【終活・遺言・相続相談】相談例26 養子縁組

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【終活・遺言・相続相談】相談例26 養子縁組についての記事です。

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【相談内容】
相談者(57歳男性)から、「先日の検査結果で、入院中の父(88歳)がステージⅢの肺がんだと分かった。父の相続人は自分と次男(54歳)だけだが、相続税対策として私の息子(22歳)を父の養子にしておきたい」と相談された。

【検討すべき点】
養子縁組には一定の節税効果はありますが、法定相続分の変更を意味しますから、これによって影響を受ける他の推定相続人の反発が予想されます。養親の相続開始後には養子縁組無効確認訴訟に発展することもありますので、養子縁組は慎重に行うべきです。

【1】養子縁組の節税効果

① 相談例で父と相談者の子が養子縁組すれば、父の相続開始後に法定相続人が1人増え、基礎控除額が600万円増えます。
② 具体的には、父の遺産が1億円だった場合、相続人が2人なら基礎控除額は4,200万円で課税相続財産は5,800万円、相続税総額は770万円になりますが、養子が1人増えれば、基礎控除額は4,800万円で課税相続財産は5,200万円、相続税総額は630万円となり、先程との差額140万円が節税効果と見込まれます。

【2】縁組を契機とする紛争

① 法定相続分(と遺留分)が減ってしまう推定相続人にとって縁組は心外でしょう。特に、高齢の被相続人と孫との縁組(成年養子)は、被相続人の判断能力の減退に乗じて行なわれたと思われがちですし、縁組の事実をすぐに公表しなかったとか、相続開始後にはじめて養子縁組が判明したといった場合は、なおさら疑問を招きます。
② したがって、縁組無効確認訴訟(民法802条)を招きかねませんし、遺産分割調停では縁組の有効性が前提問題となって紛糾することもあります。

【3】縁組無効確認訴訟での争点

① 縁組無効確認訴訟でもっとも争点になりやすいのは縁組の実質的意思の存否です。もちろん養子縁組の動機としては、養親子関係を創設したいという目的の他に、相談例のような節税対策目的や、特定の推定相続人の法定相続分や遺留分を圧縮したいとか、円滑に事業承継させたいといった目的も考えられます。
② そうした事例に関して、縁組が単にほかの目的を達成するための便法として仮託されたものであり、真に養親子関係の創設を欲する効果意思がなかった場合には無効となるとする判例や、他の目的があっても当事者間に真実に養親子関係を成立させる意思がある場合には有効とする判例、さらに、相続税の節税のために養子縁組する場合であっても、直ちに「当事者間に縁組しようとする意思がないとき」に当たるとすることはできないとして判例があります。
③ したがって、養親子関係の創設以外の目的があっても、真に養親子関係を構築する意思(実体的意思)を否定できなければ縁組は有効となると考えられ、この点をめぐって、縁組時における当事者の言動、縁組後の養親子間の関係、相続開始後の養子の行動などが立証活動の焦点となりますので、これらを考えて縁組の是非を検討することになります。
④ なお、縁組時の高齢者の意思能力についても問題となり得ますが、縁組は身分行為に関するものなので、財産処分に関する遺言能力に比べれば、若干緩やかなもので足りると考えられます。

【4】縁組に関するその他の問題

① 配偶者のある者が縁組をするには、配偶者とともに縁組をする場合、又は配偶者がその意思を表示することができない場合を除き、養親になるにも養子になるにも、その配偶者の同意を得なければなりません(民法796条)。
② したがって、仮に父に妻がいればその同意も必要で、相談者の息子に妻がいれば、その同意も必要です。ただし、養子縁組という微妙な問題については、それぞれの配偶者の同意が得られない可能性もあります。
③ 次に、家業や家名を継ぐ目的で、早々に未成年の孫を祖父母の養子にすることもありますが、その養子が、両親に捨てられたとか、兄弟と差別されたとの気持ちを抱き、その不満が数十年後の祖父母や両親の相続で噴出することもあります。
④ また、養親としては遺産の受継者として選んでやったつもりでも、養子はそれほど感謝していないこともあります。結局、実子も不満、養子も不満という縁組だと意味がありませんので、縁組は、養親や実親の都合だけでなく、実子や養子となる者の気持ちに十分配慮して検討すべき事柄です。

【5】相談者へのアドバイス

① 相談者に対しては、後々養子縁組の有効性が問題になる可能性を指摘し、できれば事前に次男にも相談することを勧めます。また、それが叶わず、将来的に縁組無効を争われる可能性があるなら、父と相談者の息子を引き合わせて直接縁組意思を確認させ、その場で縁組届を作成し、それを写真やビデオに収めるなどして証拠化し、縁組成立後も相談者の息子には父の見舞いにいかせるなどして、真の養親子関係を形成するようにアドバイスします。

【終活・遺言・相続相談】相談例25 配偶者税額軽減と小規模宅地の特例

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【相談内容】
相談者(75歳女性)から、「夫(87歳)には自宅などの不動産はあるが現預金が少ない。だから、夫が亡くなって多額の相続税がかかることになると払いきれない。配偶者控除や小規模宅地の特例といった方法が使えるのか、教えてもらいたい」と相談された。

【検討すべき点】
配偶者税額軽減(配偶者控除)と小規模宅地の特例は、ともにたいへん効果的な相続税対策です。
両制度の共通点として、遺言又は相続税申告期限までの遺産分割成立が条件であること、相続税申告して初めて適用が受けられること、申告期限までに遺産分割が成立しない場合には未分割申告して、いったん特例の適用を受けない相続税を支払う必要があることが挙げられます。

【1】配偶者税額軽減

① 「配偶者税額軽減」とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈などにより実際に取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い方までは、配偶者に相続税はかからないという制度です。ただし、仮装又は隠蔽されていた財産は含まれません。
② 配偶者税額軽減は、遺言があるか、又は遺産分割協議が成立していて、申告期限内に相続税を申告することによって適用されます。
③ 10か月の申告期限内に遺産分割がない場合には、いったん法定相続分通りに相続したものと仮定して未分割の申告を行い、その後3年以内に遺産分割が成立すれば、この制度を利用することができます(修正申告と更正の請求が必要です)。
④ 配偶者税額軽減は相続税申告の際の事後的な方法ですが、遺言書を作成する際にも相続税の負担軽減にために検討しますから、相続税対策の一つといえます。
⑤ 高齢者夫婦の相続に関して言うと、一次相続では配偶者税額軽減を利用できますが、二次相続では(再婚していない限り)利用できません。したがって、一次相続では、「全ての遺産を配偶者に相続させる」といった遺言書を作成して配偶者税額軽減をフル活用したくなるものですが、一次相続で他方配偶者に資産を集中させると二次相続での紛争リスクが高まります。

【2】小規模宅地の特例

① 小規模宅地の特例は、事業又は居住の用に供されていた宅地のうち相続人等の生活基盤維持のため欠くことができないものにつき、通常の評価方法による価額を減額する(土地の評価額を最大8割下げることができる)制度です。
② 小規模宅地の特例の具体例としては、・特定住居用宅地等(被相続人等の居住用の用に供されていた宅地等で330㎡まで80%減)、・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等(事業用の宅地等で400㎡まで80%減)、・貸付事業用宅地等(不動産貸付用の宅地等で200㎡まで50%減)などがあります。
③ 特定住居用宅地等の取得要件について、説明します。被相続人が住んでいた土地なら、配偶者がそれを取得した場合は無条件、居住していた親族なら相続税申告期限まで居住継続・保有継続の両要件を満たすことが条件で、同居していない親族でも、相続開始前3年以内に自己又は配偶者の所有家屋に住んだことのないこと等の条件を満たせば適用されます。
④ 次に被相続人と生計を一にする親族が居住していた場合は、・配偶者なら無条件、親族なら継続居住・保有継続要件を満たすことが必要です。
⑤ その他、要介護の親が介護施設に入っている場合でも、入所前の自宅で賃貸していなければ居住用財産になるなどの細かい条件設定があります。
⑥ これらの要件には例外等もありますので、必ず、税務署・税理士への照会や国税庁のホームページで確認していただく必要があります。
⑦ 小規模宅地の特例を受けるためには、配偶者税額軽減の場合と同じく、遺言か、相続税申告までの遺産分割によってその不動産の取得者を確定させ、かつ相続税申告を行う必要があります(適用の結果相続税額が0円の場合でも申告が必要です)。

【3】相談者への説明

① 相談者に対しては、配偶者税額軽減は利用できるものの、配偶者に遺産を集中させすぎると問題があることを説明し、小規模宅地の特例については、夫が亡くなった場合、誰が自宅等の土地を相続するかによって変わるので、税理士に相談するように勧めます。
② 配偶者税額軽減や小規模宅地の特例も、遺言か遺産分割の成立が条件なので、すんなりと遺産分割が成立しそうにないなら、認知症等が進む前に夫に遺言書を書いてもらうようアドバイスします。

【終活・遺言・相続相談】相談例24 暦年贈与

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【終活・遺言・相続相談】相談例24 暦年贈与についての記事です。

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【相談内容】
相談者(75歳男性)から、「暦年贈与として、これから10年間、長男(51歳)とその子(22歳、20歳)の計3人に対し、それぞれの預金口座に毎年110万円ずつを振り込んで合計3,300万円を贈与しようと思うが、問題があるか」と相談された。

【検討すべき点】
「暦年贈与」は、相続税対策としてもっともよく利用されています。しかし、暦年贈与が何を意味し、どのような場合に否認されるのか、否認されないために何をしておくべきかについては正確な知識が必要です。

【1】贈与税と暦年贈与

① 贈与税は、贈与によって財産が移転する機会に、その財産に対して課される租税で、相続税の補完税です。
② 贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額をもとに税額が計算され(暦年課税)、翌年の2月1日から3月15日までの申告が義務付けられています。
③ 贈与税の税率は、相続税の税率よりかなり高く設定されています。
④ 贈与税では、受贈者一人当たり年間110万円までの贈与は非課税(基礎控除)とされますので、この基礎控除を活用した贈与が「暦年贈与」と呼ばれております。基礎控除の範囲内の贈与には課税されませんので、申告義務はありません。
⑤ ある財産の移転が、客観的に贈与であることが明らかなら暦年贈与の基礎控除は自動的に適用されます。しかし、名義預金、貸付金あるいは預託金であって贈与の実体がない(実質的な財産の移転を伴っていない)とされ、贈与自体が否認される場合も少なくありません。
⑥ したがって、暦年贈与として認められる(基礎控除の適用を受ける)ためには、事実上、贈与者と受遺者の間の贈与契約書を作成し、贈与対象財産が現預金なら、贈与の実行として、実質的に受遺者が管理している預金口座に贈与金を振り込む必要があります。

【2】暦年贈与の問題点

① 相続開始前3年以内の贈与は全額が相続税の課税対象となり、暦年贈与は適用されません(贈与税としての納税した額は相続税額から控除されます)。
② したがって相談例のように、暦年贈与を利用して、毎年3人に110万円ずつを贈与し始め、仮に5年が経過して亡くなった場合には、5年分の合計1,650万円が非課税になるのではなく、4年前と5年前の贈与分660万円だけが非課税になります。
③ 次に、毎年贈与契約書を作成するのが面倒であると、最初の年に、3人の受遺者に対し、毎年110万円を10年間にわたって贈与する旨の贈与契約書を作成する人がいますが、これは、定期金贈与契約として、最初の年に、3人の受贈者に対し、それぞれ1,100万円の贈与があったものとみなされる可能性があります。
④ その場合、初年度に1,100万円から基礎控除の110万円を引いた990万円に対して207万円の贈与税が課され、3人合わせて621万円の贈与税が課税されます。それが嫌であれば、毎年贈与契約書を作成しなければなりません。
⑤ なお、基礎控除は受贈者を基準としますので、父から110万円、母から110万円を贈与された場合は基礎控除額を110万円超えていることになります。

【3】暦年贈与の工夫

① 暦年贈与による基礎控除を利用する場合には、贈与であることを疑われないために、毎年贈与契約書を作成し、受贈者名義の口座に現金を振り込むべきです。さらに言えば、毎年異なった額(それも非課税額を上回る金額)の贈与をして、実際に贈与税を申告して少額を納税する方法があります。
② 贈与金を振り込む先は、日頃から受贈者が公共料金やカード支払いなどに用いている生活口座がよいでしょう。贈与者としては、受贈者名義の別の口座に入金して、贈与の全体を把握したいところでしょうが、そうした行為は、「名義預金(遺産)」と税務署にみなされる可能性が高くなります。

【終活・遺言・相続相談】相談例23 相続税対策一般

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【相談内容】
相談者(55歳男性)から「父(84歳)が亡くなったときの相続税の話が聞きたくて、市役所の法律相談へ行ったが、税理士に聞いてくれの一点張りで役に立たなかった。どんな相続税対策があるのか教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
そもそも税務に関する相談は税理士法により、税理士のみがおこなえると定められています。そこで、行政書士や弁護士などが相談会などで出来る範囲が問題となりますが、相続税の計算方法や各種制度の一般的な内容(国税庁のホームページに記載されている説明程度)を解答することが限度であると考えられます。具体的な相続税額を計算することは、税理士法に抵触する危険があるので注意が必要です。
そこで計算方法の説明(表にしてわかりやすく説明することは問題ないと思われます)、各種相続税額の軽減制度の概要の説明を行うことになると思います。

【1】相談者に対する基本的な対応

① 相談者は往々にして全財産を開示せずに、特定のケースや節税方法についてのみ尋ねることが多くみられます。そして曖昧な知識のまま答えると「専門家(行政書士等)が言った」と利用されかねません。
② そのような場合、「行政書士は頻繁に変更される財産評価基本通達に精通しているわけではなく、税理士法の定めにより、一般的な説明を差し上げるのみで、最終的な責任は負えない」ことを事前説明して、「わかる範囲で説明します。最終的には必ず、税理士に確認するようにしてください」と念を押すことが必要です。

【2】相続税の計算と対応する節税方法

① 相続人の財産がどの程度あるのかを伺い、現時点で相続が発生した場合の相続税を計算してもらいます(行政書士はあくまで計算方式を示し、電卓などで計算するのは相談者にしてもらいます)。
② 相続税の計算方式は次の通りです。
A: 相続人それぞれの相続財産額を計算(みなし相続財産、債務、税金、葬儀費用を含める)し、その総額を計算する。
B: 基礎控除額を控除する。
C: 相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定して、各相続人の取得財産を計算する。
D: 相続人毎に相続税率を乗じて仮の相続税額を算出し、それを合計する(=相続税の総額)。
E: 遺言や遺産分割などにより実際に分けられた財産(具体的相続分)の割合に応じて、各相続人に相続税の負担額を割り付ける(=各人の相続税額)。
F: 個別の事情により税額の軽減又は控除を行う(配偶者控除、未成年者控除、税額加算など)。
③ 次に、このAからFの各段階の応じた節税方法は次の通りです。
A1: 相続財産中の不動産の評価を下げる=小規模宅地の特例・土地活用・タワマン節税
A2: 相続財産中の金融資産を減らす=評価が逓減する資産の購入(不動産、貴金属の購入など)・生前贈与(暦年贈与、おしどり贈与、教育資金贈与)
A3: 相続財産の膨張を抑制する=生命保険金・相続時精算課税制度
B1: 相続債務を増やす=建築資金の借入・土地活用・タワマン節税
B2: 基礎控除額を増やす=養子縁組
D1: 具体的相続分を減らす=養子縁組
F1: 税額軽減=配偶者税額軽減・未成年者控除

【3】節税対策の基本方針

① 一般に、節税方法として頻繁に利用されるのは、暦年贈与、小規模宅地の特例、配偶者税額軽減の適用、生命保険だと思います。
② このうち、小規模宅地の特例と配偶者税額軽減は、本来、相続開始後の処理(遺産分割の問題)ですから、相続税の申告を依頼する税理士に任せるのが基本ですが、遺言書作成や遺産分割協議でも、事前にその要件を確認しておく必要があります。
③ なお、小規模宅地の特例、配偶者税額軽減の適用を受けるためには、相続税がかからない場合でも、相続税の申告が義務ですので注意が必要です。
④ 10ヶ月以内に相続税の申告を行わなければなりませんが、申告ができない場合は、とりあえず未分割(法定相続分)で申告(相続税法55条)し、それから3年以内に遺産分割をすれば、更正の支給により、これらの制度を適用してもらえます。その後も、やむを得ない事情があれば適用の可能性があるので、慌てる必要はありません。
⑤ 未分割の申告をせず、あるいは、いったん遺産分割協議を成立させたのちで、小規模宅地の特例や配偶者控除を使うため、改めて遺産分割のやり直しをした場合には、贈与税や所得税が課税される可能性があるので、やり直しはきかないと考えて下さい。
⑥ それ以外の節税対策(暦年贈与・生命保険・養子縁組)は、相続人間の不平等を招くことが心配の種です。相続税対策と争族対策は別物ですが、円満な笑顔相続こそ最高の節税対策とも言えます。

【終活・遺言・相続相談】相談例22 老後の生活資金

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【相談内容】
相談者(67歳男性)から、「持ち家に一人で暮らしており、年金は月額16万円である。退職金で多少の蓄えがあったが、子への援助や投資の失敗ですっかり減ってしまった。長生きするほどお金が足りなくなると心配になる」と相談された。

【検討すべき点】
高齢者にとって、老後の生活資金が足りるかどうかは切実な問題ですが、その不安をあおるような終活ビジネスもあります。また、裕福な高齢者ばかりではなく、生活に不安を抱える方も少なくありません。

【1】老後2000万円問題

① 高齢者世帯の平均所得は308万円(月額約25万円)とされますが、その中央値は244万円(月額約20万円)です。ちなみに所得の内訳は、公的年金や恩給が65%、稼働所得は21%、その他の収入が14%です。
② これに対して、高齢者世帯の月額の支出は平均27万円とされ、平成29年の調査では高齢者の54.2%が生活が苦しいと回答しています。
③ 仮に月額所得が22万円で、支出が27万円とすると、毎月5万円が不足します。すると、たとえば定年後20年間では毎月5万円×12か月×20年=1200万円の補填が必要になり、定年後30年では1800万円の資金が必要になります。
④ そこで、金融庁金融審議会「市場ワーキング・グループ」は老後に備えるには、年金以外に、約2000万円必要になるという報告書を出しました。これが老後2000万円問題として、高齢者の間で老後資金に対する不安が広がっています。

【2】老後の生活設計

① 相談者がまだ40代や50代で、収入に余裕があるなら、資産の効率的な運用をファイナンシャルプランナーに相談する事を勧めます。
② しかし、相談者は67歳。自宅以外にさしたる資産がなく、収入を年金に頼らざるを得ない場合には選択肢が限られます。家計簿をつけ、無駄な支出を見直しながら、年金の範囲で暮らせるように節約してもらうしかありません。
③ 相談者の場合の平均余命は18年ですが、その間に不測の出費も考えられますから、現在残っている蓄えには手を付けないよう心掛けて頂きたいところです。

【3】高齢者雇用

① 年金以外にも稼働収入や不動産収入があれば、生活はぐっと楽になります。平成25年に改正された高年齢者(55歳以上の者のことを指す)等の雇用の安定等に関する法律で、定年の撤廃・延長・再雇用や高年齢者の雇用を確保する措置、シルバー人材センターの設置等が定められました。
② 令和3年4月1日に改正された同法では、70歳までの定年引上げや継続雇用制度の導入、定年制の撤廃などの努力義務が定められました。
③ しかし、実際に仕事がなければどうしようもありませんし、再雇用では賃金が下がり、高齢になればなるほど就業は困難になります。

【4】リバースモーゲージ(不動産担保型生活資金貸付制度)

① リバースモーゲージとは、自ら所有する自宅に抵当権を設定して生活資金の融資を受け、利息のみを支払いながら、死亡時の不動産処分で元本を一括返済するという制度です。
② 自宅はあるが、生活するための現金がないという高齢者のために有益とされ、社会福祉協議会等でも相談を受け付けています。
③ しかし、自宅がマンションの場合は適用外とか、推定相続人全員の承諾が必要とされるなど、厳しい条件がありますし、これを利用できたとしても、思いのほか長生きして自宅を失うとか、金利上昇に伴って利息が上がるというリスクがあると指摘されています。
④ 次にリースバックとは、セール&リースバックの略で、自宅を売却すると同時に新所有者から自宅を借り直し、賃料を支払いながら住み続けるという方法です。(定期借家契約になることが多いです。)この方法でも、自宅売却時にまとまった生活資金が得られますが、賃料支払いが滞れば、退去明渡しを求められますので、慎重に判断する必要があるでしょう。

【5】儲け話の落とし穴

① これだけ平均寿命が延びれば、高齢者も自分が何歳まで生きれるか見当がつきません。よって、多少の蓄財があったとしても、なお不安に感じておられます。
② その不安につけ込んで、利殖や儲け話を持ちかけ、虎の子の預貯金をだまし取るという事例が多発しています。「うまい儲け話が向こうから転がり込んでくる」ことはあり得ませんので、リスクを適切に判断し、できるだけ現有資産の範囲内で慎ましく生活するように勧めます。
③ また、それなりに資産があっても、高額な有料老人ホームに入居したり、墓地・霊園に多額の資金を投じたり、子や孫の求めに応じて散在していれば、同じことになります。

【6】生活保護

① 生活資金に窮した高齢者のセーフティネットは、生活保護です。生活保護を受けるための条件は、収入が最低生活費を下回っていること、活用できる資産(預貯金や不動産)がないこと、親族などから援助を受けられないことなどですが、これらの条件を満たしていると思われる場合でも、生活保護は思うほど利用されていません。
② その理由ですが、生活保護法4条2項は、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行なわれるものとする」とし、同条3項は「前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない」と規定します。
③ つまり、扶助できる親族(直系血族及び同居の親族、民法730条)がいるなら生活保護を受けられない可能性があるので、生活保護の申請を受けた市役所等は、扶養義務者に対して義務履行の可能性を照会します。
④ しかし、たとえば独居の高齢者の中には、直系卑属や兄弟姉妹と絶縁しているケースも多く、(兄弟姉妹に対しては特に)自分が生活保護を受けようとしていることを知られることを望みません。よって、生活保護受給の要件を満たしているにもかかわらず、その申請を思いとどまり、あるいは撤回するケースが多いのです。
⑤ そこで、令和3年3月以降、本人が扶養義務者に借金を重ねている、扶養義務者と相続を巡って対立している等の事情がある、扶養義務者と縁を切っている(10年程度の音信不通)など、著しい関係不良があると認められる場合には、扶養義務者による扶養義務の履行が期待できないとして扶養義務者に対する照会は不要とされ、同年3月26日付の厚生労働大臣からの通知(事務連絡の改正)でも、この点が確認されました。
⑥ しかし、現実の市区町村の窓口では、旧態依然と扶養義務者への照会を行わないと申請を受け付けないという問題があるようです。
⑦ 法テラスの事業として、弁護士が生活保護申請等を援助する制度を用意しています。この制度によれば、生活保護の申請手続の相談や代理交渉が原則として無料で行えます。

【終活・遺言・相続相談】相談例21 生前整理

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【相談内容】
相談者(75歳男性)から、「1週間前の検査でガンの転移が見つかった。既に遺言書は書いているが、妻子に迷惑をかけないよう、他にやっておいた方がよいことを教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
遺産の処理については遺言書で対応できますが、それ以外にも相続開始後に遺族が難題に直面することがあります。いざというときに遺族や周囲の方が困らないよう、相続財産を明らかにし、身の回りのものを整理し、利用しない不動産・動産や海外資産などは処分し、これまで放置してきた問題を片付けるように勧めます。相談者本人がショックを受けているようであれば、説明には気遣いが必要です。

【1】財産の特定

① 一般に、高齢者は、推定相続人に対して自分の財産の内容を明らかにしない傾向があります。子供たちが財産を狙っているのではないか、財産が少なければ、ぞんざいに扱われるのではないかという不安が先立つからです(逆に現金を見せびらかして、関心を引こうとする場合もあります)。
② そのまま相続が開始すると相続人らは遺産の調査に手間取り、準確定申告や相続税申告が滞ったり、ほかの共同相続人(兄弟姉妹など)が被相続人の財産を隠している(あるいは生前贈与を受けた)のではないかと、疑い出すこともあります。
③ それは相続紛争の種になりますので、相続人に遺産の内容が分かるようにすることが望まれます。遺産は遺言書に明示しておくことが基本ですが、エンディングノートや手帳などに遺産の詳細を記載する方法もあります。

【2】エンディングノート

① 「エンディングノート」は、やがて迎える死に備える自身の希望などを書き留めておくもので、各種のエンディングノートが書店で販売されています。終活セミナーや社会福祉協議会や地域の高齢者の集いなどで配布されることもあります。
② エンディングノートに書き留める項目としては、財産の内容、葬儀の希望やその際の連絡先、自分史、感謝の気持ちなどが代表的です。
③ しかし、一人でエンディングノートを書いていると、つい、遺言めいた内容(たとえば、自社の株式は長男に譲りたいなど)を記してしまいがちです。そうなると、これは自筆証書遺言として有効か無効かという問題が生じますし、他に有効な遺言がある場合、その文言が不明確な場合には遺言内容の解釈指針として用いられる可能性があります。
④ また、相続人に対する不満や愚痴を書けば、争族の種になることもあるでしょう。したがって、エンディングノートを利用する場合には、そのようなリスクがあることを説明します。

【3】身の回りの動産の整理

① 高齢になるほど身の回りの整理が上手く出来なくなり、不要な物が増えます。ゴミ屋敷のような状態になる前に不要なものを整理しておくべきでしょう。
② 特に80歳を超えると自分で物を捨てることが困難になってきますが、相談者はまだ75歳と若いので、自分でできるはずです。年賀状の打ち切りの挨拶や、利用していない契約の解約処理なども検討すべき点です。ペットの世話については、負担付遺贈やペット信託といった方法もあります。

【4】不動産の生前整理

① 郷里に先祖伝来の実家や田畑があるが、しばらく帰っておらず、現状が分からないといったこともよくあります。しかし、放置しておくと、遺産分割では相続人が郷里の不動産の取得を嫌がり、その不動産の押し付け合いになります。
② 郷里の実家が倒壊等の危険のある特定空き家等となった場合には、市町村が立入調査し、指導、勧告、命令等の経過を経て強制的に解体を代執行されるという手段が用意されています(空家等対策の推進に関する特別措置法)、令和3年民法改正により、管理不全土地管理命令や管理不全建物管理命令の制度が用意されましたが、手間がかかることには違いありません。
③ 先々代、先代の相続で土地の所有権移転登記手続をしていなかったというケースもあります。これに対しては、登記名義人の死後長期間に渡り相続登記されていない土地につき、登記官が法定相続人を探索し、職権で長期間相続登記未了である旨を登記に付記して法定相続人の登記手続を促す等の措置が講じられました(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等)。
④ 令和3年民法改正により、所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令が創設され、相続登記や住所変更登記も義務化され(不動産登記法改正)、相続土地国庫帰属法により、条件次第で相続土地を国庫に帰属させる道も用意されましたが、いずれも相当手間がかかります。
⑤ 共有不動産の処理、私道・里道・水路敷の処理、筆界特定なども将来問題になります。したがって以上のことに心当たりがあるのであれば、使用されていない建物は解体し、土地は先代の相続を原因とする所有権移転登記を経て、郷里の不動産を隣家などに譲渡又は贈与するなどして、身軽になることをお勧めします。

【5】祭祀承継

① 郷里に相談者の父母や祖父母の眠るお墓がある場合、相談者もそこに入るのか、入るのならその祭祀承継はどうするのかも考えておく必要があります。
② 相談者は郷里のお墓に思い入れがあったとしても、子どもたちは都会に住んでいて里帰りすることもないし、村落共同墓地の場合そこの掃除も期待できないなら、いっそ墓じまいして、子どもたちが訪問しやすい場所で永代供養しておくことが望ましいかもしれません。

【6】デジタル遺産に関する生前整理

① 比較的新しい問題ですが、デジタル遺産があるのであれば、その対応も必要です。オンラインのデジタル遺産には、SNSアカウント、ブログアカウント、暗号資産(仮想通貨)、メールアカウント、アフィリエイトアカウント、FX取引アカウント、蓄積データなどが挙げられます。これらには所有権や著作権を観念できませんし、債権というわけでもありませんが、それに経済的価値があれば相続財産に含まれます。
② しかし、相続人がデジタル遺産の存在に気づかない可能性がありますし、パソコンやスマホ等の端末のパスワードやアプローチの方法が分からなければ、デジタル遺産を捕捉し、現金化できません。
③ したがって、生前整理としては、あらかじめ金融資産化するか、相続人に対してデジタル遺産の存在を知らせ、パスワード等と共に現金化や名義変更の具体的な方法を指示するように勧めます。
④ オンライン上のデータの消去や処分を希望する場合には、エンディングノート、死後事務委任契約などにより必要な情報を添えてデータ処分(抹消)を依頼すべきですが、それも生前に行なっておく方が確実です。

【7】海外資産

① 相談者が海外資産を所有しているときも、その内容を明らかにしておく必要があります。本来相続については被相続人の本国法によりますが(法の適用に関する通則法)、遺産たる不動産には所在地法が適用されることもあります(英米・中国法など)。
② その場合は現地の裁判所で検認裁判を受ける必要があり(プロベート手続き)、当地在住の弁護士に依頼するなど複雑な手続きが必要です。よってこのような海外資産もあらかじめ処分することをお勧めします。

【8】特別受益の整理

① 相続では、頻繁に特別受益が問題になりますが、数十年も前の贈与では、遺言者もはっきり覚えていないことが多いでしょう。そこで、いつ、だれに、何のために、いくら贈与したのか、持戻し免除するのか否かについて、整理して記録を残すように相談者にお勧めします。

【9】債務の整理

① 相続開始時に債務が残っていると、その負担を巡って相続人がもめるリスクがあります。ですから、できるだけ繰上弁済しておくべきです。例えば、その借入金がアパートなどを建築する費用に使われたなら、遺言で建物を取得する相続人に負担させるのが合理的です。
② 借入金返済が厳しいなら、自己破産、任意整理などの方法により債務整理しておくことをお勧めします。相続開始時に債務が上回るのなら、迅速に相続放棄できるよう相続人に知らせておきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例20 もめない相続

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
2年前に妻を亡くしたという一人暮らしの相談者(79歳男性)から、「4人の子(長女(53歳)、次女(52歳)、三女(47歳)、長男(39歳))はそれぞれに仲が悪い。遺言書を書いておけば、自分の他界後、4人がもめないようにできるのか」と相談された。

【検討すべき点】
高齢者の心配の一つは、子どもたちによる相続争いです。遺言書がそれを防ぐ方法として有効であることは確かですが、遺言書さえ書いておけば足りるというものではありません。これまでの経緯、財産の内容、妻の相続時の遺産分割の状況などをよく伺った上で、問題点を指摘し、相談者と一緒に対策を考える必要があります。

【1】遺言の限界

① 遺言があれば、基本的に相続人が相続内容を争うことはできません。しかし例外もあります。
② 遺言が無効とされる可能性です。これを防止するためには、遺言書作成時における遺言者の遺言能力を疑われないように証拠(診断書や作成の様子を録画する等)を残す必要があります。
③ 自筆証書遺言では「これは父の筆跡ではない。父がこんな遺言をするはずがない」などと遺言内容に不満を持った者から訴えられることがありますので、公正証書遺言を勧めます。
④ 遺言が有効でも、「4人の子に4分の1ずつの遺産を相続させる」という内容(相続分の指定)なら、誰が何を取るかを決めるために、遺産分割協議が必要になり、争いが生じる可能性があります。遺産の一部の処分だけを決め、処分を決めていない遺産がある場合(一部遺言)も同様です。
⑤ 遺言内容が一義的に明らかでなく、遺言者の意思解釈が必要になる場合には、解釈を巡って争いが起きる可能性もあります。
⑥ このようなリスクを排除するには、士業に遺言書を起案してもらうか、文面をチェックしてもらうべきであると説明します。
⑦ 各相続人の遺留分を侵害する遺言だと、遺留分侵害額請求の問題が生じます。特定財産承継遺言を多用する場合でも、流動資産以外の遺産についてはその評価が問題になる場合があります。
⑧ 具体的相続分の修正要素である特別受益や寄与分でも揉めることもあれば、相続債務の承継、葬儀費用の負担、固定資産税の負担、祭祀承継問題などで揉めることもあります。
⑨ 遺言が効果を持つのは相続開始後です。すなわち遺言者が亡くなる将来の話ですので、その時点までに現在と財産や推定相続人の状況も変わっている可能性があります。よって、将来の状況を仮定して遺言をすることになるので、遺言を残せば相続紛争が起きないという保証はありません。

【2】家庭の事情の聞き取り

① 遺言書を作成するだけでなく、そもそも4人の子が争わないように気を配る必要があります。そのためには、4人の子の仲が悪い理由など相談者の家庭の事情を伺わなければなりません。しかし、このような話になると、相談者の口が重くなったり、逆に延々と昔話や愚痴を話し始める方もおられます。
② このような場合、伺った情報から推測を立てて、相談者に質問をする形で話を伺います。例えば、相談例では長女と次女は1歳違いですので、受験、就職、結婚などで事あるごとに比較されて長年反目していたのではとか、三女はそれを見て育ったので、二人と距離を置くようになったとか、長男は相談者40歳の子なので溺愛され、姉たちから嫉妬されていたのではないかなどを推定して質問を進めます。
③ 子にとって親の愛情は絶対的で、幼少期や思春期の心の傷はなかなか拭えませんが、それができるのは親である相談者だけですので、心当たりがあれば、配慮が足りなかったと素直に謝罪をするなど、今できることをすべきです。
④ 次に妻が亡くなった際のことと、その後2年間の起きたことを伺います。妻の遺産分割の結果が偏ったものであるならば、相談者の相続発生時に合わせて考えて公平でなければ、子は納得しません。どの子が最後まで母の看病や介護をしたのかなどの情報も必要です。
⑤ 他の事情も伺います。例えば、多額の自宅購入資金を出してもらった子はいるか、事業に失敗した際の援助や、なかなか実家に帰ってこない子や、長男は後継ぎなのに実家に寄り付かない(相談者側の視点)などの様々な事情を伺いアドバイスをすることになります。

【3】実質的な公平

① 遺言による財産の分け方について、相続で揉めないことを第一にするのであれば、法定相続分を基調としながら事情に応じて各相続人の取得分に若干の差をつける程度にとどめる方が賢明です。4人の子が「これなら仕方ない」と思える遺言であれば、相続紛争の危険は限りなく小さくなります。
② 遺留分を侵害しないためにも、生前贈与(特別受益)は必ず確認して考慮すべき点です。
③ 相続開始後、遺言者は当然にこの世にいません。相続人は遺言者に直接文句を言えませんので、悔しさや憎しみは他の相続人に向かうことになります。防止するためにも、相談者の言動次第でこの誤解を解いたり、関係を修復できるのであれば、是非試みてもらうように説明します。
④ 逆に、親が目の前の子に媚びたり、他の子に対する不平や不満を口にしていたのでは、揉めない相続を実現するなど到底望めません。
⑤ 相談者は一人暮らしですが、将来この誰かに面倒を見てもらう考えかもしれません。親の介護の有無は相続紛争の大きな問題になりますので、当然今後の生活の希望についても伺う事項になります。

【終活・遺言・相続相談】相談例18 死後事務委任契約

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(67歳女性)から、「介護していた知人男性(88歳)から、「自分が死んだら葬儀・埋葬を頼む。息子は呼ばないで欲しい。入院費用を払い、アパートを引き払って、お金が余れば世話になった友人に(75歳)に謝金をあげて欲しい。あなたしか頼る人はいない」と懇願され、断り切れずに現金300万円を預かった。あとで問題にならないだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
最後が近づいてきた場合に、信頼できる人に後事を託すのはよくあることです。ただし、善意で引き受けたことを相続人から問題にされることがあります。そのようなトラブルを避けるためには、依頼された内容を死後事務委任契約書の形ではっきりと残すことが必要です。内容によっては認められないこともあるので注意が必要です。

【1】死後事務委任契約の性格

① 「死後事務委任契約」とは、委任者が、受任者に対して、死亡後に生じる事務(葬儀・埋葬・死亡に伴う各種手続き)の代理権を与える委任契約です。家族がいなかったり、家族に負担をかけたくない場合や、家族の世話になりたくない場合に、こうした契約が必要になります。
② 委任者の死亡は委任契約の終了原因(民法653条1項)ですから、相続開始と同時に委任契約が終了するとも考えられますが、委任者の死亡後における事務処理を依頼する旨の委任契約は有効と解されています。
③ その契約は、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意を抱合し(最判平成4年9月22日金法1358号55頁)、委任者の地位を承継した相続人は、契約を履行させることが不合理と認められる特段の事情がない限り、委任契約を解除することが許されないと解されます(東京高判平成21年12月21日判時2073号32頁)。

【2】死後事務委任契約で出来る事

① 財産管理契約や任意後見契約は委任者の生存が前提ですので、葬儀・埋葬等の死後事務の処理は対象になりません。また、葬儀・埋葬等は遺言事項ではありません。よって遺言書に記載しても法的効力を持ちません。そこで、任意後見契約や遺言書とは別に死後事務委任契約書を作成する意味があります。
② 平成28年民法改正で、成年後見人に被後見人の死亡後の保存行為や債務弁済の権限が認められたので(民法873条の2第1号、2号)、死後事務委任契約の効力を考えるうえで参考になると思います。
③ ただし、債務弁済については、本来、債務を承継する相続人に任せるべきですから、相続開始直後の事務処理に付随するもの(葬祭費など)は弁済できるとしても、一般的な相続債務の弁済は原則として委任できないと考えるべきでしょう。

【3】相談者へのアドバイス

① 死期が近づいた高齢者が自分の死後について依頼する気持ちはわかりますが、しかし、依頼内容が明確でなければ、後日、相続人との間で問題が起きるリスクがあります。よって、相談者には、至急、知人男性の要望を記録化するようにアドバイスします。(公正証書化するのがベストです。)
② 知人男性の依頼の趣旨が明確であれば、知人男性が亡くなられた場合の葬儀や埋葬についてはその手続きをとることができます。
③ 入院費の支払や、賃借物件の明渡しなどは相続債務ですから、原則は相続人に任せるべきですが、相続人に連絡がつかないといった事情がある場合には、相談者が預かったお金で対応しても良い(違法性・損害・利得などがない)と考えられます。
④ 友人に対する謝金は遺贈(遺言事項)になりますので、相談者がそれを実行すると相続人から損害賠償請求を受けかねないことを説明し、思いとどまっていただき、知人男性に遺言書を作成するように案内すべきです。
⑤ なお、死後事務委任契約受任者には、死亡届を出す権限はありません(戸籍法87条)。この場合、入院先で死亡した場合は、その病院の管理者、賃借物件内で死亡した場合は、管理者が届出人となり、死亡届出の書類自体は、相談者が使者として役所へ提出する形になると思われます。
⑥ また、知人男性は「息子を呼ばないで欲しい」としてますが、相続開始には相続人による対応が必要ですから、どこかの時点では連絡せざるを得ない状況になると思われます。

【終活・遺言・相続相談】相談例17 財産管理契約・見守り契約

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例17 財産管理契約・見守り契約についての記事です。

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【相談内容】
相談者(80歳女性)から、「終活セミナーの講師から、任意後見契約をするなら、財産管理契約や見守り契約を公正証書で作っておけば安心ですよと勧められた。財産管理契約とか見守り契約も、結んでおいた方がよいのでしょうか」と相談された。

【検討すべき点】
任意後見契約と財産管理契約、見守り契約はよくセットでの利用が推奨されています。任意後見契約については前回述べましたので、今回は、財産管理契約と見守り契約について説明します。
財産管理契約にも任意後見契約と同じいくつかの問題点があります。事案に応じてカスタマイズする必要があり、場合によっては見守り契約やホームロイヤーの利用をお勧めします。

【1】財産管理契約

① 財産管理契約(財産管理等委任契約とか任意代理契約ともいわれます)は、文字通り、委任者が受任者に対して委任者の財産の管理を委託する契約です。しかし、自分で財産管理できるなら、それを人に任せる必要はありません。
② したがって、委任者は、現に財産管理できない状態にあるか、その状態が予想される状態にある方で、通常は初期の認知症だったり、介護を必要とする高齢者です。
③ これに対して、受任者は、財産管理を業務として扱う専門職やコンサルタントとなることが多いはずです(親族が受任者となる場合でも、専門職がサポートすることが多くなるでしょう)。
④ そうすると、契約内容に関する委任者の理解が十分でないまま、受任者側が主導して財産管理契約を締結させる可能性がありますから、受任者側による不当な勧誘がないかには注意が必要です。

【2】財産管理契約の問題点
財産管理契約に関する問題点は以下のとおりです。

【2-1】授権の範囲

① 財産管理契約における授権の範囲は広く設定されがちです。たとえば、財産管理契約の公正証書に添付される「代理権目録」のひな型には、「不動産、預貯金、動産等すべての財産の管理、保存、処分」など一切の行為を含む代理権が挙げられていますが、本当にそれが必要なのか疑問です。
② 移行型の財産管理契約締結の際には、「認知症等によって任意後見契約が必要になる前でも、身体が不自由になって動けなくなった場合に備えて、財産管理の事務について代理権を与える契約が必要だ」と説明されるようです。
③ その目的は入通院、介護サービス等を含む日常生活に必要な事項(いわば保存行為)に限られ、全ての財産の処分に関する代理権までは不要ではないでしょうか。

【2-2】財産管理の始期

① そもそも自立している高齢者が誰かに財産管理を任せる必要はありません。であれば、高齢者本人が財産管理できなくなった時点からの財産管理契約が望まれるはずですから、即効型でない限り、どのような状態になったら財産管理契約を発効させるのか始期を明らかにすべきです(将来型)。
② たとえば、委任者が同契約の発効を希望し、かつ、委任者が要介護1又は2の要介護認定を受け、親族の指定者や担当する介護関係者が同意した場合といった具体的な条件を設定するべきでしょう。

【2-3】財産管理契約の終期

① 財産管理契約と任意後見契約を併用する場合(移行型)、多くの財産管理契約では、「任意後見監督人選任の審判が確定したとき」(任意後見契約の発効時)を財産管理契約の終期としてあげます。連続性を確保するために、この規定は合理的です。
② しかし、任意後見契約では、任意後見受任者(財産管理受任者兼任)の任意後見監督人選任の請求については、「判断能力が不十分な状況になったときは、すみやかに任意後見監督人選任の申立てを行うものとします」といった緩やかな規定しか置かれず、適時における任意後見監督人選任の請求が確実に行なわれるとまでは期待できません。また、財産管理の始期のおいて明晰であった委任者も、その終期においては判断能力が低下しているはずですが、これを数値化することはできません。
③ そこで、任意後見契約や財産管理契約の中で、たとえば、3ヶ月に1度はかかりつけ医を受診して長谷川式簡易知能評価スケールを行ってもらい、「同検査の結果が2回連続で20点を下回った場合、又は医師が重要財産の処分に関する意思決定ができないと判断した場合は、1ヶ月以内に家庭裁判所に対して任意後見監督人選任を求める」といった具体的基準を取り入れることが必要ではないかと考えます。
④ もちろん、そうして行なわれた任意後見監督人選任請求が要件を満たさないとして、あるいは、本人の同意を得られない(任意後見契約に関する法律4条3項)として却下される可能性はありますが、それはそれで正常な過程だと思います。

【2-4】財産管理者の義務

① 一般に、財産管理契約のひな型では、財産管理受任者は、定期的に財産目録、会計帳簿、預貯金目録等を作成し、委任者に報告するといった規定が置かれています。しかし、委任者が完全な事理弁識能力を保持しているなら問題はありませんが、そうでなければ委任者は報告を受けても内容が理解できませんし、監督者も不在ですから、この義務が確実に履行されるかは甚だ疑問です。
② せめて代理出金機能付信託のように、委任者以外の第三者(子や親族)への報告義務を課すべきでしょうし、専門家が財産管理の監督者になることも推奨されるべきでしょう。

【3】見守り契約

①「見守り契約」とは、高齢の委任者が、受任者に対して、面会等の適宜の方法による定期的な様子伺いを依頼し、それによって委任者の健康状態(事理弁識能力を含む)や生活ぶりを確認し、必要に応じて委任者の生活に関する相談にのる契約のことです。そして、財産管理契約でカバーしきれない病院、施設、介護事業者との契約の事務処理や保証人への就任などについても対応できるとして、任意後見契約や財産管理契約とセットで推奨されます。
② 見守り契約は高齢者のサポートのために有益だと思いますし、費用面でのハードルはありますが、高齢者も歓迎してくれるはずです。財産管理受任者や任意後見受任者が、同時に見守り契約の受任者を兼ねることが通常です。見守り契約の受任者を別の専門家(弁護士)などにすることも可能です。その場合、先程の財産管理受任者が義務を果たすように、監督機能を持たせる契約にすることができると思います。

【4】相談者へのアドバイス

① 相談者に対しては、財産管理契約、任意後見契約、見守り契約、死後事務委任契約などのセット活用が推奨され、入院・入所時の保証人サービスから、葬儀・埋葬までワンストップで引き受けると謳われるケースがあるけれども、全てを同一人物に頼るワンストップ・サービスでは監督者がいないので、不祥事を防止するには十分ではないことも説明します。
② 相談者から「全部やって欲しい」と頼まれた場合、財産管理契約と任意後見契約、見守り契約と遺言書作成や死後事務委任契約等を複数の専門職が受任する等して、不祥事防止の体制を構築することが大切でしょう。

【終活・遺言・相続相談】相談例16 任意後見契約

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【終活・遺言・相続相談】相談例16 任意後見契約についての記事です。

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【相談内容】
一人暮らしの相談者(81歳男性)から、会社を経営している甥(65歳)から、「おじさんは今後のことを考えて財産管理契約と任意後見契約をしたほうがいい。自分が引き受けるから」と繰り返し勧められている。よくわからないので、詳しいことを教えて欲しいと相談された。

【検討すべき点】
任意後見契約では、法定後見と違い、本人が信頼できる人を後見人に指名できる利点がありますが、実際には多くの問題があり、あまり活用されていない実態もあります。任意後見契約のどこに問題があり、その結果どのようなことが起きているかを相談者に説明します。

【1】任意後見契約

① 任意後見契約に関する法律は、成年後見制度と同じく、平成12年に施行されました。
② 任意後見契約は、委任者(本人)が、受任者(任意後見受任者)に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状態における自己の生活、療養監護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部をあらかじめ委託し、代理権を付与する旨の委任契約で、任意後見監督人が選任された時からその効力を生じます(任意後見契約に関する法律3条、4条1項)。
③ 成年後見と異なる任意後見契約の最大のメリットは、委任者が元気なうちに自分の意思で任意後見受任者を指名できることです(委任できる権限の範囲も必要に応じて決められます)。成年後見制度の様々な問題を回避するための便法としても用いられてきました。

【2】任意後見契約の利用実態

① 弁護士、司法書士、公証人らが任意後見契約の長所を強調し、同契約を推奨してきたこともあり、令和元年の任意後見契約の新規登録件数は14,102件、同年7月29日時点での累計登録件数は120,962件にのぼりました(令和2年日本弁護士連合会・任意後見制度の利用促進に向けた運用の改善及び法改正の提言)。
② ところが、登記された類型120,962件のうち、本人死亡により閉鎖された登記を除く、100,504件の中で、「任意後見監督人の選任登記」がされたのは3,510件(約3%)しかありませんでした。
③ 任意後見契約を締結(登記)する人は多いけれども、多くの任意後見契約では、任意後見監督人が選任されず(したがって契約も未発効)、事実上、任意後見契約は利用されていません。

【3】任意後見契約の問題点

【3-1】委任者側の理解能力

① 令和元年12月の法務省調査では、任意後見契約時の委任者の平均年齢は80歳で、もっとも契約締結件数が多いのは83歳でした。この年代になると多かれ少なかれ判断能力が衰えますから(80歳~84歳の認知症有病率は21.8%)、委任者は任意後見契約の内容を正確に理解していない可能性があります。
② もともと高齢になると理解不足を疑われるのが嫌で、「わかった」といいがちですし、特に任意後見契約については「まだ先のことだ」を考えて同意しやすいのです。
③ したがって、任意後見契約は、もっぱら受任者側の主導によって取り決められやすいと言えます。

【3-2】財産管理契約との併用

① 任意後見契約の利用形態としては、即効型、移行型、将来型の3種類がありますが、令和元年のそれぞれの利用割合は1%、75%、24%でした(法務省民事局調べ)。つまり、任意後見契約が締結される4件のうち3件は、同時に財産管理契約が締結されているのです。
② しかし、このようなケースでは、財産管理受任者は、広範な権限に基づいて委任者の財産を管理しますから、本人の事理弁識能力が低下しても、わざわざ任意後見監督人による監督を求める必要がありません。むしろ、任意後見監督人がいない方が融通が利き、都合がよいのです。

【3-3】任意後見受任者の属性

① 法務省の調査によれば、任意後見受任者の割合は、親族70%、専門職17%、知人等6%、その他6%でした。しかし、もともと法律や経理に疎い親族が、財産管理受任者及び任意後見受任者としての職務を果たせるとは思えません。
② 専門職(弁護士、司法書士、税理士、コンサルタント)が親族に助言を与えて財産管理受任者に就任させ、その職務を代行しているのではないかと思われます。そうであれば、それら専門職にとっては家庭裁判所が選任する任意後見監督人は不要の存在です。

【3-4】任意後見監督人選任の請求権者

① 家庭裁判所に任意後見監督人を請求できるのは、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者ですが(任意後見契約に関する法律4条1項)、事理弁識能力の低下した本人、高齢者の配偶者、近くにいない親族などにこの役割を期待することは難しいと思われます。
② そうすると、本人(委任者)の状態をよく知っている任意後見受任者自身が任意後見監督人の選任を請求するしかありませんが、財産管理受任者を兼ねている任意後見受任者なら、その必要を感じないでしょう。

【3-5】任意後見契約に対する無理解

① 任意後見監督人が選任されなければ、任意後見契約が発効しないというのは(任意後見契約に関する法律2条1号)、弁護士や司法書士、行政書士にとっては常識ですが、世間ではそうではありません。
② そのため、代理権目録を添付した任意後見契約の公正証書と登記事項を見せられると、多くの方が(任意後見監督人選任前でも)成年後見人と同じ権限を持っていると誤解します。
③ 財産管理契約では認めないはずの出金を認める金融機関もあるそうです。そうした意味でも、任意後見受任者は、任意後見監督人選任の必要を感じません。
④ 任意後見受任者(=財産管理受任者)は、第三者(任意後見監督人)の監督を受けないまま、財産管理契約に基づいて本人の財産を管理するという状態が続き、任意後見契約はいつまでたっても日の目を見ないことになります。

【3-6】適時における任意後見監督人の選任

① 任意後見監督人選任の申立てをする時期についても、任意後見監督人選任の要件である、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき」(任意後見契約に関する法律4条1項)の判断は容易ではありません。
② 事理弁識能力は法律行為の結果が自己にとって有利か不利かを判断する能力であり、それが「不十分である」とは、民法13条1項規定の需要な財産行為について自分一人で行うことは不可能ではないが、適切に行えないおそれがあるため、他人の援助を受けていていた方が安心であるといった程度の判断能力をいうとされます。
③ この要件は、補助開始の要件とほぼ同じであるので、後見開始の要件や保佐開始の要件よりは手前の状態で足り、「一人にしておけない」「判断が危なっかしい」と思われる状態であれば該当するはずです。
④ ただし、客観的な判断と委任者本人の認識は往々にして食い違い、その意味でも任意後見監督人の選任請求の判断は遅れがちになります。

【3-7】本人の同意

① 任意後見監督人を選任するには本人の同意が必要です(任意後見契約に関する法律4条3項)。しかし、本人は自分の事理弁識能力の低下を認めませんし、財産にも執着しますから、「任意後見監督人の選任を申立てて財産管理に着手しますが、いいですか」と問われて素直に承諾するとは限りません。
② なお、本人の同意が得られない場合でも「本人がその意思を表示することができないとき」であれば任意後見監督人を選任できますが(同項但書)、家庭裁判所の調査官調査時にはっきり「いやだ」といわれてしまうとそれまでです。
③ そうなると、例外的に「本人の利益のため特に必要があると認められるときに限り」の要件を満たすものとして、家庭裁判所に後見開始の審判を求めるしかなくなります(同法10条1項)。

【4】相談者へのアドバイス

① 相談者は、甥から任意後見契約と財産管理契約の併用(移行型)を勧められているわけですが、甥に何か思惑がありそうな場合には、移行型には濫用の危険性があることを説明して、慎重に判断するようにアドバイスします。
② 弁護士が相談者の代理人として、これらの契約締結交渉を担当することができることも説明するとよいかもしれません。
③ 相談者から相談を受けた弁護士や行政書士に対して任意後見契約の受任者になるように求められた場合には、●任意後見契約に関する相談者の理解を確認し、●財産管理契約を伴わない将来型の任意後見契約を検討し、●任意後見監督人の選任申立てに関する具体的基準を相談者と協議して、●その申立てに対して同意しない場合は任意後見契約を解除することを確認する(任意後見契約に関する法律9条1項)などの手順で引き受けるべきだと考えます。