、認知症が進んだ親から感謝されなくなれば、やがて我慢の限界を迎えます(認知症の見当識障害から、排泄物を弄んだり壁に塗りたくる等の症状も見られますので、そうなると一層我慢することが辛くなります)。そうなると施設への入所を選択せざるを得なくなります。
② 母の他界後、遺産分割の段階になれば、長男夫婦には「介護の苦労はどう評価してくれるのか」という気持ちが生じます。
③ 寄与分(民法904条の2)には、「特別の寄与」との厳しい要件があり、よほどのことがなければ認められません(上記のような症状の親の面倒を見る程度では、認められません)。
④ 平成30年民法改正では、配偶者の苦労に配慮して、相続人ではない親族(相続人の妻など)が被相続人に対して無償で療養看護などの労務を提供した場合には、特別寄与料が認められることになりました(民法1050条)が、寄与分と比べて要件が大幅に緩和されたわけではありません。実際どのような場合に請求が認められるかも、まだ判例がなく不透明です。
⑤ したがって、相談者は、同居後に在宅介護が不可能な状態になったらどうするのか、また、在宅介護は特別の寄与に認められにくいということを考えなければなりません。

【4】親の財産管理

① 親と同居するには、他の兄弟姉妹から親の資産の流用を疑われないように、親の財布と子の財布を完全に分ける必要があります。具体的には、親子双方が別の家計簿をつけ、親の出費は出来る限り口座引き落としや振り込みを利用し、ATMからの現金出金を避け、1年に1度は他の兄弟姉妹に預金通帳の写しや収支の明細を送ることを勧めます。日常生活を写真や動画に写しそれを送るなどの工夫が大切です。
② このことは、長男が母の成年後見人になったとした場合に必要となる行為でもあり、成年後見を申し立てない場合でも、任意財産管理契約を締結したのと同じ運用と報告をすべきだということです。
③ よく問題となるのは、孫の入学や卒業の祝い金、結婚祝、出産祝、新築祝等の現金出金ですが、兄弟姉妹の各ケースを同額としておくなど、事前に話し合いで決めておけば、紛争を回避できます。
④ また、母を迎え入れるのに、バリアフリーなどのリホームや階段風呂場トイレなどに手すりを設置する等の工事を行う場合も、事前に兄弟姉妹の同意を得て、領収書を保存することが大切です。
⑤ 母の住んでいた田舎の実家は、帰る予定がないならば、空家問題を避けるためにも早めに処分すべきです。これは相談例では弟がいますので、よく話し合って決める必要があります。
⑥ 相談例でいう弟の立場の人から相談を受けた場合のアドバイスとしては、長男に母の生活費を教えてもらい、その一部でも分担して母名義の口座に仕送りすることをお勧めします。これは長男の浪費の抑止にもつながります。

【5】他の同居のパターン

① 相談例とは違うケースですが、【1】同居のパターンの(2)「実家に子が同居」のケースについて、子が身軽な単身者である場合が多いようです。この場合、非同居の兄弟姉妹からは、同居の子が自分の都合で親に寄生しているとみられるリスクが高くなります。このケースは親の預金の流用や自宅相続などの問題でもめやすいため、親の財産管理は【1】(1)の「呼び寄せて同居」パターンより気を使い厳格にすべきでしょう。
② これに対して【1】(3)の複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション型」のパターンは、たとえば2か月ごとに、長男や次男・長女や次女の家を行ったり来たりするもので、あまり多くは見られませんが、高齢の親にとっては移動が負担になり、頻繁な環境の変化は認知症の進行にも悪影響を与えるので、あまりお勧めはできません。
③ また、【1】(4)の「子が実家と自宅を行き来する半同居」は、子が金曜の夜から日曜日まで実家に戻り親の介護をするといった方法です。その子にとっても大きな負担になることは自明なので、兄弟姉妹の仲がこじれることは少ないのですが、二重生活の為、費用面でも、体力面でもこの負担が重くなり、長続きしないケースが多くなります。

【6】親の言動についての注意

① 同居の場合に限定されませんが、認知症が進んだ高齢の親は、子どもの気を引きたいがゆえに、目の前の子に迎合する言動が多くみられ、目の前にいない子の悪口を言う傾向があります。
② 例えば、次男に「長男夫婦にご飯を食べさせてもらえない」「長男に預金通帳を取り上げられた」といい、長男には「頼りになるのはおまえだけだ」「次男は私の財産を狙っている」などと媚びるのです。高齢者として自然ともいえる行動ですが、子どもらがその言動を真に受けると、確実に争族の種になります。これを避けるためには親に「子供の悪口は言わない」ことを約束してもらうことと、兄弟姉妹間で話合い、親の言動を真に受けないとしておくことですが、実際は難しいところです。

【7】相続開始前の紛争(前哨戦)

① 親と同居していること非同居の子の対立が深まれば、相続開始前でもトラブルが生じます。
② 長男が親が「次男の顔も見たくない」と言っているとして、次男との面会を遮断することがあります。実際、親が同居の子の顔色をうかがってそのような発言をすることもありますが、非同居の子からすれば、それは許せるものではありません。そこで、自宅に押し掛け、警察を呼ばれ、弁護士に依頼して面会交流を求める親子関係調整調停事件に発展することもあります。
③ しかし、子に「親との面会を求める権利」はありません。「親が会いたくないといっている」として調停期日の出頭を拒否されると打つ手がありませんし、人身保護法2条の申立ても要件が厳しく、うまくいく見込みはあまりありません。
④ そこで、腹に据えかねた非同居の子が、ディサービスの帰りに親を連れ去るといった自力救済も起こり得ます。これに対して、同居の子が親の取返しを図ろうとすると、今度は非同居の子が「親は家に帰りたくないといっている」と主張します。
⑤ さらに、親を確保した子が、遺言書を書かせ合うといったこともあります。離婚事件の子供の取り合いに似ていますが、こうなると手の施しようが有りません。
⑥ その他、非同居の子が、同居の子が親の財産を費消することを予防するために後見開始を申し立てることも頻繁に見受けられます。そして、同居の子は家庭裁判所からの意見照会で後見開始の申し立てを知ることになりますが、例外なく激怒し紛糾します。
⑦ 相続前でもこれだけもめていれば、相続発生後に紛争になるのは必至です。親との同居はその遠因となるかもしれませんので、相談者には以上のリスクをお伝えし、十分に検討していただくようお勧めします。

【終活・遺言・相続相談】相談例8 ゴミ屋敷

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【相談内容】
相談者(55歳女性)から、「一人暮らしの叔母(84歳)の家に行ってみたところ、ゴミで足の踏み場がなく、玄関外にもごみが散乱していた。隣近所の人からもなんとかしてと言われたが、私がゴミを整理しようとすると叔母が怒り出し、どうすればよいか困っている」と相談された。

【検討すべき点】
高齢者の一人暮らしの家がゴミ屋敷と呼ばれ、近隣住民が迷惑しているというニュースをよく見るようになりました。ただし、本人が「ゴミ」と思っていなくて、ゴミではないと言い張ると、有効な手段がないのが現状です。令和3年民法改正により、管理不全土地管理命令や、管理不全建物管理命令の制度が新設されましたが、ゴミ屋敷問題の解決には、まだまだ難しい問題が残されています。

【1】ゴミ屋敷とは

① 高齢になると、どうしても物忘れが多くなり(認知症が加わればなおさら)、さっきまで手元にあった物がどこに行ったか分からなくなります。間違えて大切なものを捨ててしまったらたいへんだと思い、部屋に物があふれます。
② たまにゴミをだそうと思うものの、分別収集日は覚えていないし、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ごみ、ペットボトル、紙パック、粗大ごみなど、の分類なんてできるはずもありません。重いゴミ袋を抱えて階段を上り下りするのも一苦労ですし、ゴミ集積所で分類ミスを近所の人に指摘され怒られるのも嫌でたまらず、だんだんとゴミ出しが億劫になってきます。
③ さらに、必要なときに目的のものが見当たらないと、認知症や物忘れだとは認めたくないので、「盗まれた」と言い出します。「盗んだ」と疑われるのは、様子を見に来る家族や訪問介護のヘルパーで、「盗まれたもの」は、通帳や印鑑などに限らず、眼鏡だったり、野菜だったり、下着だったりします。
そして「そんなものは誰も盗みませんよ」といわれると、「じゃあ、私への嫌がらせに違いない」とひとを遠ざけるようになります。
④ さらに高齢者は「頼れるものは金しかない」という感覚に陥りがちです。そこで、手元に現金を置いて見せびらかし、家族や知人の関心を引こうとすることがあります。ところがその現金を誰かが狙っている気がして、家の中のあちらこちらに隠します。そしてその隠し場所を忘れてしまうので、なおさら物が捨てられなくなります。そんなタイミングで誰かが「整理しよう」と声をかけると、現金を狙っているとしか思えなくなり、極めて強い拒否反応(怒り出す)を示します。
⑤ このような背景で、高齢者の一人暮らしの場合はかなりの確率で、屋内は足の踏み場もない状態になっているという印象です(屋外までゴミがあふれているのは末期症状です)。

【2】ゴミ屋敷の解決方法

① このような傾向が進行すると、やがて玄関外にもゴミがあふれ、異臭がしたり、害虫が発生したり、景観や通行を害したりするようになります。この段階でようやく近隣からのクレームで「ゴミ屋敷」と認識されます。しかし、本人が「これはゴミではない」と言い張る限り、それをゴミとして撤去する方法はありませんでした。
② 横浜市や大阪市など地方自治体によっては、相談窓口を設けて、指導・勧告・命令・代執行を内容とする条例を定めて取り締まろうとする動きがありますが、再発防止が保証できないことや強権的な措置には馴染まない面もあり、難しい問題に違いありません。
③ なお、居住空間に価値のない大量の商品を度を越して収拾することにより、著しい苦痛や不全を起こすことは、近年「強迫的ホ―ディング」(ためこみ症)とよばれる精神疾患と分類されるようになりましたが、薬物療法や認知行動療法が採られるケースもあるようですが、すぐに寛解するような有効な治療法は見つかっていません。高齢者には片付ける気力も体力もない場合が多いので、家族としては、高齢者の気持ちをなだめて一緒に片付けようと提案する程度のことしかできないのが実情です。

【3】管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

① 令和3年民法改正の一環として、相続時の登記の義務化などが規定されましたが、同時に、管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令の制度が設けられました。施行日は令和5年4月1日です。施行後はこの制度によってゴミ屋敷問題は対応ができる可能性があります。
② 概要としては、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは利害関係人の請求により、当該土地を対象として管理不全土地管理人による管理を命ずる処分(管理不全土地管理命令)をすることができ(改正民法264条の9第1項)、その効力は対象土地にある動産に及びます(同条2項)。
③ また、管理不全建物についても、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人による管理を命じる処分(管理不全建物管理命令)ができるようになりました(同法264条の14第1項)。
④ しかし、この改正法によるとしても、相談者(姪)自身は申立権者たる利害関係人に当たらない可能性があること、申立人は予納金を負担させられること、戸外のゴミについては管理不全土地管理命令によってある程度は片付けられるかもしれないが、屋内のゴミはそのままとなり、やがて元の木阿弥になる可能性があるなどの問題があります。
⑤ したがって、管理不全土地管理命令などの運用が不明である現時点では、相談者に対しては、できる範囲で叔母を説得すべきであるものの、最終的には行政対応に任せ、大きな荷物を背負い込まないようにアドバイスすることになると思います。

【終活・遺言・相続相談】相談例6 一人暮らしの親について子供からの相談

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【相談内容】
相談者(女性50歳)から、「母親(82歳)が田舎で一人で暮らしているが、認知症が始まってきているように感じて、振り込め詐欺や悪質商法の被害に遭わないか不安です。同居することはできませんが、何か良い方法はありませんか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
「おひとりさま」の問題の一つとして、特殊詐欺や悪質商法の被害に遭いやすいということが言えます。一度そうした被害に遭うと、その情報が流通して、何度も特殊詐欺や悪質商法のターゲットとなることがあります。
ハード面の対策として、固定電話の見直しなどが挙げられます。ソフト面でも、高齢者の寂しさを癒すために接触の機会を増やすことで、話す時間を作っていくことが大切です。

【1】特殊詐欺等への対策

① 令和元年の調査によると、振り込め詐欺の認知件数は約17,000件で、被害総額は約315億円、検挙率は約40%です。また、振り込め詐欺の進化形としてアポ電強盗やアポ電空き巣も増えています。
② 「アポ電強盗」とは警察官等を装った電話で、自宅にある金銭の額や在宅のタイミングを聞き出し、強盗に入る手口です。「アポ電空き巣」は同様に金銭の金額を聞き出し、電話で呼び出して、そのすきに空き巣に入る手口です。アポ電の認知件数は、令和元年4月から6月の3か月間で約35,000件でした。
③ これらの犯罪の9割以上は、一人暮らしの高齢者の固定電話を利用しています。
④ そこで、これらの犯罪に合わないようにするには、「固定電話を解約して、家族などとの連絡を携帯電話に代えること」が有効です。
⑤ また、「固定電話に録音予告をする機能を付けた防犯装置を設置」する。もしくは、知らない電話番号からの電話には、「出ないで留守電で対応」する、「いったん切って、かけ直す」癖をつける、「通話してもお金に関する話はしない」、「家族とは合言葉を決めておく」などの対策が有ります。

【2】悪質商法

① 一人暮らしの高齢者は、そのほかにも、マルチ商法、利殖商法、アポイントメント商法、点検商法などの悪質商法のターゲットです。これらの商法は、訪問販売や電話勧誘により、高齢者の興味を引きやすい健康や趣味に関する話題や、老後資金の不安につけ込んだ儲け話をきっかけにしたり、家屋の状態が緊急の修繕が必要などと誤解を誘い、同情をひきだし、ときには居座り恫喝するなどして、不要な高額商品を売りつける点に特徴があります。
② これらの商法に騙されないための第一は最初の勧誘を拒絶することです。電話の勧誘に関しては、特殊詐欺の対策と同じ方法が適当であります
③ 訪問による販売に関しては、知らない人が訪ねて来ても玄関を開けないといった習慣が必要です。また、契約をする前に(書類にサインをする前に)、家族に相談する癖をつけることも重要になります。

【3】高齢者の話し相手

① 高齢者が特殊詐欺や悪質商法の被害に遭う背景には、高齢者が家族や社会と疎遠になっている事情があります。
② 高齢者は年を経るにつれて、体力・気力が落ち、食欲がなくなり、物忘れが増え、目や耳が不自由になり、膝の痛みで歩けなくなるなどして、次第に、それまでできていたことができなくなります。親しい友人・知人も施設に入所したり他界したりしていなくなり、話し相手を見つけることができません。若い人とは話題も合いません。それが、特殊詐欺や悪質商法の被害に遭う遠因となります。
③ たとえば、相談者が実家に帰った際には、家の中に見慣れない物がないか注意を払うようにします。到底消費できない大量の商品(トイレットペーパーや布団、野菜など)がある場合は黄色信号です。
④ 「こんなに買ってどうするの」と咎めると、「ないと困るから買ったんじゃない」と言い返されますが、じつは、その商品の販売員とのわずかな時間の会話が、目的である場合が多くみられます。
⑤ こうした物品の購入は、悪質商法とまでいかなくても、よくない兆候です。
⑥ 金融機関も、こうした高齢者に、株式、投資信託、保険を売り込んでいます。散らばった書類の中に、金融商品の分厚いパンフレットや取引結果報告書がないか探します。
ただし、取引に気づいた子供が金融機関に文句をつけても、「ご本人が希望されたことです」とか、「価値ある商品をお買い求めいただいているので、そのまま資産として保有されれば如何でしょうか」と体よく追い払われます。
⑦ 要するに、高齢者自身は、社会とのかかわりを求めていて、その販売員と話ができるのがなによりも楽しみになっているのです。

【4】対策

① したがって、相談者に対して、母と頻繁に会えなくても、こまめに連絡して話し相手になるようにアドバイスします。その際の注意点として、「何か買ったんじゃないでしょうね」などと詰問調になることなく、「最近、話し相手になってくれる人はいるの」と優しく尋ねることの方が有効で、その話し相手がどのような属性かが重要です。「○○さんが、よくしてくれるの」と知らない名前が出てきたときは、要注意です。
② 相談者の母親の年齢(82歳)からすれば、田舎にはまだ多くの親戚や知人がおられるはずです。里帰りのときには、その方々を回って、何かあればすぐに連絡するようにお願いしておくことも重要です。
③ さらに介護認定を受ける状態になれば、ケアマネジャーにも相談しておきます。地区の担当する民生委員や地域包括支援センターにも相談しておくことが重要です。
④ なお、すでに大量の商品を売っている店や、株式取引で頻繁に自宅を訪問している金融機関がある場合には、弁護士などに依頼して、代理人としてその店や金融機関に対し、母に対する販売活動を中止するように申し入れることを検討する必要もあるかもしれません。
⑤ また、判断能力に問題がない場合は、任意後見契約と委任財産管理契約を、判断能力が不十分な状態であれば、成年後見制度を利用して、それらの店や金融機関に対して、取引の中止を求める方法も検討する必要があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例5 狭義のおひとりさまからの相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例5 狭義のおひとりさまからの相談についての記事です。

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【相談内容】
女性相談者(78歳)から「20年前に父を、10年前に同居していた母を看取り、天涯孤独になった(生涯独身で子供もなく、兄弟姉妹もいない)。あとは自分が死ぬだけだが、週刊誌などを見ると終活など色々と書いてあり、よくわからなくなった。今のうちにしておくことはあるだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
おひとりさまの中には推定相続人がいない方(以下、狭義のおひとりさまとします)もおられます。相談に来られる狭義のおひとりさまの傾向として、一人暮らしには慣れているものの、自分が亡くなった後のことを心配されているという真面目な方が多いようです。そういった場合には、早目の遺言と生前整理をお勧めします。

【1】狭義のおひとりさま

① 一人暮らしの高齢者(おひとりさま)の中には、配偶者がおらず、その他の推定相続人(直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹及びその代襲者)もいないという方(狭義のおひとりさま)がおられます。
② 狭義のおひとりさまが亡くなられて、親類・縁者もいなければ、葬儀・埋葬の手続きが採れず、被相続人自身は無縁仏として葬られることになります。(墓地、埋葬等に関する法律9条又は生活保護法18条)
③ また、狭義のおひとりさまの遺産は宙に浮きますが、他方で、被相続人に債権を持つ病院や施設、被相続人に部屋を貸していた賃貸人らは、相続人から弁済を受けることができず、途方にくれます。
④ この場合の解決策としては、相続財産管理人制度(民法951条、952条)が用意されています。しかし、賃貸人などの利害関係者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てるのには50万円から100万円の予納金納付を求められますし、相続財産管理の手続きに1年以上かかるため、債権者や利害関係人の立場からすれば、甚だ迷惑です。
⑤ もちろん、被相続人に十分な遺産があって予納金が不要となったり、申立ての数か月後には予納金の返還を受けられることもありますが、相続債権者が迷惑をこうむることに変わりはありません。

【2】遺言の必要性

① 狭義のおひとりさまが遺言書で遺産の処分を定め、遺言執行者を指定しておけば、相続財産の調査や債権者に対する弁済を遺言執行者に任せることができます(遺産の処分は遺贈によるため、遺贈義務者である遺言執行者は不可欠です)。
② もっとも相続債権者やほかの利害関係人がその遺言の存在を確知できない場合もありますので、行政書士や弁護士など士業が預かるとともに、継続的な相談相手となり、かつ、介護施設やケアマネジャーに緊急連絡先として知らせておくなどして、遺言者の死亡をすぐに知ることができるよう工夫する必要があります。

【3】死後事務

① 葬儀や埋葬など死亡直後に必要となる手続きは、遺言事項ではありません。
② そこで、遺言書作成とは別に、身近にいる親しい人や行政書士や弁護士など士業との間で死後事務委任契約を締結しておくのが理想です。
③ または、遺言の中にそれらを書き記し、遺言執行者に葬儀や埋葬の権限を与えることで、遺言執行者がそれらを執り行うこともできます。
したがって、相談者には、相続開始後に周囲に迷惑をかけないように、遺言執行者の指定を含む遺言書の作成を勧めます。

【4】生前整理の必要性

① 相談者は亡父と亡母の相続を経験していますが、このような場合、亡父・亡母名義の不動産や預貯金の相続手続き(名義変更)を放置している可能性があります。
② 一人っ子ですので名義変更しなくても、さしたる支障もなかったかもしれませんし、「両親名義の財産をそのままにしておきたい」という気持ちも考えられます。両親の骨壺と一緒に暮らしているケースもあります。しかし、いずれは名義変更の手続きが必要になりますので、気持ちにけじめをつけて、名義変更等の手続きを勧めます。
③ また、遺言で「全ての財産を○○に遺贈する」としても、受贈者がこれらを放棄すれば(民法986条1項)、処理に困ります。例えば、亡父名義の田舎の田畑・山林などは引き受け手がいないこともありますから、あらかじめ、これらの不動産を処分しておくことが望ましいです。
④ なお、相談者もやがて両親と同じ墓に入りたいのなら、死後事務委任契約や遺言書でその意思表示をしておく必要があります。この場合もその墓を管理している者に事前に相談する必要が出てきます。

【5】少子化傾向

① 日本の合計特殊出生率(一人の女性が15歳から49歳までに産む子供の数)は昭和22年は4.54人でしたが、昭和36年には2.0人を割り込み、令和元年では1.36人まで下がってきています。
② 生涯未婚率(50歳時点での未婚率)は令和2年の国勢調査では、男性で26%、女性で17%でした。
③ 厚生労働省による人口動態統計では、令和元年の婚姻数は約59万組で離婚数は約21万組です。
④ こうした合計特殊出生率の低下や、生涯未婚率・離婚率の上昇により、少子化傾向は顕著になっており、今後狭義のおひとりさまが増える一方でしょう。
⑤ 狭義のおひとりさまは概ね気丈に振舞われますが、それなりの寂しさも抱えておられると推察します。相談相手になって心を開いていただき、その上で見守り契約やホームロイヤー契約を勧めるべきでしょう。

【終活・遺言・相続相談】相談例4 一人暮らしの高齢者の相談

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【相談内容】
相談者(77歳女性)から、「2人の子供は独立し、4か月前には夫が他界して、私もおひとりさまになってしまった。これからどうやって生きていけばいいのか途方に暮れている」と相談を受けた。

【検討すべき点】
一人暮らしの高齢者世帯数は約683万世帯(男性約222万世帯、女性約460万世帯)です。近くに相談できる身内や知人がいないため、孤立している方も少なくありません。こうした方は、やがて病気になったり、生活できなくなればどうすればいいか、認知症になったら誰が面倒を見てくれるのかといった、不安を常に感じています。特に配偶者を亡くした直後は、精神的に落ち込みがちなので、注意が必要です。

【回答・解説】

【1】おひとりさま

① 一人暮らしの高齢者を「おひとりさま」と呼ぶことがあります。「おひとりさま」という言葉はテレビドラマの題名に使われ有名になりましたが、このドラマの主人公は30代の女性であり、まだ、高齢者を対象とした言葉ではなかったようです。
② その後NHKの番組で、地域社会と隔絶し、孤独な生活を送る高齢者の増加現象を「無縁社会」として取り上げ、人間関係の希薄化や生き甲斐などの問題により、消費者被害や孤立死などのリスクが高まることに警鐘を鳴らしました。こうして高齢者のおひとりさまがクローズアップされたようです。
③ しかし、高齢者の一人暮らしを「おひとりさま」と呼んだとしても、その中には子や兄弟姉妹などの推定相続人がいる場合と、推定相続人がいない場合、独居であっても、完全な一人暮らしか施設入所されているかなどで事情は異なります。

【2】配偶者を失った場合の心情に対する理解

① 相談者には2人の子供がいるので、本来、相談相手に困らないはずです。また、相談者はまだ若いので、まだ認知症のリスクも現実化しないと思われます。したがって健康に関する不安が顕在化していないのなら、年金支給に合わせて今後の生活設計を見直すとか、生前整理や断捨離を始めるとか、あるいは遺言をお勧めする、子供が将来自分の面倒を見てくれるか心配であるならば、委任財産管理契約や任意後見契約を検討するなどという回答になることが考えられます。
② 心配なのは相談者の心身の状態です。というのも、配偶者が亡くなると(子供の有無にかかわらず)残された配偶者は生活のリズムが狂い、喪失感から気力を失いがちで、一気に老けると言われています。この傾向は妻に先立たれた男性に顕著ですが、夫に先立たれた女性も落ち込んでしまい、生活のリズムが乱れ、不安が高じることが見受けられます。
③ したがって、このような兆候が見られる場合には、相談者の気持ちに寄り添い、亡くなった配偶者の菩提を弔い、故人を偲んで昔話を聞くとともに、新たに何かするべきことを見つけて、相談者を元気づけることが大切です。

【3】相談者へのアドバイス

① まじめな方ほど、「自分がしなければならないこと」を探そうとされます。そして、気持ちが弱っているときには、高齢者は、終活ビジネスの宣伝文句に乗せられて、不要なことに手を出してしまいがちです。
② 例えば、終活や遺言のセミナーに参加すれば、任意後見、財産管理、家族信託、遺言信託を勧められるでしょう。終活フェアでは、葬儀の予約や墓地の購入を勧められることが多くみられます。
③ しかし、それは相談者に本当に必要なことでしょうか。2人の子供が気にかけてくれているならば、相談者にとって、それらは喫緊の課題ではありません。そうであれば、相談者には配偶者のいない新しいライフスタイルを模索するようにアドバイスした方がよいと思われます。
④ 例えば、高齢者のサークル活動は、今、活況のようです。中には商売目的のものも見られますが、山歩きや寺社巡りなど、多額の費用がかからないものはたくさんあります。そのメンバーも同じような経験をされた方が多く所属されていますので、その方々と語らうことが、気持ちを落ち着ける効果を生み出すと思われます。

【4】保証人問題

① 一般的にはおひとりさまが不安に感じておられるのは、施設入所、入院の際の身元保証人が見つからず、入所や入院を断られるのではないかという問題です。介護施設や病院は、ケアプランへの同意、手術や延命など治療方針への同意、死亡した際の遺体の引取り、利用代金の支払などのために身元保証人を求めます。
② 厚生労働省は通達を出しており、施設や病院は身元保証なしに入所や、入院できるようにするべきであるとしていますが、その後も身元保証人を求める施設病院が大半ですので、この心配は尽きません。
③ そこでNPO法人などの各種法人による見守り、財産管理、福祉サービス支援、身元保証サービスに葬祭支援までまとめたサービスが注目を浴びています。
④ しかし、これらのサービスを提供する業者が将来も健全な運営をしており、いざというときに頼れるという保証はありません。葬儀や埋葬、墓石の売買なども同じことが言えます。つまり、葬祭業者や霊園業者は、「いざというときに子供たちに迷惑をかけないよう今から準備しておきましょう」と言って、墓地の永代使用権や墓石を売り込み、高齢者を囲い込みがちです。
⑤ しかし、最初に多額のお金を支払わせて長期にわたりサービスを提供するという類型の終活ビジネスでは、常に、事業者が集めた金を流用して別の事業に投資し、失敗して破綻するというリスクがあります。そのようなリスクを避けるための冷静な判断には孤立しないことがもっとも重要です。

【5】士業の関与

① 配偶者を亡くしたばかりの相談者の動揺や不安が大きく、このまま放置することが見過ごせないのであれば、見守り契約をお勧めするべきでしょう。定期的に訪問をしたり、事務所にお越しいただき、相談事を伺いながら話し相手を務め、生活上のアドバイスや行政手続きのサポートをして差し上げる。これは高齢者医療で行われていることと何ら変わりません。法的な問題解決ばかりに固執することはありません。