【終活・遺言・相続相談】相談例53 不動産の相続

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例53 不動産の相続についての記事です。

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【相談内容】
相談者(60歳男性)から、「半年前に母(85歳)が亡くなり、長男の私と次男(56歳)、三男(53歳)の3人が相続人となった。遺産としては、母が住んでいた自宅くらいしかない。ずっと独身の三男は、1年前から自宅に居候していて、「母から頼まれたから、自宅は俺が相続する」と言って言うことを聞かない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
不動産が遺産に占める割合は4割を超えるといわれ、遺産分割でもかなりの割合で不動産の評価と分割方法が問題になります。特に、被相続人の自宅が遺産のほとんどを占め、しかも相続人が居住している場合には、自宅を誰が相続するかで意見対立が生じやすくなります。

【1】不動産の遺産分割の方法

一般に、不動産の分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割があります。

【1-1】現物分割

① 現物分割は、遺産中に複数の不動産がある場合に複数の相続人が別々の不動産を取得する分割方法です。兄が3000万円のA不動産を取得し、弟が6000万円のB不動産を取得し、その差額を調整するため、弟が兄に代償金1500万円を支払うというように、代償分割と組み合わせて行なわれることが多いです。
② なお、相続不動産が自宅兼テナントビルの1棟だけという場合、兄が1階から3階部分の区分所有権を取得し、弟が4、5階の区分所有権を取得するといった現物分割の方法もありますが、後々、その建物の権利でもめます(たとえば、雨漏りの修繕やエレベータの保守点検など共有部の管理費で対立します)。
③ したがって、現物分割でうまくいくのは、相続人の数に応じた独立の不動産がある場合になります。

【1-2】代償分割

① 代償分割は、相続人の一人が遺産である不動産を相続し、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。相続不動産は取得者の単独所有となるので後顧の憂いはありませんが、代償金の金額(不動産の評価)をめぐって対立しやすく、また、取得者に代償金を支払うだけの資力や信用がなければ成立しません。
② なお、相続不動産を取得する相続人が、代償金の支払に代えて自己所有不動産や持分を他の相続人に譲渡する場合には譲渡所得税を課税されることがあるので、等価交換の特例を検討します(税理士への相談は不可欠です)。

【1-3】換価分割

① 換価分割は、相続不動産を売却して、その代金を相続人間で分配する方法です。市場で売却するため代償分割と比べて不動産の評価については問題が起こりにくく、相続人間の関係を公平に清算できる点で理想的です。
② ただし、当該不動産の承継に固執する(売却に反対する)相続人がいれば、この方法では解決できません。
③ また、換価分割では不動産を処分するため、相続税の他に譲渡所得税が課税されます。したがって、換価分割による代金を得る場合は、代償分割で代償金を得る場合と比べると、譲渡所得税が課税される分だけ手取り額が下がるという短所があります。
④ 換価分割の具体的方法についても注意が必要です。たとえば、3人の子が換価分割する場合、持分3分の1ずつの所有権移転登記を経由し、3人が売主となって不動産を売却することになるのが原則です。
⑤ しかし、遠方居住の子がいる等の事情により、手続を簡略化するために、一人の子の単独名義で登記した上で、その名義人が不動産を売却して、他の相続人に分配金を支払うという方法が採られることが少なくありません。
⑥ しかし、思ったような金額で売れず、もう少し、もう少しと躊躇しているうちに長期間が経過することがあります。ところが、ようやく不動産を売却した後、名義人(売主)の子にだけ譲渡所得税が課税され、分配金の支払いを受けた他の子には贈与税が課税される可能性があります。
⑦ これを避けるためには、遺産分割協議書の中で、名義人の子はあくまで換価分割のために不動産を単独取得し、その後売却して代金を分配することが明らかになるように記載する必要があります。また、相続人間では、売却の時期や値段もはっきりと決めておくべきでしょう。

【1-4】共有分割

① 共有分割では、遺産分割協議の結果、各相続人が不動産の共有持分を取得する分割方法です(各相続人の持分が法定相続分通りとか限りません)。
② 遺産分割が成立しなくても、相続不動産は各相続人の共有に属しますから、遺産分割での不動産の共有分割は問題の先送りに過ぎないと思えます。
③ しかし、遺産に関しては分割の方法や分割の禁止が定められていますので、相続人が遺産の分割を求めるためにはまず遺産分割によるべきであり、いきなり共有物の分割請求(民法256条、258条)を求めることはできないと解され、令和3年民法改正でも、相続財産に属する共有物の分割は遺産分割によるのが原則で、民法258条による分割請求ができないことが確認されました(改正民法258条の2第1項)。したがって、共有分割の遺産分割は、共有物の分割請求の条件を整える必要があります。
④ したがって、延々と時間をかけて遺産分割協議や遺産分割調停を続けるよりは、法定相続分通りで相続不動産を共有分割してしまい、その後の共有物分割請求訴訟で分割を求める方が早道になる可能性があります。
⑤ 共有物分割請求訴訟においては、競売や任意売却による処分も考えられますし、全面的価格賠償の判決を得て、適切な相続人が相続不動産の所有権を手に入れることができるかもしれません。

【2】自宅の処分

① 相談例の場合、複数の不動産はないので、現物分割は不適です。三男が自宅の承継に固執するなら、相談者と次男は、三男に対して代償金を支払うよう求めることになりますが(代償分割)、三男の資力が乏しければそれも期待できません。三男が「自宅を退去しない」「絶対に売らない」と主張する以上、換価分割もできません。
② このような場合、相談者としては、遺産分割調停を申立て、調停委員会による三男の説得を期待しますが、三男が(共有分割も含めて)自宅の処分に同意しなければ、調停の成立は期待できません。
③ したがって、調停は不成立として遺産分割審判に移行してもらい、遺産の競売や任意売却による換価(家事事件手続法194条)又は代償分割(同法195条)の審判を期待することになります。なお、換価分割ですら相当でない場合は共有分割の審判が下されることもあるようです。

【3】譲渡所得税

① 遺産を処分する場合(換価分割や清算型遺言など)には、譲渡所得税が問題になります。譲渡所得税とは不動産などの資産を売ったときの譲渡所得(譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除)に対して、事業所得や給与所得とは分離して課税される(分離課税)所得税の一種です。
② その税額に関しては、譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として所得税15%、住民税5%及び復興特別所得税2.1%(計22.1%)が課せられ、所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得として、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税2.1%(計41.1%)が課税されます。
③ 例えば、亡母が昭和62年に6500万円で買った不動産を相続し、令和3年に5000万円で売却した場合には、譲渡価格<取得費ですから、課税すべき譲渡所得がなく、譲渡所得税はかからないはずです。ところが、取得費の金額を証明するためには昭和62年当時の売買契約書等が必要で、契約書等によって取得費を証明できないときは、取得費は譲渡価格の5%(250万円)しか認められません。そうすると(5000万円-250万円)×0.221(長期譲渡)=10,497,500円の譲渡所得税が課税されます。
④ 便宜上、ここでは復興特別消費税や特別控除、減価償却を無視していますが、いずれにしろ、30年前の売買契約書などがあるかないかによって、換価による手取り額にはかなりの差が出るのです。
⑤ ちなみに、譲渡所得税の申告期間は譲渡日の翌年の2/16から3/15ですから、令和4年2月に相続不動産を売却したら、申告期限を過ぎた場合、令和5年の初夏に税務署から「譲渡所得」に関する問い合わせのお手紙が来ます。
⑥ なお、税務面としては、そのほかにも、居住用財産の特例など各種特例の適用の可否、遺産分割に関する士業報酬を譲渡費用として控除できるかなどの問題もあります。最初から税理士の相談することが大切で、いつでも相談できる税理士を探しておくことが大事になってきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例52 一次相続と二次相続

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【相談内容】
相談者(52歳男性)から、「父親(84歳)が死去し、遺言はなかったが、母(83歳)がすべての遺産を相続するといっている。子は兄(長男54歳)と私(次男)の2人だけだが、兄はすでに母の意見に賛成した。ここは私も譲って、母の言う通りにした方がいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
夫婦の片方が亡くなった場合(一次相続)、他方配偶者が全財産を相続するケースが多く見受けられます。しかし、複数の子がいる場合に、他方配偶者も死亡した場合(二次相続)のことを考えると、諸手を挙げて賛成できるわけではありません。今後、どのような問題が生じるかを想像して、一時相続でもそれなりの遺産分割を行うことを勧めます。

【1】配偶者の不安

① 高齢でも夫婦そろっていれば、愚痴や不満を口にしながらも自然と助け合って生活しているものですが、片方が亡くなると、残された配偶者は一気に不安になります。
② そして「お父さんの財産は、2人で築き上げてきたものだから、私がもらう」といった言い分で遺産の単独取得にこだわりがちです。なお、一人っ子の場合には、残された配偶者と子の関係がよほど悪くなければ親子2人だけで話合えることなので、大きな問題になることは稀です。

【2】子らの思惑

① 高齢の親世代と子世代の間には、経済的格差が生じており、40代から60代にかけての子世代は、教育資金で財産が減り、年金の受給年齢も気になるところです。資産を増やす方法といっても、退職金を除けば、株式投資や暗号資産などリスク性向の高いものか宝くじ以外に見当たりません。
② ですから、子らも、一時相続の際にいくばくかの財産を相続させてほしいというのが正直な気持ちです。しかし、複数の子がいる場合には、お互いに相手の出方を見てしまいますし、自分だけが反対して母の機嫌を損ねたくないという迷いが生まれます。
③ 下手に権利を主張して母の介護を任されても困ると思うかもしれません。そうして、二次相続の際には法定相続分をもらえるはずだからと考え直して、母の言い分を認める流れになりがちです。

【3】一次相続で配偶者に相続財産を集中させることの問題点

① 遺産を配偶者に集中させると以下のような問題を生じます。
② 一次相続において遺産の取得を我慢した子らは、二次相続では、必ず、相応のものを相続したいと考えます。
③ したがって、父の遺産を吸収した母の財産の目減りが気になりますし、ほかの兄弟も母の財産を狙っているのではないかと疑心暗鬼になりがちです。
④ 自分以外の兄弟が母と同居をし始めたと聞くと、親を取り込まれたと感じ、知らないうちに遺言書を作成されて自分は相続から外されるのではないかと不安に思います。そうして、後見開始の申立て、親の取り合いや遺言書の書かせ合いなどに発展することもあります。
⑤ 母が死亡すれば(二次相続)、もう気を遣うべき親は存在しませんから、子らは、相続人としての権利を主張します。遺言書があっても、遺言無効を主張し、遺産分割になれば特別受益や寄与分を主張して紛糾する可能性が高くなります。
⑥ そうした紛争リスクを減らす方法の一つは、一次相続でも子らに相応の遺産を分配しておくことです。

【4】配偶者税額軽減のフル活用

① 配偶者が遺産を総取りする理由として、配偶者税額軽減を利用できるからとよく言われます。そこで、その合理性を検討してみます。

【4-1】一次相続での相続税の課税

① 例えば、遺産が1億6000万円で、妻、長男、次男の3人が相続人だとします。
② 簡略化(負債などなし、各種特例もなし)して計算しますと、課税相続財産は1億1200万円。
③ 法定相続分に応じた各相続人の負担額は、妻が980万円、子らは370万円となります。
④ 相続税の総額は、1720万円で、これを法定相続分通りで遺産分割すれば、長男と次男は430万円の税額になります。
⑤ 妻は、配偶者税額軽減により、課税されません。
⑥ これに対して、被相続人の妻が遺産全部を相続するなら、長男と次男は相続税は0円となり、妻も、相続税は0円です。
⑦ したがってこの時点で課税されませんから「せっかくお父さんが貯めた遺産を税金に取られるのはもったいない」という目的を果たしたことになります。

【4-2】二次相続での相続税の課税

① しかし、二次相続迄考えると、合計の税負担は増える可能性があります。
② 前述の例で、一次相続では法定相続分通りに遺産分割し、その直後に母が他界した(二次相続)としましょう。そして母にはもともと1億円の固有財産があったと仮定します(母の遺産は1億8000万円)。
③ 子の母の遺産を二人の子が相続すると、課税相続財産は、1億3800万円。法定相続分に応じた相続税額は各1370万円になります。
④ 相続税の総額は2740万円となり、二人の子らは、一次相続と二次相続を併せて3600万円の相続税負担をすることになります。
⑤ これに対し、一次相続では母が遺産を単独相続していた場合(母の遺産は2億6000万円)、課税相続財産は2億1800万円、法定相続人の法定相続分に応じた各相続人の相続税額は2660万円となり、相続税額の総額は5320万円となります。
⑥ そうすると、一次相続こそ相続税が課税されずに済みましたが、二次相続では5320万円の相続税を負担することになり、一次相続で法定相続分通りに相続した場合に比べると、1720万円多く相続税がかかることになります。

【4-3】数字のトリック

① 以上の試算は、もちろん仮定に仮定を重ねたものです。母の固定資産は5000万円かもしれませんし、2億円かもしれません。83歳の母の平均余命は約10年ですが、その間、介護付き有料老人ホームに入所していれば、その費用だけで優に3000万円以上の出ていくことになるでしょう。
② このように考えてみると、一次相続で母に遺産を集中させることは、母の財産が少なく、母が高額の施設に入所して長生きする場合には節税に寄与します。
③ 逆に、母の蓄えが多く、早くお亡くなりになる(又は倹約する)と想定すれば、より高額の相続税を招く可能性があるのです。
④ したがって、配偶者税額軽減をフルに活用できることは、二次相続での紛争のリスクを冒してまで配偶者が遺産を全部取得する決定的な理由にはなりません。

[終活・遺言・相続相談]相談例51 非同居の子からの遺産分割協議の相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例51 非同居の子からの遺産分割協議の相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(64歳女性)から、「郷里の父(91歳)と母(90歳)は2年前に別々の施設に入ったが、8か月前に父が肺炎で亡くなった。ずっと両親と同居していた兄(66歳)が「後のことは俺がする」というので任せていたが、最近、兄から「母も同意している。すぐに遺産分割協議書に署名捺印して印鑑証明書と一緒に送り返してくれ」という手紙が届いた。どうすればいいか」と相談された。

【検討すべき点】
非同居の子からの相談です。(遺言書ははなかったものとします。)兄が求めている遺産分割協議書の案が納得できるなら兄の言うとおりにすればいいでしょうが、遺産の内容がはっきりしていなかったり、内容が不合理なら遺産分割を急ぐ必要はありません。

【1】非同居の子の立場

① このブログでは、親と同居している子は、非同居の子から「親に寄生している」と疑われがちだと説明してきました。しかし、非同居の子が常にそう考えるわけではありません。
② たとえば、この相談例で、相談者が進学を機に18歳で郷里を出たのに対して、兄は地元で就職して両親と同居し、その妻とともに、20年近く両親の世話をしてきたといった事情があるとしたら、相談者は「親の面倒を見てもらって申し訳ない」という気持ちかもしれません。
③ また、相談者も義理の両親の介護をしていれば、兄夫婦のたいへんさはよく理解できるでしょう。そうすると母に余計な心配を掛けさせたくないし、兄が全部やってくれているのなら、兄に従おうという気持ちになっていたとしても不思議ではありません。
④ つまり、遺産分割協議書とはどういうものなのか分からないので、質問しに来ただけという可能性もあります。したがって弁護士は、相談者の率直な気持ちを伺うべきですし、相談者が気乗りしないようなら、遺産分割協事件として依頼を勧めるのは不適切です。

【2】提案内容の検討

① 相談者が兄が作成した遺産分割協議書等を持参していれば、その内容を拝見します。父の遺産は全て母が取得するとか、自宅不動産は兄が相続し、預貯金は母と兄と相談者が法定相続分どおりに分けるといった内容であれば、それなりに合理的です。
② 逆に、兄が父の遺産のほぼすべてを相続するという内容で、預貯金額なども含めて遺産の評価が一切わからないという場合は問題です。仮に、相談者は自分は相続しなくても良いと考えていたとしても、「どのくらい譲ったかは知っておきたい」というのが人情でしょう。
③ もちろん、相談者が兄による財産の費消を疑っている場合なら、積極的に遺産の内容や評価について説明を求めるべきです。

【3】署名押印を急がされる場合

① 相談例のように、相続開始10ヶ月の相続税申告・納付の期限が迫ってから、いきなり、遺産分割協議書への署名捺印と印鑑証明書の交付を求められ、「すぐに遺産分割しなければ(配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用を受けられず)、莫大な相続税がかかることになる」と迫られることがあります。
② しかし、相続税の申告納付期限までに遺産分割が成立しなければ、未分割の申告をすれば足ります。
③ たしかに、未分割の申告では、相続人は、配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用がないことを前提に計算された、相続税をいったんの納税しなければなりませんが、本来の申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立すれば、更正の請求をして、それらの特例の適用を受けることができます。
④ ですから、当面の納税資金を用意出来る限り、慌てる必要はありません。
⑤ また、同居の子から「節税のため、とりあえず遺産分割協議書に署名捺印してくれ。後で遺産分割協議をやり直せばいいから」と頼まれることもあります。しかし、遺産分割協議のやり直しができる保証はありませんので、このような申出には従うべきではありません。
⑥ 時折、節税目的と称して強要された遺産分割協議は無効だという訴訟を目にしますが、印鑑証明書をつけて遺産分割協議書に自署している限り、その効果を覆すのは極めて困難です。
⑦ なお、遺産分割協議をやり直した場合には、税務署から2回目の遺産分割協議による財産取得を贈与と認定され、贈与税が課税される可能性が非常に高くなります。
⑧ さらに、同居の子から、「母の相続ではお前の言い分を聞くから、父の相続は俺に任せてくれ」と言われることもありますが、父の相続(一次相続)で譲った分を母の相続(二次相続)で取り返せるわけだはありません。

【4】弁護士への委任

① 相談者が兄の要請に納得がいかないなら、遺産を調査して兄と交渉すべきです。遺産の調査は行政書士がお手伝いすることは可能ですが、代理人としての交渉は弁護士の独占業務になります。
② ただし、施設入所の90歳の母の意思能力が十分ではない場合には、問題が複雑になります。
③ 相談者と兄が同意し、母も積極的に反対の意思表示をしないなら、亡父の相続人3人による遺産分割が成立するでしょう。母の推定相続人である兄も相談者も母の意思能力の欠缺を争わないため、結果的にそれが問題にならないからです。
④ しかし、弁護士が代理人として関与し、意思能力がない当事者がいることを知りながら遺産分割を成立させることは勧められませんので、原則として、母の後見開始の申立てをさせることになると思います。
⑤ 後見開始の審判が出ると後見人が母に代わり、遺産分割協議に参加します。その場合、家庭裁判所は母の相続分については、常に法定相続分の確保を求めてきます。結果、兄や相談者の思い描くような遺産分割ができなくなる可能性が高くなります。

【終活・遺言・相続相談】相談例50 同居の子からの遺産分割協議の相談

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【相談内容】
相談者(50歳男性)から、「同居していた母が2週間前に脳梗塞で亡くなり、葬儀を終えました。相続人は自分と弟(48歳)だが、葬儀後、弟とは連絡を取っていない。弟とはもめたくないが、どのように相続の話を切り出せばよいか」と相談された。

【検討すべき点】
最初に確認したいのは、遺言の有無ですが、今回は遺言がなかったものとして考えます。被相続人と同居していた相続人は、早めに相続財産目録を作成し、その他の相続人に提示して遺産分割協議を呼びかけるべきです。完全な相続財産目録が作れなかったとしても、遺産分割に積極的な姿勢を示すことで円満な遺産分割協議を期待できます。

【1】同居の子の立場

① 同居の子である相談者が、かいがいしく母の世話をしたという事情があるなら、相談者としては「長男としてするべきことはした」との思いがあるはずである。また、高度の認知症や長患いにより、配偶者ともども介護に苦労したのなら、「弟には感謝してもらいたい」と思うかもしれません。
② しかし、事情をよく知らない非同居の子からは、親の財産を取り込んでいるのではないかと疑われるかもしれません。そして、相続開始後、適切な時期に同居の子が遺産の開示や遺産分割協議の働きかけをしなければ、非同居の子は、遺産について明らかにできない事情があるのではないかと勘繰りますし、一度その疑いが生じれば、膨らむことはあっても、萎むことはありません。
③ したがって、同居の子である相談者は、あらぬ疑いを避けるためにも、迅速に相続財産目録を作成して非同居の子(弟)に報告するべきです。
④ なお、自分の財産をしっかりと抱え込み、同居の子に対してさえ内容を教えないまま亡くなる方もいますが、その場合には相談例49の方法で遺産を調査します。

【2】相続財産目録の作成

① 相談者があらかじめ亡母から財産の詳細を知らされていたのなら、早速、相続財産目録を作成します。目録を作成する場合には、遺産を特定するだけではなく、その経済的価値がわかる資料も添えられれば、なおよいでしょう。そうすれば、相談者が隠し事をしていないことが伝わりますし、取り分の期待値も早目に明らかになって、紛糾する可能性が下がるからです。
② たとえば、不動産については、全部事項証明書や固定資産税などの請求書兼納付書又は固定資産評価証明書の写しを添付します。預貯金については、死亡日前後まで記帳された通帳の写しや死亡日現在の残高証明書を添付します。
③ 財布の中の現金は概算で足りますが、0円というのはいただけません。株式・投資信託等については金融機関から届いている取引明細書を添付しておけば足りるでしょう。動産(自動車や貴金属等)については、どの程度の値段で換価できるか不明ですから、評価額を記載しない方法もあります。
④ もっとも、相続財産目録は迅速に交付すべきで、完璧を期す必要はありません。更に調査中の遺産があり、修正する予定があるなら、その旨を付記するようにします。

【3】税理士の関与

① 相続税の申告を税理士に依頼するなら、税理士が作成してくれる税額計算書(案)を相続財産目録に代えても構いません。ただし、それを入手するには時間がかかりますので、あらかじめ、他の相続人に、税理士に依頼していることを伝えておくべきです。
② 被相続人が生前に申告を頼んでいた税理士であれば、遺産の内容を把握しているでしょうし、税理士にとっても相続人全員から相続税申告業務の代理を受けた方が合理的です。相続人同士の緩衝材としての役割を税理士に期待することもできるでしょう。
③ 調査の過程で、生前贈与や名義預金の問題が出てきた場合には、税理士の関与が不可欠と言えます。

【4】遺産分割協議の申出

① 相談者としては、四十九日の法要から相続開始後3ヶ月くらいの時期までには、相続財産目録とともに遺産分割の案を示して協議を申し出るべきでしょう。
② 通夜や葬儀の席で相続の話を切り出すのはいささか非常識ですし、しかしながら、相続人を待たせるわけにもいかないからです。

【5】遺産分割事件

① 相談者が相続財産目録を作成して遺産分割案を示しても、弟が納得しなければhな試合を行いますが、それでもまとまらない場合には、弁護士に依頼していただくことになります。
② なお、相談者の「もめたくない」を額面通りに受け取るのは危険です。というのも、自分たち夫婦は最後まで母の在宅介護に追われていたのだから、多めにもらっても当然だが、「もめたくない」という意味の場合や、すでに十分な生前贈与を受けているので、「もめたくない」という場合もあるからです(特に生前贈与は隠されている傾向にあります)。
③ このような場合は、「もめて当然」ですので、早い段階で弁護士に依頼することが必要になってきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例49 遺産の調査

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【相談内容】
相談者(61歳女性)から「1か月前に施設に入っていた母(89歳)が他界した。施設に入る前に母と同居していた弟(58歳)からは何の報告もない。弟に知られずに、母の遺産を知る方法はないだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
相続が開始した場合、被相続人と同居していなかった相続人から、「同居していた相続人が明らかにしてくれない遺産を調査したい」と相談されることはよくあります。相談者自身でできる遺産調査方法を説明しますが、できれば、同居の相続人から任意に開示してもらうよう勧めます。

【1】不動産の調査

① 被相続人名義の不動産については、相談者も存在を把握している可能性が高いでしょう。その場合には、その不動産の全部事項証明書や固定資産税評価証明書を入手し、さらに非課税の不動産を含めて漏れがないよう非課税込みで名寄帳を取り寄せるよう勧めます。
② 被相続人から他の相続人に対して自宅購入資金を提供した可能性がある場合(特別受益)には、被相続人がその不動産の共有持分を持っている可能性がありますので、その不動産の全部事項証明書も入手します。
③ 土地の評価については、固定資産税の評価額のほかに、国税庁の路線価図・評価倍率表で路線価を確認します。固定資産税評価額は実勢価格の7割、路線価は実勢価格の8割とされているので、固定資産税評価額を0.7で、路線価を0.8で割り戻せば、おおよその実勢価格が把握できます。
④ 遺産分割では不動産の評価が問題になるので、固定資産税評価額、路線価、おおよその実勢価格を早めに把握することには意味があります。

【2】預貯金の調査

① 預貯金・株式・投資信託等については、思い当る金融機関に出向き、除籍謄本や戸籍謄本によって相続人であることを証明し、相続開始時の残高証明書と現在までの取引履歴(通常は10年間の履歴、解約済み口座を含む)を取得します(株式等については、株式会社証券保管振替機構に対して必要書類を郵送して照会します)。
② 金融機関への照会の際には、名寄せや全店検索も要請します。これらの作業は相続人本人に行なっていただくほうが簡便ですが、二度手間にならないように、行政書士や弁護士等が代理人として、調査した方がよいかもしれません。
③ 開示された銀行口座の取引履歴に、電気・ガス・水道・電話・NHK・保険料・介護施設利用料・固定資産税・住民税等の引落や、年金の受給履歴がない場合は、ほかに口座がある可能性が高いので、被相続人の生活圏にある別の金融機関に調査の範囲を広げます。
④ 特に、高齢者は郵便貯金や農協を利用していることが多いので、ゆうちょ銀行とJAバンクへの照会は必須です。ただし、ネット銀行・ネット証券・暗号資産(仮想通貨)等の遺産は、被相続人のスマートフォンやパソコンを調べないと判明しないことがあります。
⑤  このような方法で得られた取引履歴の中で、母がかくしゃくとしていた頃に、多額の出金があった場合には、他の相続人への生前贈与(特別受益)の可能性があります。また、母が自分の財産を管理できなくなってから以降に、ATMで数度に分けて不自然な出金があれば、不正出金(使途不明金)の可能性があります。
⑥ なお、相続開始直前の出金も、それが葬儀費用等として通常予想される額を超えていれば、同様に、遺産性が問題になることがあります。

【3】名義預金・現金・動産等の調査

① 現金(預金口座から出金されたもの)、動産(貴金属・時計や高価な服飾品など)、名義預金(被相続人が管理していた親族名義の預貯金口座)は、通例、士業による調査でも判明しません。ただし、自宅の金庫や貸金庫に、現金、金等のインゴット、証券、預金証書、親族名義の通帳などが保管されていることがありますので、それらの開扉の際には必ず立ち会うべきです。
② なお、弁護士や士業に依頼したり、遺産分割調停を申立てれば(家庭裁判所に頼めば)、隠された遺産が明らかになるはずだと期待される方がいますが、その可能性はほぼありませんので、調査には限界があります。

【4】相続債務の調査

① 被相続人が負担している相続債務については、残されたクレジットカードや請求書から判明しますが、非同居の相続人にはわかりません。そこで、不動産に抵当権が設定されていないかを確認し、信用情報の開示請求を行って債務を確認します。
② 信用情報機関への情報開示請求は、除籍謄本や被相続人との関係を証明する戸籍謄本等を揃えて郵送にて申請します。信用情報機関は「JICC」「CIC」「KSC」がありますので、それぞれに情報開示請求を行います。

【5】任意開示

① これらの方法でも、遺産の全てを把握するのは困難ですから、被相続人と同居し、手元に預金通帳等の資料があると思われる相続人に任意に遺産を開示してもらうのが、最も効率的です。
② 相談例では、まだ相続開始後1か月であり、弟は遺産を調査中なのかもしれません。そうだとすれば、いきなり、「遺産を開示しろ」というのでは非常に失礼であり、話がこじれます。
③ そこで、同居の相続人に対しては、「介護費・治療費や葬儀費用は払えたのか、一部負担した方がいいのではないか」、「準確定申告の期限(相続開始後4か月以内)が迫っているが大丈夫か」、「相続税の支払い(相続開始後10か月以内)は大丈夫だろうか」、「負債が多いなら相続放棄(相続開始後3ヶ月以内)を検討した方がいいのか」といったことを婉曲に伝え、同居の相続人が自然に遺産を開示するような流れを作ることをお勧めします。その反応を見てから、遺産の調査にかかっても遅くはありません。

【6】その他の方法

① 相続人全員が同一の税理士に相続税申告を依頼した場合、その税理士からの報告によって遺産の内容が判明することがあります。厳密には遺産ではありませんが、相続開始前3年間の生前贈与や生命保険などは相続税の課税対象ですから(相続税法19条)、それが明らかになることもあります。
② 遺言によって指名された遺言執行者からの相続財産目録の交付(民法1011条1項)によって遺産の内容を把握できることもあります。ただし、遺言執行者による相続財産目録は遺言執行の対象財産に限られますので、過度に期待することはできません。
③ 行政書士や弁護士等士業に遺産調査を依頼すれば、行政書士や士業は相続人に代わって上記の手続を行えますし、不動産や遺留分等の評価も調べられます。ただし、行政書士や弁護士等であっても、基本的に相続人の権限以上のことはできませんので、士業による調査でも全容が解明できない可能性があることにご留意ください。

【終活・遺言・相続相談】相談例48 自筆証書遺言がある場合の手続き

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例48 自筆証書遺言のある場合の手続きについての記事です。

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【相談内容】
相談者(62歳女性)から、「3か月前に母(92歳)を亡くしたが、母の手書きの遺言書(封筒に入っていたが、封入も封印もないもの)を預かっている。ただ、弟も母に何か書かせていたらしい。どうしたらいいだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
時折、複数の子に請われるまま、高齢の親が複数の自筆証書遺言を書くケースがあり、後日、紛争の原因となります。他の兄弟姉妹の出方をうかがっても意味はありませんので、相談者には淡々と自筆証書遺言の検認を行うよう勧めます。

【1】検認手続き

① 遺言書の保管者は、相続開始を知った後、遅滞なく検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。封印のある場合は家庭裁判所での検認期日まで開封することができません(民法1004条3項)。なお、公正証書遺言と遺言書保管所保管の遺言は、検認は不要です。
② 家庭裁判所に遺言書検認の申立をすると、裁判所は検認の審判期日を定め、遺言者の相続人全員に対して呼出状を発します。相談者には、この手続きを説明し、早めに検認を申立てるよう勧めます。
③ 相談例では弟も自筆証書遺言を保管している可能性があるので、弟に対して、相談者が遺言書を持っていることと検認を請求することを知らせ、もし、弟も遺言書を持っているなら、同じ家庭裁判所に牽引を請求するよう促します。
④ 直接、弟にその書面を見せてもらうことも考えられますが、検認を求める方が堅実です。
なお、検認手続きが終われば、申立人は検認済証明書を付した遺言書をを返してもらい、その他の相続人には、その遺言書を内容とする検認調書の交付を求めることになります。

【2】遺言書の有効性

① 相談者が保管している遺言書は封入も封印もない場合なので、封筒の中の遺言書を見ることができます。そこで、相談者が遺言書を持ってきているなら、中身を拝見して遺言の有効性を確認します。
② この場合、自筆証書遺言ですので、全文自筆、署名捺印、日付等の形式要件と筆跡・印影を確認し、形式的有効性を確認するとともに、検認期日に訊かれることになる作成の状況(日時・場所・同席者・経緯など)や保管の経緯も確認しておきます。
③次に、遺言者の年齢から遺言能力が気になるので、遺言書作成当時に被相続人がどのような状態だったかを確認します。

【3】遺言を見て確認するポイント

① 自筆証書遺言では、形式的要件以外に遺言の内容に問題がある可能性があります。そこで、遺言書を拝見できるのであれば、以下の点をチェックします。
② 第一に、遺言の確定性の点から、相続分の指定か、特定財産の処分が記載されているのか(特定財産承継遺言)、処分文言はどうなっているのか(相続させる遺言か遺贈か、あるいは取得させる、承継させる、任せるなど)、遺族なら特定遺贈なのか包括遺贈なのか割合的包括遺贈か、一部遺言でないか、予備的遺言や条件付遺言ではないか、などを確認します。
③ 第二に、履行の確保の観点から、遺言執行者を指定しているかどうかなどを確認します。
④ 第三に、その遺言が共同相続人に公平なものか、また、遺留分侵害していないかを考えます。その他、自筆証書遺言では、遺言書の文言があいまいで、遺言者の意思が確定できないときがあります。そのよう場合には、相談者に質問しながら、遺言の解釈によって遺言内容を確定できる可能性があるかを考えます。

【4】複数の遺言

① 複数の遺言がある場合には、後の遺言が優先します(民法1023条1項)。
ただし、弟が母に書かせたらしいという書面がなにか、相談時点で明らかになっていません。そもそも認知症が進むなどして判断能力が低下している高齢者は、以前に遺言書を書いたことを忘れたり、目の前にいる人の言いなりになって遺言書を書いたりします。
② また、日記やチラシの裏に遺言めいたことを書くこともあります。したがって、検認によって、弟が持っている書面の形式と内容を確認する必要があります。
③ なお、家庭裁判所は、遺言らしい書面であれば検認しますから、検認を受けたからといって、その書面が遺言であるということにはなりません。また、弟が保管している書面が有効な遺言だったとしても、双方の遺言の内容が重複、抵触しない場合もあり、その場合には前の遺言も、その全部又は一部が有効になる可能性があります。

【5】遺言と遺産分割協議

① 遺言があっても、その内容を知ったうえで、相続人と受遺者の全員が遺産分割に合意した場合には、その遺産分割協議が有効になると解されます。ですから、遺言の内容が当事者全員にとって不合理なものであれば、改めて遺産分割協議をすることも可能です。
② 相談例の場合、姉(相談者)と弟の関係性が不明ですが、お互いに遺言書を持っているような場合には、警戒あるいは忖度して処理が遅れがちになります。
そして、それが相続紛争の遠因になる可能性もありますから、早めに検認手続きを勧めます。

【終活・遺言・相続相談】相談例47 遺言の調査

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【終活・遺言・相続相談】相談例47 遺言の調査についての記事です。

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【相談内容】
相談者(61歳女性)から、「郷里の母(84歳)が息を引き取って半年たったが、郷里に住む弟(57歳)から連絡がなく、気をもんでいる。そういえば、母は2年前に「遺言書を書きたい」といっていたので、遺言書があるかもしれない。それを確認するにはどうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相続開始後半年たっているなら、相続税の申告期限が迫っていますから、すぐに遺言の有無を確認したいところです。遺言には、公正証書遺言、法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づき遺言書保管所に保管された自筆証書遺言、法務局に保管されていない自筆証書遺言等の3通りがありますので、それらに応じた確認の方法を説明します。

【1】公正証書遺言の確認

① 公正証書遺言の存否を確認するには、母の除籍謄本、相談者本人の戸籍謄本(母が死亡し、相談者が相続人であることを証明できるもの)及び本人確認の書類(免許証・健康保険証等)をもって、近くの公証役場を訪問し、母が作成した公正証書遺言を検索してもらいます。
② その結果、該当する公正証書遺言があると分かれば、それを作成した公証役場に謄本を請求します。
③ なお、行政書士や弁護士が相続人から遺言調査を引き受ける場合は、上記の書類に加え、相談者からの委任状と士業の身分証明書が必要になります。
④ ただし、公正証書遺言を作成している高齢者の割合は10人に1人程度でしょうから、公正証書遺言が見つかるとは限りません。

【2】遺言書保管所保管の自筆証書遺言の確認

① 令和2年7月1日以降に受付けられた遺言書保管所保管の自筆証書遺言についても、地元の法務局に戸籍等と身分証明書を持参して、自筆証書遺言が保管されているかどうかを確認(遺言書保管事実証明書の交付請求。手数料は800円)します。
② 結果、遺言書が保管されていると判明すれば、遺言書情報証明書の交付を請求します(手数料は1400円)。
③ この証明書は、遺言書の保管を届け出た法務局(遺言書保管所)に請求しなくても、地元の法務局に請求して交付してもらうことができますし、これ以外に遺言の内容を閲覧することもできます。
④ ただし、遺言書保管官が相談者に遺言書情報証明書を交付し、又は閲覧させた場合には、遺言書を保管している旨を、他の相続人、受遺者や遺言執行者に通知されます。
⑤ 相談例の場合で言えば、弟が遺言書保管所保管の遺言書を利用しようとすれば、相談者にも通知されるシステムになっています。
⑥ なお、相談者の話によれば、母は2年前に自筆証書遺言を書いていた可能性があるが、法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行前に作成された自筆証書遺言も保管の対象になります。したがって現状では、公証役場での検索と遺言書保管所での確認は必ず行うべきでしょう。

【3】遺言書保管所で保管されていない自筆証書遺言等の確認

① 遺言書保管所が保管していない自筆証書遺言等の有無を確認するためには、亡母の近くにいた弟に尋ねるほかありません(亡母が遺言書を託すほど親しくしていた方がいるなら問い合わせるべきでしょう)。
② 亡母が弟に不利な遺言を残していたとすれば、弟が、見て見ぬふりをしている可能性を捨てきれません。「相続人に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」は相続人の欠格事由に当たります。そこで、弟に対して、書面で「遺言書はなかったですか」と問い合わせることを勧めます。
③ 相談者のような立場だと、亡母が弟に有利な遺言を残していて、弟がその遺言に基づいて、相談者の知らないうちに相続手続きをしているのではないかと疑いがちです。
④ しかし、弟が自筆証書遺言等に基づく権利を行使するなら検認手続きを経る必要がありますし、検認の申立てがあれば、家庭裁判所はすべての相続人及び受遺者に検認期日の呼出状を送ります。
⑤ したがって、相続開始後半年間、遺言書保管所からの連絡も、家庭裁判所からの検認の呼出状も届いていないのなら、(弟に有利な)自筆証書遺言はない可能性が高いということができます。

※遺言があることを知ったうえでの遺産分割は可能ですが、遺産分割後に遺言の存在が明らかになれば、その遺言が優先しますので、遺言の存否は最優先で確認すべき課題であることに違いありません。

【終活・遺言・相続相談】相談例46 遺言執行者

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【終活・遺言・相続相談】相談例46 遺言執行者についての記事です。

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【相談内容】
相談者(76歳男性)から、「遺言書を書くつもりだが、長男(38歳)は、遺言執行者は費用がかかるだけなので、不要だと言っている。それでも遺言執行者を置く意味があるのだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
遺言者は、遺言執行の費用(遺言執行者報酬)について、あまり気にしません。自分の死後のことだからです。しかし、遺言執行者報酬によって取得財産が減る推定相続人は、「本当に遺言執行者が必要なのか」と気にされることがままあります。遺言執行者の必要性について説明する必要があります。

【1】遺言執行者

① 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
② また、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げるべき行為をすることはできず、これに反した相続人の行為は無効です。この無効は善意の第三者には対抗できません。
③ また、遺言による子の認知や相続人の廃除については、遺言執行者の執行行為が必要不可欠です。
④ これに対して、相続分の指定や遺産分割の禁止では、遺言の執行行為が存在しないため、遺言執行者は不要です。

【2】遺言執行者の必要性

遺言で遺言執行者を指定するメリット(必要性)については、以下のように整理出来ます。

【2-1】遺贈がある場合

① 遺言が遺贈を含む場合、遺贈義務者となる共同相続人全員が手続きに協力してくれるなら遺言執行者がいなくても遺贈は実現できます。
② しかし、共同相続人の一人でも協力してくれなければ、遺贈は実現できません。共同相続人が遺贈に反感を持つこともあるでしょうし、全員の協力を得るには手間もかかります。
③ そこで、遺言執行者を指定しておけば、共同相続人の意向に関係なく、遺言執行者による遺贈の履行を期待できます。なお、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとされました(平成30年改正、民法1012条2項)。

【2-2】特定財産承継遺言がある場合

① 遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人の相続人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)の場合、相続開始と同時にその相続人にその財産の権利が移転しますから、その相続人は単独で名義変更等の手続をすることができます。
② しかし、平成30年の相続法改正で、相続による権利の承継は、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ法定相続分を超える部分の取得を第三者に対抗できないとされましたので、その代わりに、遺言執行者が対抗要件を備える行為を当然に行えることになりました。
③ そして、特定財産承継遺言によって財産を取得した相続人が対抗要件の具備を放置する可能性もありますので、遺言執行者を指定して、その遺言を確実に執行させるべきです。

【2-3】清算型遺言がある場合

① 遺言者が、遺産分割方法の指定として、「遺産たる不動産Aを売却して、その代金を相続人甲と相続人乙が2分の1ずつ取得する」といった条項を含む遺言をした場合(清算型遺言)、これを実現するためには、共同相続人全員の協力を得て不動産を売却しなければなりません(売却する対象が、株式や投資信託等の場合も同じです)。
② 遺贈と同じく、共同相続人全員が快く協力してくれる保証はありません(売却代金の配分に不満を持つ相続人がいる場合はなおさらです)。
③ そこで、遺言者は、遺言で遺言執行者を指定し、不動産Aの売却と代金分配の権限を与えておくことによって、清算型遺言の実行を確実なものにすることができます。

【2-4】預貯金の処分がある場合

① 遺言者が「○○銀行の預金は解約して相続人甲及び乙に半分ずつ相続させる」という内容を含む遺言を残した場合も、清算型遺言と同じく、遺言執行者を指定する意味があります。
② 次に、遺言者が「○○銀行の預金は相続人甲に相続させる」と遺言した場合は、特定財産承継遺言ですから、相続人甲が単独で預金の名義変更又は解約払戻しができるはずです。
③ しかし、金融機関は、自筆証書遺言の検認調書や検認済証明書又は公正証書遺言を確認できても、それらの遺言より後に作成された(優先することになる)遺言が存在しないことまでは確認できません。
④ そこで、金融機関は、その遺言に頼ることなく、相続人甲に対して、その預金の処分に関する法定相続人全員の同意を明らかにする書面(相続人代表者指定届などと呼ばれ、法定相続人全員の自署と実印での捺印と印鑑証明書の添付が必要になる)を徴求し、そのような場合には、権利者(甲)以外の相続人の協力が必要になる可能性があります。
⑤ これに対して、平成30年改正の民法では、遺言執行者は「その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる」と明文化されましたので、少なくとも、遺言執行者から払戻し等の請求を受けた金融機関は、これを拒むことができなくなりました。
⑥ したがって、(金融機関の対応によりますが)預貯金の解約等に関しても、遺言執行者を指定する意味があります。

【2-5】遺言で遺言執行者を指定しなかった場合

① なお、遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができますが、そのために相続手続きがストップし、その間に、共同相続人が遺産を処分するといったリスクもあります。
② したがって、遺言で、確実に就任を承諾してくれる人を遺言執行者に指名するべきでしょう。

【3】遺言執行者の適格性

① 相談例のように、長男が遺言執行者の報酬を気にしているのなら、その長男を遺言執行者に指名することも考えられます。
② ただし、遺言執行者は、相当期間を定めた就任承諾の催告を受けて確答なければ承諾とみなされ、就任後遅滞なく相続財産目録を作成して相続人に交付し、遺言内容に疑問ある場合は遺言者の意思を合理的に解釈して遺言執行しなければならず、遺言執行者が任務を怠ったときその他正当理由がある場合には解任請求されることもありますから、財産管理等の経験のない相続人には荷が重いでしょう。
③ また他の相続人は、特定の相続人が遺言執行者になることを不快に思うかもしれません。これに対して、第三者の専門家を遺言執行者に指名すれば、事実上、共同相続人や受遺者の緩衝材としての役割を期待できます。ベテランの士業であれば、遺言執行手続きに精通している上、相続人や受遺者の相談や不満にも適宜対応できるので、円滑な遺言執行に適しています。

【4】遺言執行者の報酬

【4-1】遺言執行の費用

① 「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする」とされ(民法1021条)、遺言執行者の報酬、検認手続や相続財産目録作成の費用、相続財産の管理や遺言執行に必要な一切の行為をするための費用がこれに当たります。
② このうち、遺言執行者の報酬が最も高額になるでしょう。相談者の長男も、この点が問題だと思っているので説明が必要です。

【4-2】遺言施行者の報酬の額

① 遺言執行者を指名する場合、遺言執行者の報酬も遺言で定めることができます。そして、弁護士の場合は「遺言執行者報酬は、旧日弁連基準による」と定めるケースが多いように思われます。
② 金融機関は遺言時の契約で遺言執行者報酬について詳細に定めており、ある大手信託銀行の場合は、100万円の最低額を設け、1億円以下の部分につき、1.8%、1億超3億以下の部分につき0.9%などと、定めております。
③ 執行対象財産額が1,000万円の場合、弁護士が44万円で、銀行が100万円
3,000万円の場合、弁護士が84万円で、銀行が100万円、
1億円以下の場合、弁護士が154万円で、銀行が180万円
3億円の場合、弁護士が354万円で、銀行が360万円
④ 弊所の遺言執行者報酬は、最低額が30万円
3000万円の場合は60万円
1億円の場合は130万円
3億円の場合は330万円となっております。
⑤ なお、金融機関は、自社又はグループ会社の預金や投資信託は遺言信託の割引対象とし、遺言信託の手数料が安くなると勧誘しますが、もともと遺言信託は金融商品を売り込むツールだったのであり、投資信託等の取引で手数料を得るわけですので、よくよく考える必要があります。
⑥ また、遺言執行者報酬の算定基礎にも注意が必要です。遺言信託では、算定基礎となる財産の額を財産評価基本通達に基づく相続税評価額としつつ、小規模宅地の特例については、特例適用前の価額とするとか、消極財産は含まないといった定めを置くことがあります。
⑦ これらの規定で考えると、算定基礎の価額はかなり高くなりますし、かなりの額の相続債務があった場合でも、金融機関に支払う遺言執行者報酬は高額になってしまいます。

【4-3】遺言執行者費用の負担者

① 遺言では、誰が遺言執行の費用や遺言執行者の報酬を負担するのかも決めておくべきです。たとえば、「遺言執行者がすべての財産を売却換価し、そのうち3分の2を甲に、その3分の1を乙に相続させる」という内容の遺言だった場合、遺言執行者の報酬等を先に控除するのか、取得分に応じて負担するのか、折半なのかという疑問が生じかねません。
② したがって、「遺言執行者がすべての遺産を売却換価し、遺言執行者の報酬その他遺言執行の費用を支払った後、残額の3分の2を甲に、その3分の1を乙に相続させる」といった内容にしておけばよいと思います。もともと遺言執行費用は相続財産の負担ですし、こうしておけば無用のトラブルも回避できます。

【終活・遺言・相続相談】相談例45 遺言信託

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【相談内容】
相談者(66歳男性)から、「付き合いのある都市銀行から遺言信託とやらを勧められている。今一つ理解できないのだが、どのような点に気を付ければいいか」と相談された。

【検討すべき点】
「遺言信託」とは、遺言・相続に関するコンサルティング、遺言書の作成と保管、相続財産の調査や名義変更を内容とする遺言執行を組み合わせた信託銀行や銀行のサービス(商品)の名称です。信用のある金融機関に後事を託すという意味で安心感はありますが、法律上の信託ではありませんし、金融機関でなければできないサービスでもありません。

【1】遺言信託の背景

① 平成6年ごろから、信託銀行は、遺言・相続に関するコンサルティング、遺言書の作成と保管、相続財産の調査や遺言執行等の業務に参入し、これを「遺言信託」と称して大々的に宣伝し始めました。
② もともとは遺言を契機に富裕層高齢者にアプローチして信託商品を販売する狙いだったと言われていますが、今では都市銀行、地方銀行なども遺言信託と称して同様の商品を提供しています。
③ 委託者、受託者、受益者は遺言信託の要素ではなく、信託行為も存在しませんから、法律上の信託ではありません。
④ なお、金融機関では、遺言信託の内容のうち、遺言がない場合の相続関連業務を「遺産整理」と呼んでいます。

【2】遺言信託の内容

① 遺言信託業務の内容は以下の3つに大別されます。
② 第一に、金融機関は、特に、富裕層高齢者の生活や資産の状況を聴取して、相続紛争予防、相続税対策、事業承継、融資、資産活用等の遺言・相続に関するあらゆるコンサルティングをしています。
遺言信託を始めてすでに20年以上が経過していますから、特に大手の金融機関は、このコンサルティングについては膨大なノウハウを蓄積していると思われます。
③ 第二に、金融機関は遺言書作成についても多くの経験を持っています。また、遺言書の保管も遺言信託の内容であり、信託を取り扱う金融機関によって構成される一般社団法人信託協会の統計によれば、令和3年3月末時点で、159,719通の遺言を保管しているそうです。
もっとも、公正証書遺言は全国300か所の公証役場で検索できますし、自筆証書遺言も遺言書保管制度を利用すれば、紛失や偽造改ざんの恐れはありませんから、今日では、銀行の大金庫で遺言書を保管していただく必要はありません。
④ 第三に、金融機関が遺言書を作成するときには遺言執行者の指名を受け、相続開始後には遺言執行者として活動します。相続開始後の処理については、相続人は自分で法定相続人や遺産を調査できますし、不動産・預貯金・株式・投資信託等の名義変更や換価手続きについても同様です。

【3】遺言信託の問題点

① 第一に、平成6年3月、信託協会と日本弁護士連合会は、紛争性のある相続事案に関しては金融機関が遺言執行者にならない旨の合意が成立しました。
② したがって、金融機関は、遺言信託として遺言書を作成しても、相続開始後に一部相続人から遺言無効を主張されたり、不満があるなどの申告を受ければ、直ちに遺言執行者を辞退又は辞任します。
③ その場合、相続人や受遺者は改めて家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てることになりますから、紛争が予想される案件に遺言信託は不向きです。
④ 第二に、金融機関は、遺言信託と抱き合わせで、資産に応じた投資信託等を勧誘するはずですが、それが不要なら、はっきり断るべきでしょう。ちなみに、士業が遺言書を作成する場合なら、特に問題にならない限り、現有資産の詳細を伺わないこともあります。
⑤ 第三に、金融機関が作る遺言書の内容はそつのないものになりますが、逆に、金融機関にとって安全確実な内容にとどまる傾向が強いと感じます。たとえば、処理に困難を伴う海外資産や農地・山林などは遺言執行者の義務から外している例もありましたが、それでは相続人が困ることになりかねません。
⑥ 第四に、金融機関は合併を繰り返し、30年前に13行あった都市銀行は現在4行に減りました。有人店舗も半減し、支店窓口で相談するには、インターネットでの予約が必要とされる時代であり、相続開始後のサービスの点についての疑問が残ります。
⑦ また、戸籍の収集などは相続人任せですし、相続人間に多少の誤解や感情のもつれがあっても、一切介入しません。これが行政書士や弁護士であれば職務上請求で戸籍を収集できますし、遺言者の家族とも顔なじみであれば、多少のフォローやきめ細かい対応ができるはずです。

【終活・遺言・相続相談】相談例44 特定財産承継遺言と配偶者の居住権

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
パスポート申請、車庫証明申請も多く手掛けております。

【終活・遺言・相続相談】相談例44 特定財産承継遺言と配偶者居住権についての記事です。

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【相談内容】
相談者(82歳男性)から、「10年前に再婚した妻(74歳)と自宅で暮らしている。自宅は先祖代々受け継いできたので、やがては前妻との間にできた長男(50歳)に受け継がせたい。ただ、妻もほかに行く当てがない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相続人が後妻と前妻の子というのは、相続紛争のリスクの高い組み合わせです。この例では、先祖代々の自宅をどちらに承継させるのかの問題です。板挟みになっていますので、選択肢を提供して判断を促すことになります。

【1】特定財産承継遺言

① 自宅の所有権を長男に相続させると決断しているのなら、相続開始時にもめないよう「長男に自宅を相続させる」という内容の遺言書を作成するよう勧めます(特定財産承継遺言)。
② 「特定財産承継遺言」とは、遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言のことで、これまでの「相続させる遺言」に相当するものです。
③平成30年改正前は、相続させる遺言の効果として相続開始時にその財産の所有権が移転するとされていましたが、改正後の特定財産承継遺言では、法定相続分を超える部分については対抗問題となり、登記が必要です。
④ したがって、所有権移転登記を確実に行うために遺言執行者を指定するよう勧めます。
⑤ しかし、長男に自宅を相続させると、妻は自宅に住み続けることができなくなるかもしれません。そこで次のような方法を検討します。

【2】配偶者居住権

① 平成30年の相続法改正により、相続開始時に配偶者が被相続人の所有建物に居住していた場合、遺産分割・遺贈・審判によって終身又は一定期間、配偶者にその建物の無償での使用収益権を認めることができることになりました(配偶者居住権)。
② 相談者の死後も妻を自宅に住まわせる場合には、「長男に自宅を相続させる」という特定財産承継遺言とともに、遺言に「妻に対し、その終身の間、自宅の居住権を遺贈する」という条項を設け、配偶者居住権を設定するように勧めます。
③ なお、注意点は次の通りです。まず、配偶者居住権は「遺贈」による必要があり、「配偶者居住権を相続させる」と記載すると無効になる危険性があります。遺贈に限られたのは、配偶者が望まない場合があると考えられたからです。また、配偶者居住権の終期についても記載する必要があります。
④ 配偶者居住権が遺贈されると、自宅の所有権は長男に帰属するので長男が固定資産税等を負担しますが、配偶者居住権は無償で行使できます。ただし、配偶者居住権が設定された「土地・建物」の相続税は、配偶者居住権の存続期間などを勘案して長男と妻が分担することになります。
⑤ 以上と同じことは負担付遺贈でも可能ですが、負担付遺贈では受遺者の義務であるのに対して、配偶者居住権は配偶者の権利として構成される点に違いがあります。

【3】配偶者短期居住権

① 平成30年の相続法改正により、相続開始時に被相続人所有建物に無償で居住していた配偶者は、遺産分割により建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始時から6月の遅いほうまで無償で建物を使用できることになりました(配偶者短期居住権)。
② 遺言がない等の事情で遺産分割が必要になっても、妻は、相続開始から6月又は遺産分割成立までの長いほうの期間は無償で居住できることになり、前述のように、遺産分割や審判で配偶者居住権を設定できる可能性もあります。

【4】後継ぎ遺贈型受益者連続信託

① 一方、自宅を妻に相続させて妻が死亡すると、長男は(縁組をしていなければ)妻の相続人になりませんから、自宅は妻の相続人の手に渡ります。そこで、妻が死亡した場合に自動的に長男が自宅を取得する方法として、後継ぎ遺贈型受益者連続信託の利用が考えられます。
② その場合には、たとえば、相談者を委託者兼受益者、長男を受託者として信託契約を行い、相談者が死亡した場合には受益者を妻に変更し、次いで妻が亡くなった場合は、信託を終了させ、帰属権利者としての長男に自宅が渡るように設定します。
③ 配偶者居住権は相続開始時に配偶者が被相続人の所有建物に居住していた場合に限られます。そうすると、相談者が、自分の死後は遺産となる賃貸アパートの収益を配偶者に与えたいが、配偶者の死亡後はそれを長男に取得させたいと考えた場合には使えません。したがって、後継ぎ遺贈型受益者連続信託はこのような場合にも利用される可能性があります。