【終活・遺言・相続相談】相談例30 名義預金

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例30 名義預金についての記事です。

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【相談内容】
相談者(77歳女性)から、「これまで夫(85歳)の給与や退職金などを私名義の預金口座に入れて貯めてきた。その一部は長女(48歳)とその子ども(孫17歳)の名義の預金にしているが、次女(44歳)には知らせていない。夫が亡くなった場合何か問題になるだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
配偶者や親族の名を借りた名義預金は多用されていますが、相続税対策としては効果がありません。税務調査が入るような場合には、被相続人からの生前贈与を主張してもほぼ認められず、課税対象の遺産であることを認めて修正申告することになるでしょう。また、名義預金は、遺産分割においても遺産性をめぐって紛争の種になります。

【1】名義預金

① 「名義預金」とは、実質的な所有者と名義上の所有者が異なる預貯金のことです。相続税回避の手段として、あるいは生前贈与の準備として、よく使われます。財産評価基本通達では名義預金の評価方法は決まっていませんが、税務署にとっては最重点の調査対象です。

【2】税務調査

① 不動産を生前贈与した場合、法務局は税務署に対して贈与を原因とする所有権移転登記があった旨を連絡し、税務署は、贈与税の申告期限(贈与の翌年3/15)までに贈与税申告がなければ、所有権移転登記を受けた受贈者に対して贈与税の申告を忘れていないかを問合せます。
② これに対して、預貯金を相続人等に移動した場合には、金融機関から税務署に対してその旨が報告されるわけではありません。したがって、税務署から直ちに贈与税申告に関する問い合わせがあるわけではありません。
③ しかし、税務署がこれと目星をつけていた案件で相続が開始し、相続税申告に不審な点があった場合には、過去に遡って親族の預貯金を含めて取引履歴をチェックし、無申告の贈与あるいは遺産の可能性がある(名義預金)と判断した場合には、税務調査を行います。
④ そうして、税務署が調査の目的で相続人を来訪した時点では、親族名義を含めて預貯金の履歴は全て明らかになっているのです。

【3】配偶者名義の名義預金

【3-1】遺産性

① 夫の所得は夫婦共有財産を構成することが多いでしょうが、相談例のように、妻が自分名義の預金として保管しているケースはまま見受けられます(もちろん逆の場合もあります)。
② 妻としては、自分が財産を握っておきたい、夫の相続が発生しても子に権利を主張されたくない、相続税も減らしたいという思惑もあるのかもしれません。
③ しかし、妻が専業主婦で数十年間さしたる所得がなく、妻名義の預金が親の相続等によって得た固有資産というわけでもなく、夫から渡された給料等を貯めていたという以外に合理的な説明がつかなければ、配偶者名義の預金の全部又は一部は、亡夫の名義預金とみなされる可能性が高くなります。

【3-2】配偶者税額軽減との関係

① 配偶者名義の預金が遺産だと認められても、配偶者が配偶者税額軽減の適用を受ければ、1億6千万円までは、非課税になりますから、税務署も無駄な調査はしないとも考えられます。
② しかし、税務署の立場からすれば、たとえば申告された亡夫の遺産は1億円だが、妻名義の預金2億円も名義預金(遺産)だとすれば、妻は2億円以上の遺産を取得することになるので、配偶者税額軽減の上限である1億6千万円を軽く超え、これに応じた相続税を課税できます。
③ さらに、配偶者以外の相続人も相続するなら、課税対象となる遺産全体の増加により、それら相続人が負担する相続税額も増額できます。

【3-3】配偶者名義の名義預金の危険性

① 夫の相続が開始し、相談者が自分名義の預金は夫の遺産ではないものとして、残りの遺産について子らと遺産分割し、相続税を申告したとしましょう。
② 2年後に税務調査が入って相談者名義の預金は遺産だと指摘された場合、修正申告が必要になります。これに対して、名義預金は自分のものだと主張しても原資の立証が問題になりますし、仮に夫から贈与を受けたと主張すれば贈与税を課税されることになります。
③ そして、修正申告だけですむならばよいのですが、過少申告加算税10%や重加算税35%を課税されるおそれがあるほか、妻の隠蔽仮装行為(相続税法19条の2第6項)が認定されれば、修正申告においては、配偶者税額軽減の適用が認められません(同法19条の2第5項)。
④ したがって、相談者に対しては、夫の相続が開始したときには、少なくとも、原資の説明がつかない相談者名義の預金は亡夫の遺産として相続税を申告するべきであると説明します。
⑤ なお、相談者が夫よりも先に死亡した場合には、名義預金がそのまま相談者の遺産とみなされる可能性が高く、全体の相続税額が増えてしまうことになりかねません。このように配偶者名義の名義預金は大きなリスクがあり、お勧めできません。

【4】親族名義の名義預金

① 親族名義の名義預金も配偶者名義預金のそれと変わりなく、税務署からは相続税の潜脱目的ではないかと疑われます。孫名義の預金は、子への相続、孫への相続の二代飛ばし効果がありますから、より厳しく対応されます。
② 配偶者名義の預金は、実際に配偶者が管理しているでしょうが、世帯を別にする長女や孫の名義預金では、通帳やカードの保管状況が問題になります。さらに、贈与の主張が通っても、それが相続開始前3年以内の贈与であれば、相続税の課税相続是財産ですし、3年より前で7年以内の贈与であれば、贈与税と無申告加算税を課されることになります。
③ そもそも、相続税より贈与税の方が税率は圧倒的に高く、少なくとも税務署に対して、名義預金性を否認して被相続人からの贈与を主張することに意味はありません。

【5】贈与の時効

① 上記の説明に対して、相談者から「贈与は10年以上も前のことですから、贈与税は時効ですよね」と言われることがあります。
② 贈与税の時効は6年(故意に申告しなかった場合7年)ですから、贈与から10年経過すれば時効が完成していると思いがちです。
③ しかし、贈与行為が認められるには贈与契約書などの資料が必要ですし、そもそも税務署は7年以前の金銭移動については、名義預金か貸付金だとみなして贈与行為そのものを認めません。それが意図的な脱税行為とされれば、重加算税を課税されるリスクもあります。
④ なお、贈与税の時効の起算点は申告期限の翌日からで、令和3年1月1日に行なった贈与の申告期限は令和4年3月15日となるので、令和4年3月16日から時効が進行します。原則的な事項の完成は令和10年3月15日となり、贈与行為そのものから6年以上たてば時効が完成するわけではありません。
⑤ よって、贈与税の時効を期待することは現実的ではなく、相続税を節税したいならば、暦年贈与等の方法を利用していただくしかないと思われます。税務に関するご相談になりますので、具体的な詳しい説明は税理士に確認する必要があります。

【6】名義預金と遺産分割

① 相続人全員が名義預金の遺産性を認めるなら遺産分割の対象ですが、名義人(相談者や長女ら)が被相続人から贈与で取得したので固有資産であるなどと主張し、他の相続人(次女)がそれを否認すれば、遺産の範囲に争いが生じます。
② この場合には、遺産分割の前提問題として地方裁判所での遺産確認等の訴訟を先行させることになりますが、確実に相続紛争の長期化を招きます。
③ したがって、相談者に対しては、夫が亡くなった場合には、配偶者(相談者)名義の預金の一部は亡夫の遺産と認め、長女や孫名義の預金についても名義預金として遺産と認めるのか、改めて夫から長女らへの贈与として扱うのかを決め、その上で遺産分割をして相続税を申告するように説明します。
④ なお、遺言書を書く場合には、こうした混乱を避けるために、名義預金も遺産として処分するように勧めます。

【終活・遺言・相続相談】相談例29 生前贈与

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【相談内容】
相談者(78歳女性)から、「同居して世話になっている長女(53歳)とその夫(55歳)に各1,000万円、その娘たち2人(25歳、23歳)に各300万円を贈与しておきたい。次女(52歳)には内緒にしておきたい。気を付けておくことはあるか」と相談された。

【検討すべき点】
高齢の親は、様々な動機で家族に財産を贈与します。生前贈与には、それが贈与税又は相続税の対象となるという税務に関する問題と、遺産分割の際に特別受益として影響しないか、遺留分侵害額請求権の対象とならないか、又は同請求権の減額要素にならないかといった相続に関する問題があります。

【1】贈与税

① 相談例の場合で暦年贈与の適用があるとすれば、長女の夫に対する1,000万円の贈与に対しては、(1000万円-110万円)×0.4-125万円=231万円の贈与税がかかります(直系尊属からの贈与とそうでない贈与では税率が変わります)。
② 孫2人に対する各300万円の贈与には、それぞれ、(300万円-110万円)×0.15-10万円=18万5千円の贈与税が課税されます。合計2,600万円の贈与につき、受贈者側に合計445万円の贈与税が課税されます。
③ そこで、相談者がこの金額の贈与税がかかることを知って贈与するのかを確認します。時折、「必ず贈与税がかかるのでしょうか。税務署にばれるのでしょうか」と尋ねられることがありますが、税務署の調査能力を侮ってはいけません。所定の贈与税を納付すべきです。
④ 高い贈与税率を避けるためには、暦年贈与を繰り返すか、相続時精算課税制度の利用を検討するように勧めます。なお、贈与から3年以内に贈与者が亡くなって相続が開始した場合には、贈与税ではなく相続税が課税され、すでに贈与税を支払っていれば、差額の還付が受けられます。

【2】特別受益

① 相談者の相続が開始した場合、長女は共同相続人ですから、長女に対する1,000万円の生前贈与が特別受益に当たる可能性が高いことを指摘します。これに対して、長女の夫や娘たちは相談者の相続人ではないので、原則として特別受益の問題は生じません。
② 長女への生前贈与が特別受益となった場合の効果として、1)その贈与が何年前のものであっても相続財産に持戻されること、2)その相続財産をもとに各相続人の具体的相続分が計算され、長女は1,000万円の先払いを受けたとみなされること、3)ただし、特別受益の遺産分割の具体的相続分が0円以下になっても、すでにもらった財産の返還を要しないことを説明します。
③ 相談者は世話になっていることの感謝として、あるいは今後も世話になることを期待して長女に生前贈与するのでしょうから、遺産の前渡しとしての性格はないと思われます。とすれば、黙示的な持戻し免除の意思表示があったとも考えられますが、無用な紛争を避けるため、相談者には持戻し免除の趣旨を遺言書など書面で残すように勧めます。
④ 生前贈与の対象が不動産だった場合、特別受益の額は、相続開始時を基準として計算されます。ただし、現預金については、最近30年間、物価水準はほぼ一定していますので価額の修正は不要でしょう。

【3】遺留分侵害額請求権

① 長女も次女も遺留分権利者ですから、相談者の相続において次女が遺留分を侵害された場合には、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができ、生前贈与は遺留分の算定基礎に加えられることがあります。特に問題となるのは、特別受益と遺留分侵害額請求権の関係です。
② なお、長女の夫や孫に対する贈与は特別受益に当たりませんが、相続開始から1年前までの贈与と、それ以前の贈与であっても遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与については、遺留分の算定基礎となり、遺留分侵害額請求権を行使される可能性があり、相談者へ説明をします。

【4】生前贈与の告知

① さて、相談者の「次女には内緒にしておきたい」という発言は「次女には財産を与えたくない」と聞こえますが、実は次女にも「長女には内緒だよ」と言って生前贈与をしているかもしれません(高齢者は秘密めいた言動で子らの気を引く傾向があります)。
② しかし、相続開始後に金融機関の取引履歴から多額の出金や送金が明らかになり、その手続きへの関与者、出金の取得者やその趣旨をめぐって紛争が長期化することがご承知のとおりです。
③ したがって、相談者に対しては、相続紛争の原因を少しでも減らしておくために、遺言書やその他の書面で、「長女一家には面倒を見てもらっているので、令和〇年〇月〇日に総額2,600万円を贈与した。ただし長女への贈与1,000万円について、持戻しは免除する」、「次女にも自宅購入費として平成○年〇月〇日に3,000万円を贈与したが、それも持戻しは免除する」などと残しておくように勧めます。

【終活・遺言・相続相談】相談例28 事業承継

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【相談内容】
中小企業を経営する相談者(76歳男性)から、「同業他社にいる長男(37歳)に会社を継がせたいが、良い返事が返ってこない。どうすればうまくいくだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
同業他社で就業しているのなら、長男も相談者の会社を継ぐ気がないわけではなさそうです。事業承継を円滑に実現したいなら、相談者が長男と腹を割って話し合い、会社の財務内容を開示し、長男に株式と権限を委譲し、連帯保証を引き継がせない方法を検討すべきでしょう。

【1】親族内承継

① 今後数年のうちに中小企業経営者の半分以上が70歳を超え、そのうち半数は後継者が決まらず、利益が出ていても廃業する意向だと言われています。事業承継のためには、親族か従業員から後継者を見つけるか、M&Aによるしかありませんが、中小企業では我が子に事業承継させる親族内承継が一般的です。
② 親族内承継のメリットは、後継者が経営内容を熟知していること、子が家業を継ぐことについて周囲の理解を得やすいこと、代表者の資産を相続によって承継できることであり、デメリットとしては、子に事業経営の能力や熱意が足りないこと、代表者の相続紛争のリスクがあること、後継者が個人保証を求められることなどが挙げられます。

【2】代表者と後継者との関係

① 長男が同業他社に就業しているにもかかわらず、実家の事業承継を逡巡する理由を考えてみるべきでしょう。
② 相談者としては、長男を同業他社に武者修行に出したのでしょうが、実際に長男が外から自社を眺めてみると、旧態依然とした経営体制やよくない評判が目についたのかもしれません。そして、現在の会社の仕事にやりがいを見出し、まだ親の跡目を継ぐ気にはなれない可能性があります。
③ 長男は自社の業績や将来性に疑問を持っている可能性があります。自社の問題点が明確であれば、盛り返そうという気持ちにもなれますが、現代表者である相談者が長男に対して情報を開示していなければ、その判断もできません。
④ 個人保証が必要ならばなおさらです。したがって、相談者が長男に財務諸表を渡し、自社の業績を包み隠さず説明しているのかが気になるところです。
⑤ 相談者と長男との親子関係が長男に事業承継を逡巡させる原因になっていることも多いでしょう。つまり、自社に戻っても父親が権勢をふるい、権限移譲も進まず、古参の社員たちも父の言いなりで、しかも経営の先行きも不安だといった事情があるなら、今の生活や立場を捨ててまで事業承継をしようとは思いません。
⑥ 実際、社員たちの面前で、創業者の社長が「おまえは使い物にならん。社長には早すぎる」と後継者の息子を痛罵したケースもあります(それ以外に、長男が社内に在籍している親族や配偶者に遠慮している可能性もあります)。
⑦ したがって、相談者としては、先ず長男の言い分に耳を傾け行く末を確認できたら潔く身を引くこととし、その方針を内外に宣言することが必要と思われます。また、相談者が長男に対して老化による体の不調を訴え、「社員を守るためにおまえが必要だ」という態度を示せば、長男の態度が変わるかもしれません。

【3】自社株譲渡の方法

① 創業者社長は、後継者に対しても、なかなか自社株を譲渡しない傾向があります(死ぬまで自分の会社です。)。しかし、いずれは自社株の譲渡(又は生前贈与)が必要ですし、後継者の長男にしても自社株を持ってはじめて自覚が芽生えます。
② 自社株譲渡の方法としては、売買、贈与、相続の3種類がありますので、それらを比較検討することになります。
③ 売買では代金原資が必要ですから、長男に役員報酬を与えて自社株の代金を支払わせることを検討します。次に、贈与は贈与税が課税されますので、自社株の評価が下がるときを狙って贈与し、相続時精算課税制度の適用を受けておきます。また、相続(遺言)によって自社株を取得させる場合は、相続開始時の自社株の評価額が不明であること、相続人間の紛争を招きかねないことに注意が必要です。
④ 自社株の信託を利用した事業承継も研究されていますが、内容が複雑になるため、まだ一般的ではありません。

【4】遺留分侵害

① 後継者への自社株の贈与は、ほかに十分な財産がないと遺留分侵害の問題を生じることがあります。特に、平成30年改正前の旧民法下で、遺留分減殺請求権が行使された場合には、自社株は後継者と遺留分権利者の準共有となり、事業承継の障害になるケースがありました。
② そこで、平成20年に施行された中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、経営承継円滑化法という)では、推定相続人ら全員の合意により、株式の価格を遺留分の基礎財産から除外し、又は固定できるとされました。もっとも、その要件は厳しく、同年の統計でも、除外合意や固定合意のために必要とされる家庭裁判所の許可は年間18件しかありませんでした。
③ しかし、平成30年の相続法改正により、遺留分権利者の権利は遺留分侵害額請求という名の金銭債権に変わりましたので、遺言や生前贈与によって自社株を処分している場合には、準共有の問題はなくなりました。

【5】個人保証の承継問題

① 親族内承継が進まない理由の一つは保証債務の承継だといわれており、経済産業省や中小企業庁もその対策に腐心してきました。
② まず、中小企業信用保険法の運用として、令和2年4月1日から事業承継特別保証制度が開始されました。これは、例えば、所定の条件を満たせば、3年以内に事業承継を予定する法人に対して、事業承継までに必要な事業資金や借換資金を後継者の個人保証なしで実行する(信用保証協会が信用保証する)というものです。
③ 前述の経営承継円滑化法の改正として、令和2年10月1日から経営承継借換関連保証制度が利用できることになりました。これも、事業承継特別保証制度とほぼ同様の条件を満たせば、3年以内に事業承継を予定する法人に対して、借換資金の融資を後継者の個人保証なしで実行するというものです。
④ これらの制度により、物的担保があればそれぞれ2億8,000万円まで、担保がなければそれぞれ8,000万円まで保証人なしの借換を受けられる可能性がありますが、いずれにせよ、相当程度に健全な経営状態でなければ適用されないでしょう。また、両制度は少しずつ適用の要件が異なりますので、まずは、商工会議所の事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談することを勧めます。

【終活・遺言・相続相談】相談例27 土地活用

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【相談内容】
相談者(74歳男性)から、「8年前に亡き父から相続した郊外の土地について、馴染みの税理士から、近くに大学もあることだし、相続税対策として学生向けマンションを建てて有効活用してはどうか。必要なら信用金庫を紹介すると勧められた。土地を遊ばしていても固定資産税がかかるだけなので、気持ちが動いているのだが、どうだろうか。」と相談された。

【検討すべき点】
遊休土地を持つ高齢者に対し、相続税対策として、土地活用がよく勧められています。勧誘する側は、メリットを強調する説明に終始することが多いようですが、どのような相続税対策にもメリットと、デメリットが必ずあります。考えられるリスクを指摘することになります。

【1】土地活用の提案

① 主として金融機関、不動産開発・管理業者(サブリース業者)、建設業者、税理士などは、いわゆる土地持ちの富裕層の高齢者に対して土地活用を勧めます。金融機関には融資実績が、不動産開発業者にはマンション販売や賃貸管理業務が、建設業者には工事請負契約獲得、税理士には相続対策コンサルタント料の獲得といった思惑があることは言うまでもありません。
② こうした勧誘者は、遺産のうち土地の占める価格割合が大きいことを指摘し、土地の課税価格を下げることがもっとも効果的な相続税対策であると説明し、利用されていない更地に賃貸用マンションやアパートを建てることなどを提案します。

【2】節税効果の検証

① どの程度の節税になるのか、簡略化した例で確認してみます。
相談者が所有する郊外の土地は、固定資産税評価額2億円、路線価2億4千万円、実勢価格3億円の更地だったとします。このまま相談者の相続が開始すれば、この土地は、相続税の課税では路線価に従って2億4千万円と評価されます。
② つぎに、相談者が信用金庫から建築資金3億円を借入れ、同土地上に同額で賃貸マンションを建築して入居者を募り、その5年後に死亡したとします(土地の評価は変わらないものとして考えます)。
③ その場合の相続税の計算では、1)土地は更地での評価額2億4千万円から貸家入居者の借地権割合2割を控除して1億9,200万円になり、2)建築した建物の評価額は3億円から年々評価が逓減して、5年後には2億4千万円に下がったとすると、さらに借家権割合5割を控除できるので、1億2千万円となります。
④ そうすると、課税される資産としては土地1億9,200万円と建物1億2千万円の合計3億1,200万円になりますが、他方で信用金庫からの借入債務が2億6千万円残っていれば、課税相続財産を5,200万円に圧縮できるという計算です。
⑤ その他、賃料は現金収入なので(固定資産税などの負担を差し引いても)相続税の原資を貯めておくことができるとか、その管理もサブリースで引き受けるから安心であるとか、敷金返還債務も債務計上できるなどと説明されます。

【3】問題点

【3ー1】空き室リスク
① 土地活用の前提は、賃借人によって貸室が満たされていることです。しかし、街中かつ駅近の立地ならともかく、そうでないなら、計画通りに学生マンションが満室になるかどうか、それがいつまで続くかは問題です。学生マンションの需要があるなら、やがて周辺にも学生マンションが林立し、古いマンションの賃料は値下げをせざるを得なくなります。
② また、昨今の少子化により大学は都心のサテライトキャンパスへの移転やダウンサイジングを進めていますので、学生需要がいつまで続くかもわかりません。したがって、状況の変化に耐え得る代替的需要があるかどうかも検討しておかなくてはなりません。

【3-2】サブリース

① 大手の不動産管理業者(サブリース業者)との間で建物全体の賃貸借契約(マスターリース契約。通常は管理業務委託契約も併せて締結します)を締結し、サブリース業者が個々の賃借人に転貸(サブリース契約)する方法をとれば、当面、空き室率は考える必要がなく、維持管理の煩わしい作業も不要です。
② しかし、サブリースの手数料で利益率は下がりますし、サブリース業者から一方的に賃料を減額されたり解除されたりするリスクがある一方で、賃貸人からはマスターリース契約を容易に解除することができないと指摘されてきました。
③ さらに、建物を売却処分する際に賃借人に退去を求めることはできず、売買価格が低くなる傾向もあるようです。
④ このようにサブリース業者とオーナーの間で問題が生じることが多いため、令和2年12月15日、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)の一部が施行されました。同法3章はサブリースに関するもので、誇大広告等の禁止(同法28条)や不当な勧誘等の禁止(同法29条)を定め、国土交通省により、具体的な指針を示す「サブリース事業に係る適正な業務ためのガイドライン」も策定しました。
⑤ したがって、マスターリース(サブリース)契約締結時には、これらの契約条項をチェックする必要があります。

【3ー3】管理費用の負担

① サブリース契約に問題があるため、最近、ちいさな物件では不動産仲介業者だけ利用し、管理は自分でするという賃貸人もおられます(不動産管理会社を作ることもあります)。
② しかし、管理人を置けば人件費がかかりますし、管理人を置かなければ借家人の細かい苦情にも対応しなければなりません。建物劣化に伴う修繕費の負担やリフォームにも頭を悩ませることになります。
③ なお、サブリース業者は提携している下請け業者を安く使って賃貸物件の管理で利益を出しますが、個人の賃貸人が同じ手法をとることはできず、かえって管理費用が高くつくようです。

【3ー4】相続対策

① 土地活用のいちばんの問題は相続開始後の処理です。たとえば、相談者に3人の子がいて、賃貸マンションが遺産のかなりの部分を占めているとしましょう。
② 公平さを求めるなら、マンションを売却して代金を3等分すればいいのでしょうが(換価分割)、マンションの収益に依存していた相続人がいれば反対しそうです。3人の共有にしても(共有分割)、権利関係が錯綜します。
③ 区分所有権に分けて分配しても(現物分割)、共用部分やエレベータの保守点検、修繕、清掃やゴミ出しなど建物1棟全体の管理の問題で日常的にもめることになりかねません。
④ そうすると、このマンションは借入金債務とともに相続人の1人に相続させ、残りの相続人には代償金を与える方法(代償分割)がベストのように思えますが、代償金の金額やその履行、借入金債務の承継に関する処理(免責的債務引受に関する債権者の同意)などでもめます。
⑤ 遺言で、債務とともに誰か1人に相続させることも考えられますが、遺留分を侵害していれば遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。
⑥ なお、マンションの収益が悪化していた場合には債務承継を嫌がってマンションの押し付け合いになるかもしれません。さらに、相談者が不動産管理会社を設立していれば、その株式の評価、相続開始後の賃料、維持管理費や固定資産税等の清算など多くの問題が予想されます。
⑦ したがって、土地活用(賃貸物件の建築)は、相続開始後に生じる問題に対して、どのように対応するかを事前に検討しておかなければなりません。

【4】相談者に対するアドバイス

相談者に対しては、土地活用による相続税対策も不動産投資である以上、相続開始前にもリスクがあり、相続開始後にもその処理をめぐって遺産分割が紛糾するリスクがあることを説明します。そして、相談者に不安があるなら、士業に依頼して、スポットでのアドバイス契約や顧問契約を締結して、サポートしてもらうことをお勧めします。なお、代理交渉も依頼したい場合には、法律の定めに従い、弁護士に依頼することが必要になってきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例26 養子縁組

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例26 養子縁組についての記事です。

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【相談内容】
相談者(57歳男性)から、「先日の検査結果で、入院中の父(88歳)がステージⅢの肺がんだと分かった。父の相続人は自分と次男(54歳)だけだが、相続税対策として私の息子(22歳)を父の養子にしておきたい」と相談された。

【検討すべき点】
養子縁組には一定の節税効果はありますが、法定相続分の変更を意味しますから、これによって影響を受ける他の推定相続人の反発が予想されます。養親の相続開始後には養子縁組無効確認訴訟に発展することもありますので、養子縁組は慎重に行うべきです。

【1】養子縁組の節税効果

① 相談例で父と相談者の子が養子縁組すれば、父の相続開始後に法定相続人が1人増え、基礎控除額が600万円増えます。
② 具体的には、父の遺産が1億円だった場合、相続人が2人なら基礎控除額は4,200万円で課税相続財産は5,800万円、相続税総額は770万円になりますが、養子が1人増えれば、基礎控除額は4,800万円で課税相続財産は5,200万円、相続税総額は630万円となり、先程との差額140万円が節税効果と見込まれます。

【2】縁組を契機とする紛争

① 法定相続分(と遺留分)が減ってしまう推定相続人にとって縁組は心外でしょう。特に、高齢の被相続人と孫との縁組(成年養子)は、被相続人の判断能力の減退に乗じて行なわれたと思われがちですし、縁組の事実をすぐに公表しなかったとか、相続開始後にはじめて養子縁組が判明したといった場合は、なおさら疑問を招きます。
② したがって、縁組無効確認訴訟(民法802条)を招きかねませんし、遺産分割調停では縁組の有効性が前提問題となって紛糾することもあります。

【3】縁組無効確認訴訟での争点

① 縁組無効確認訴訟でもっとも争点になりやすいのは縁組の実質的意思の存否です。もちろん養子縁組の動機としては、養親子関係を創設したいという目的の他に、相談例のような節税対策目的や、特定の推定相続人の法定相続分や遺留分を圧縮したいとか、円滑に事業承継させたいといった目的も考えられます。
② そうした事例に関して、縁組が単にほかの目的を達成するための便法として仮託されたものであり、真に養親子関係の創設を欲する効果意思がなかった場合には無効となるとする判例や、他の目的があっても当事者間に真実に養親子関係を成立させる意思がある場合には有効とする判例、さらに、相続税の節税のために養子縁組する場合であっても、直ちに「当事者間に縁組しようとする意思がないとき」に当たるとすることはできないとして判例があります。
③ したがって、養親子関係の創設以外の目的があっても、真に養親子関係を構築する意思(実体的意思)を否定できなければ縁組は有効となると考えられ、この点をめぐって、縁組時における当事者の言動、縁組後の養親子間の関係、相続開始後の養子の行動などが立証活動の焦点となりますので、これらを考えて縁組の是非を検討することになります。
④ なお、縁組時の高齢者の意思能力についても問題となり得ますが、縁組は身分行為に関するものなので、財産処分に関する遺言能力に比べれば、若干緩やかなもので足りると考えられます。

【4】縁組に関するその他の問題

① 配偶者のある者が縁組をするには、配偶者とともに縁組をする場合、又は配偶者がその意思を表示することができない場合を除き、養親になるにも養子になるにも、その配偶者の同意を得なければなりません(民法796条)。
② したがって、仮に父に妻がいればその同意も必要で、相談者の息子に妻がいれば、その同意も必要です。ただし、養子縁組という微妙な問題については、それぞれの配偶者の同意が得られない可能性もあります。
③ 次に、家業や家名を継ぐ目的で、早々に未成年の孫を祖父母の養子にすることもありますが、その養子が、両親に捨てられたとか、兄弟と差別されたとの気持ちを抱き、その不満が数十年後の祖父母や両親の相続で噴出することもあります。
④ また、養親としては遺産の受継者として選んでやったつもりでも、養子はそれほど感謝していないこともあります。結局、実子も不満、養子も不満という縁組だと意味がありませんので、縁組は、養親や実親の都合だけでなく、実子や養子となる者の気持ちに十分配慮して検討すべき事柄です。

【5】相談者へのアドバイス

① 相談者に対しては、後々養子縁組の有効性が問題になる可能性を指摘し、できれば事前に次男にも相談することを勧めます。また、それが叶わず、将来的に縁組無効を争われる可能性があるなら、父と相談者の息子を引き合わせて直接縁組意思を確認させ、その場で縁組届を作成し、それを写真やビデオに収めるなどして証拠化し、縁組成立後も相談者の息子には父の見舞いにいかせるなどして、真の養親子関係を形成するようにアドバイスします。

【終活・遺言・相続相談】相談例25 配偶者税額軽減と小規模宅地の特例

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【相談内容】
相談者(75歳女性)から、「夫(87歳)には自宅などの不動産はあるが現預金が少ない。だから、夫が亡くなって多額の相続税がかかることになると払いきれない。配偶者控除や小規模宅地の特例といった方法が使えるのか、教えてもらいたい」と相談された。

【検討すべき点】
配偶者税額軽減(配偶者控除)と小規模宅地の特例は、ともにたいへん効果的な相続税対策です。
両制度の共通点として、遺言又は相続税申告期限までの遺産分割成立が条件であること、相続税申告して初めて適用が受けられること、申告期限までに遺産分割が成立しない場合には未分割申告して、いったん特例の適用を受けない相続税を支払う必要があることが挙げられます。

【1】配偶者税額軽減

① 「配偶者税額軽減」とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈などにより実際に取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い方までは、配偶者に相続税はかからないという制度です。ただし、仮装又は隠蔽されていた財産は含まれません。
② 配偶者税額軽減は、遺言があるか、又は遺産分割協議が成立していて、申告期限内に相続税を申告することによって適用されます。
③ 10か月の申告期限内に遺産分割がない場合には、いったん法定相続分通りに相続したものと仮定して未分割の申告を行い、その後3年以内に遺産分割が成立すれば、この制度を利用することができます(修正申告と更正の請求が必要です)。
④ 配偶者税額軽減は相続税申告の際の事後的な方法ですが、遺言書を作成する際にも相続税の負担軽減にために検討しますから、相続税対策の一つといえます。
⑤ 高齢者夫婦の相続に関して言うと、一次相続では配偶者税額軽減を利用できますが、二次相続では(再婚していない限り)利用できません。したがって、一次相続では、「全ての遺産を配偶者に相続させる」といった遺言書を作成して配偶者税額軽減をフル活用したくなるものですが、一次相続で他方配偶者に資産を集中させると二次相続での紛争リスクが高まります。

【2】小規模宅地の特例

① 小規模宅地の特例は、事業又は居住の用に供されていた宅地のうち相続人等の生活基盤維持のため欠くことができないものにつき、通常の評価方法による価額を減額する(土地の評価額を最大8割下げることができる)制度です。
② 小規模宅地の特例の具体例としては、・特定住居用宅地等(被相続人等の居住用の用に供されていた宅地等で330㎡まで80%減)、・特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等(事業用の宅地等で400㎡まで80%減)、・貸付事業用宅地等(不動産貸付用の宅地等で200㎡まで50%減)などがあります。
③ 特定住居用宅地等の取得要件について、説明します。被相続人が住んでいた土地なら、配偶者がそれを取得した場合は無条件、居住していた親族なら相続税申告期限まで居住継続・保有継続の両要件を満たすことが条件で、同居していない親族でも、相続開始前3年以内に自己又は配偶者の所有家屋に住んだことのないこと等の条件を満たせば適用されます。
④ 次に被相続人と生計を一にする親族が居住していた場合は、・配偶者なら無条件、親族なら継続居住・保有継続要件を満たすことが必要です。
⑤ その他、要介護の親が介護施設に入っている場合でも、入所前の自宅で賃貸していなければ居住用財産になるなどの細かい条件設定があります。
⑥ これらの要件には例外等もありますので、必ず、税務署・税理士への照会や国税庁のホームページで確認していただく必要があります。
⑦ 小規模宅地の特例を受けるためには、配偶者税額軽減の場合と同じく、遺言か、相続税申告までの遺産分割によってその不動産の取得者を確定させ、かつ相続税申告を行う必要があります(適用の結果相続税額が0円の場合でも申告が必要です)。

【3】相談者への説明

① 相談者に対しては、配偶者税額軽減は利用できるものの、配偶者に遺産を集中させすぎると問題があることを説明し、小規模宅地の特例については、夫が亡くなった場合、誰が自宅等の土地を相続するかによって変わるので、税理士に相談するように勧めます。
② 配偶者税額軽減や小規模宅地の特例も、遺言か遺産分割の成立が条件なので、すんなりと遺産分割が成立しそうにないなら、認知症等が進む前に夫に遺言書を書いてもらうようアドバイスします。

【終活・遺言・相続相談】相談例24 暦年贈与

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【終活・遺言・相続相談】相談例24 暦年贈与についての記事です。

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【相談内容】
相談者(75歳男性)から、「暦年贈与として、これから10年間、長男(51歳)とその子(22歳、20歳)の計3人に対し、それぞれの預金口座に毎年110万円ずつを振り込んで合計3,300万円を贈与しようと思うが、問題があるか」と相談された。

【検討すべき点】
「暦年贈与」は、相続税対策としてもっともよく利用されています。しかし、暦年贈与が何を意味し、どのような場合に否認されるのか、否認されないために何をしておくべきかについては正確な知識が必要です。

【1】贈与税と暦年贈与

① 贈与税は、贈与によって財産が移転する機会に、その財産に対して課される租税で、相続税の補完税です。
② 贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額をもとに税額が計算され(暦年課税)、翌年の2月1日から3月15日までの申告が義務付けられています。
③ 贈与税の税率は、相続税の税率よりかなり高く設定されています。
④ 贈与税では、受贈者一人当たり年間110万円までの贈与は非課税(基礎控除)とされますので、この基礎控除を活用した贈与が「暦年贈与」と呼ばれております。基礎控除の範囲内の贈与には課税されませんので、申告義務はありません。
⑤ ある財産の移転が、客観的に贈与であることが明らかなら暦年贈与の基礎控除は自動的に適用されます。しかし、名義預金、貸付金あるいは預託金であって贈与の実体がない(実質的な財産の移転を伴っていない)とされ、贈与自体が否認される場合も少なくありません。
⑥ したがって、暦年贈与として認められる(基礎控除の適用を受ける)ためには、事実上、贈与者と受遺者の間の贈与契約書を作成し、贈与対象財産が現預金なら、贈与の実行として、実質的に受遺者が管理している預金口座に贈与金を振り込む必要があります。

【2】暦年贈与の問題点

① 相続開始前3年以内の贈与は全額が相続税の課税対象となり、暦年贈与は適用されません(贈与税としての納税した額は相続税額から控除されます)。
② したがって相談例のように、暦年贈与を利用して、毎年3人に110万円ずつを贈与し始め、仮に5年が経過して亡くなった場合には、5年分の合計1,650万円が非課税になるのではなく、4年前と5年前の贈与分660万円だけが非課税になります。
③ 次に、毎年贈与契約書を作成するのが面倒であると、最初の年に、3人の受遺者に対し、毎年110万円を10年間にわたって贈与する旨の贈与契約書を作成する人がいますが、これは、定期金贈与契約として、最初の年に、3人の受贈者に対し、それぞれ1,100万円の贈与があったものとみなされる可能性があります。
④ その場合、初年度に1,100万円から基礎控除の110万円を引いた990万円に対して207万円の贈与税が課され、3人合わせて621万円の贈与税が課税されます。それが嫌であれば、毎年贈与契約書を作成しなければなりません。
⑤ なお、基礎控除は受贈者を基準としますので、父から110万円、母から110万円を贈与された場合は基礎控除額を110万円超えていることになります。

【3】暦年贈与の工夫

① 暦年贈与による基礎控除を利用する場合には、贈与であることを疑われないために、毎年贈与契約書を作成し、受贈者名義の口座に現金を振り込むべきです。さらに言えば、毎年異なった額(それも非課税額を上回る金額)の贈与をして、実際に贈与税を申告して少額を納税する方法があります。
② 贈与金を振り込む先は、日頃から受贈者が公共料金やカード支払いなどに用いている生活口座がよいでしょう。贈与者としては、受贈者名義の別の口座に入金して、贈与の全体を把握したいところでしょうが、そうした行為は、「名義預金(遺産)」と税務署にみなされる可能性が高くなります。

【終活・遺言・相続相談】相談例23 相続税対策一般

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【相談内容】
相談者(55歳男性)から「父(84歳)が亡くなったときの相続税の話が聞きたくて、市役所の法律相談へ行ったが、税理士に聞いてくれの一点張りで役に立たなかった。どんな相続税対策があるのか教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
そもそも税務に関する相談は税理士法により、税理士のみがおこなえると定められています。そこで、行政書士や弁護士などが相談会などで出来る範囲が問題となりますが、相続税の計算方法や各種制度の一般的な内容(国税庁のホームページに記載されている説明程度)を解答することが限度であると考えられます。具体的な相続税額を計算することは、税理士法に抵触する危険があるので注意が必要です。
そこで計算方法の説明(表にしてわかりやすく説明することは問題ないと思われます)、各種相続税額の軽減制度の概要の説明を行うことになると思います。

【1】相談者に対する基本的な対応

① 相談者は往々にして全財産を開示せずに、特定のケースや節税方法についてのみ尋ねることが多くみられます。そして曖昧な知識のまま答えると「専門家(行政書士等)が言った」と利用されかねません。
② そのような場合、「行政書士は頻繁に変更される財産評価基本通達に精通しているわけではなく、税理士法の定めにより、一般的な説明を差し上げるのみで、最終的な責任は負えない」ことを事前説明して、「わかる範囲で説明します。最終的には必ず、税理士に確認するようにしてください」と念を押すことが必要です。

【2】相続税の計算と対応する節税方法

① 相続人の財産がどの程度あるのかを伺い、現時点で相続が発生した場合の相続税を計算してもらいます(行政書士はあくまで計算方式を示し、電卓などで計算するのは相談者にしてもらいます)。
② 相続税の計算方式は次の通りです。
A: 相続人それぞれの相続財産額を計算(みなし相続財産、債務、税金、葬儀費用を含める)し、その総額を計算する。
B: 基礎控除額を控除する。
C: 相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定して、各相続人の取得財産を計算する。
D: 相続人毎に相続税率を乗じて仮の相続税額を算出し、それを合計する(=相続税の総額)。
E: 遺言や遺産分割などにより実際に分けられた財産(具体的相続分)の割合に応じて、各相続人に相続税の負担額を割り付ける(=各人の相続税額)。
F: 個別の事情により税額の軽減又は控除を行う(配偶者控除、未成年者控除、税額加算など)。
③ 次に、このAからFの各段階の応じた節税方法は次の通りです。
A1: 相続財産中の不動産の評価を下げる=小規模宅地の特例・土地活用・タワマン節税
A2: 相続財産中の金融資産を減らす=評価が逓減する資産の購入(不動産、貴金属の購入など)・生前贈与(暦年贈与、おしどり贈与、教育資金贈与)
A3: 相続財産の膨張を抑制する=生命保険金・相続時精算課税制度
B1: 相続債務を増やす=建築資金の借入・土地活用・タワマン節税
B2: 基礎控除額を増やす=養子縁組
D1: 具体的相続分を減らす=養子縁組
F1: 税額軽減=配偶者税額軽減・未成年者控除

【3】節税対策の基本方針

① 一般に、節税方法として頻繁に利用されるのは、暦年贈与、小規模宅地の特例、配偶者税額軽減の適用、生命保険だと思います。
② このうち、小規模宅地の特例と配偶者税額軽減は、本来、相続開始後の処理(遺産分割の問題)ですから、相続税の申告を依頼する税理士に任せるのが基本ですが、遺言書作成や遺産分割協議でも、事前にその要件を確認しておく必要があります。
③ なお、小規模宅地の特例、配偶者税額軽減の適用を受けるためには、相続税がかからない場合でも、相続税の申告が義務ですので注意が必要です。
④ 10ヶ月以内に相続税の申告を行わなければなりませんが、申告ができない場合は、とりあえず未分割(法定相続分)で申告(相続税法55条)し、それから3年以内に遺産分割をすれば、更正の支給により、これらの制度を適用してもらえます。その後も、やむを得ない事情があれば適用の可能性があるので、慌てる必要はありません。
⑤ 未分割の申告をせず、あるいは、いったん遺産分割協議を成立させたのちで、小規模宅地の特例や配偶者控除を使うため、改めて遺産分割のやり直しをした場合には、贈与税や所得税が課税される可能性があるので、やり直しはきかないと考えて下さい。
⑥ それ以外の節税対策(暦年贈与・生命保険・養子縁組)は、相続人間の不平等を招くことが心配の種です。相続税対策と争族対策は別物ですが、円満な笑顔相続こそ最高の節税対策とも言えます。

【終活・遺言・相続相談】相談例22 老後の生活資金

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【相談内容】
相談者(67歳男性)から、「持ち家に一人で暮らしており、年金は月額16万円である。退職金で多少の蓄えがあったが、子への援助や投資の失敗ですっかり減ってしまった。長生きするほどお金が足りなくなると心配になる」と相談された。

【検討すべき点】
高齢者にとって、老後の生活資金が足りるかどうかは切実な問題ですが、その不安をあおるような終活ビジネスもあります。また、裕福な高齢者ばかりではなく、生活に不安を抱える方も少なくありません。

【1】老後2000万円問題

① 高齢者世帯の平均所得は308万円(月額約25万円)とされますが、その中央値は244万円(月額約20万円)です。ちなみに所得の内訳は、公的年金や恩給が65%、稼働所得は21%、その他の収入が14%です。
② これに対して、高齢者世帯の月額の支出は平均27万円とされ、平成29年の調査では高齢者の54.2%が生活が苦しいと回答しています。
③ 仮に月額所得が22万円で、支出が27万円とすると、毎月5万円が不足します。すると、たとえば定年後20年間では毎月5万円×12か月×20年=1200万円の補填が必要になり、定年後30年では1800万円の資金が必要になります。
④ そこで、金融庁金融審議会「市場ワーキング・グループ」は老後に備えるには、年金以外に、約2000万円必要になるという報告書を出しました。これが老後2000万円問題として、高齢者の間で老後資金に対する不安が広がっています。

【2】老後の生活設計

① 相談者がまだ40代や50代で、収入に余裕があるなら、資産の効率的な運用をファイナンシャルプランナーに相談する事を勧めます。
② しかし、相談者は67歳。自宅以外にさしたる資産がなく、収入を年金に頼らざるを得ない場合には選択肢が限られます。家計簿をつけ、無駄な支出を見直しながら、年金の範囲で暮らせるように節約してもらうしかありません。
③ 相談者の場合の平均余命は18年ですが、その間に不測の出費も考えられますから、現在残っている蓄えには手を付けないよう心掛けて頂きたいところです。

【3】高齢者雇用

① 年金以外にも稼働収入や不動産収入があれば、生活はぐっと楽になります。平成25年に改正された高年齢者(55歳以上の者のことを指す)等の雇用の安定等に関する法律で、定年の撤廃・延長・再雇用や高年齢者の雇用を確保する措置、シルバー人材センターの設置等が定められました。
② 令和3年4月1日に改正された同法では、70歳までの定年引上げや継続雇用制度の導入、定年制の撤廃などの努力義務が定められました。
③ しかし、実際に仕事がなければどうしようもありませんし、再雇用では賃金が下がり、高齢になればなるほど就業は困難になります。

【4】リバースモーゲージ(不動産担保型生活資金貸付制度)

① リバースモーゲージとは、自ら所有する自宅に抵当権を設定して生活資金の融資を受け、利息のみを支払いながら、死亡時の不動産処分で元本を一括返済するという制度です。
② 自宅はあるが、生活するための現金がないという高齢者のために有益とされ、社会福祉協議会等でも相談を受け付けています。
③ しかし、自宅がマンションの場合は適用外とか、推定相続人全員の承諾が必要とされるなど、厳しい条件がありますし、これを利用できたとしても、思いのほか長生きして自宅を失うとか、金利上昇に伴って利息が上がるというリスクがあると指摘されています。
④ 次にリースバックとは、セール&リースバックの略で、自宅を売却すると同時に新所有者から自宅を借り直し、賃料を支払いながら住み続けるという方法です。(定期借家契約になることが多いです。)この方法でも、自宅売却時にまとまった生活資金が得られますが、賃料支払いが滞れば、退去明渡しを求められますので、慎重に判断する必要があるでしょう。

【5】儲け話の落とし穴

① これだけ平均寿命が延びれば、高齢者も自分が何歳まで生きれるか見当がつきません。よって、多少の蓄財があったとしても、なお不安に感じておられます。
② その不安につけ込んで、利殖や儲け話を持ちかけ、虎の子の預貯金をだまし取るという事例が多発しています。「うまい儲け話が向こうから転がり込んでくる」ことはあり得ませんので、リスクを適切に判断し、できるだけ現有資産の範囲内で慎ましく生活するように勧めます。
③ また、それなりに資産があっても、高額な有料老人ホームに入居したり、墓地・霊園に多額の資金を投じたり、子や孫の求めに応じて散在していれば、同じことになります。

【6】生活保護

① 生活資金に窮した高齢者のセーフティネットは、生活保護です。生活保護を受けるための条件は、収入が最低生活費を下回っていること、活用できる資産(預貯金や不動産)がないこと、親族などから援助を受けられないことなどですが、これらの条件を満たしていると思われる場合でも、生活保護は思うほど利用されていません。
② その理由ですが、生活保護法4条2項は、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行なわれるものとする」とし、同条3項は「前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない」と規定します。
③ つまり、扶助できる親族(直系血族及び同居の親族、民法730条)がいるなら生活保護を受けられない可能性があるので、生活保護の申請を受けた市役所等は、扶養義務者に対して義務履行の可能性を照会します。
④ しかし、たとえば独居の高齢者の中には、直系卑属や兄弟姉妹と絶縁しているケースも多く、(兄弟姉妹に対しては特に)自分が生活保護を受けようとしていることを知られることを望みません。よって、生活保護受給の要件を満たしているにもかかわらず、その申請を思いとどまり、あるいは撤回するケースが多いのです。
⑤ そこで、令和3年3月以降、本人が扶養義務者に借金を重ねている、扶養義務者と相続を巡って対立している等の事情がある、扶養義務者と縁を切っている(10年程度の音信不通)など、著しい関係不良があると認められる場合には、扶養義務者による扶養義務の履行が期待できないとして扶養義務者に対する照会は不要とされ、同年3月26日付の厚生労働大臣からの通知(事務連絡の改正)でも、この点が確認されました。
⑥ しかし、現実の市区町村の窓口では、旧態依然と扶養義務者への照会を行わないと申請を受け付けないという問題があるようです。
⑦ 法テラスの事業として、弁護士が生活保護申請等を援助する制度を用意しています。この制度によれば、生活保護の申請手続の相談や代理交渉が原則として無料で行えます。

【終活・遺言・相続相談】相談例21 生前整理

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【終活・遺言・相続相談】相談例21 生前整理についての記事です。

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【相談内容】
相談者(75歳男性)から、「1週間前の検査でガンの転移が見つかった。既に遺言書は書いているが、妻子に迷惑をかけないよう、他にやっておいた方がよいことを教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
遺産の処理については遺言書で対応できますが、それ以外にも相続開始後に遺族が難題に直面することがあります。いざというときに遺族や周囲の方が困らないよう、相続財産を明らかにし、身の回りのものを整理し、利用しない不動産・動産や海外資産などは処分し、これまで放置してきた問題を片付けるように勧めます。相談者本人がショックを受けているようであれば、説明には気遣いが必要です。

【1】財産の特定

① 一般に、高齢者は、推定相続人に対して自分の財産の内容を明らかにしない傾向があります。子供たちが財産を狙っているのではないか、財産が少なければ、ぞんざいに扱われるのではないかという不安が先立つからです(逆に現金を見せびらかして、関心を引こうとする場合もあります)。
② そのまま相続が開始すると相続人らは遺産の調査に手間取り、準確定申告や相続税申告が滞ったり、ほかの共同相続人(兄弟姉妹など)が被相続人の財産を隠している(あるいは生前贈与を受けた)のではないかと、疑い出すこともあります。
③ それは相続紛争の種になりますので、相続人に遺産の内容が分かるようにすることが望まれます。遺産は遺言書に明示しておくことが基本ですが、エンディングノートや手帳などに遺産の詳細を記載する方法もあります。

【2】エンディングノート

① 「エンディングノート」は、やがて迎える死に備える自身の希望などを書き留めておくもので、各種のエンディングノートが書店で販売されています。終活セミナーや社会福祉協議会や地域の高齢者の集いなどで配布されることもあります。
② エンディングノートに書き留める項目としては、財産の内容、葬儀の希望やその際の連絡先、自分史、感謝の気持ちなどが代表的です。
③ しかし、一人でエンディングノートを書いていると、つい、遺言めいた内容(たとえば、自社の株式は長男に譲りたいなど)を記してしまいがちです。そうなると、これは自筆証書遺言として有効か無効かという問題が生じますし、他に有効な遺言がある場合、その文言が不明確な場合には遺言内容の解釈指針として用いられる可能性があります。
④ また、相続人に対する不満や愚痴を書けば、争族の種になることもあるでしょう。したがって、エンディングノートを利用する場合には、そのようなリスクがあることを説明します。

【3】身の回りの動産の整理

① 高齢になるほど身の回りの整理が上手く出来なくなり、不要な物が増えます。ゴミ屋敷のような状態になる前に不要なものを整理しておくべきでしょう。
② 特に80歳を超えると自分で物を捨てることが困難になってきますが、相談者はまだ75歳と若いので、自分でできるはずです。年賀状の打ち切りの挨拶や、利用していない契約の解約処理なども検討すべき点です。ペットの世話については、負担付遺贈やペット信託といった方法もあります。

【4】不動産の生前整理

① 郷里に先祖伝来の実家や田畑があるが、しばらく帰っておらず、現状が分からないといったこともよくあります。しかし、放置しておくと、遺産分割では相続人が郷里の不動産の取得を嫌がり、その不動産の押し付け合いになります。
② 郷里の実家が倒壊等の危険のある特定空き家等となった場合には、市町村が立入調査し、指導、勧告、命令等の経過を経て強制的に解体を代執行されるという手段が用意されています(空家等対策の推進に関する特別措置法)、令和3年民法改正により、管理不全土地管理命令や管理不全建物管理命令の制度が用意されましたが、手間がかかることには違いありません。
③ 先々代、先代の相続で土地の所有権移転登記手続をしていなかったというケースもあります。これに対しては、登記名義人の死後長期間に渡り相続登記されていない土地につき、登記官が法定相続人を探索し、職権で長期間相続登記未了である旨を登記に付記して法定相続人の登記手続を促す等の措置が講じられました(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等)。
④ 令和3年民法改正により、所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令が創設され、相続登記や住所変更登記も義務化され(不動産登記法改正)、相続土地国庫帰属法により、条件次第で相続土地を国庫に帰属させる道も用意されましたが、いずれも相当手間がかかります。
⑤ 共有不動産の処理、私道・里道・水路敷の処理、筆界特定なども将来問題になります。したがって以上のことに心当たりがあるのであれば、使用されていない建物は解体し、土地は先代の相続を原因とする所有権移転登記を経て、郷里の不動産を隣家などに譲渡又は贈与するなどして、身軽になることをお勧めします。

【5】祭祀承継

① 郷里に相談者の父母や祖父母の眠るお墓がある場合、相談者もそこに入るのか、入るのならその祭祀承継はどうするのかも考えておく必要があります。
② 相談者は郷里のお墓に思い入れがあったとしても、子どもたちは都会に住んでいて里帰りすることもないし、村落共同墓地の場合そこの掃除も期待できないなら、いっそ墓じまいして、子どもたちが訪問しやすい場所で永代供養しておくことが望ましいかもしれません。

【6】デジタル遺産に関する生前整理

① 比較的新しい問題ですが、デジタル遺産があるのであれば、その対応も必要です。オンラインのデジタル遺産には、SNSアカウント、ブログアカウント、暗号資産(仮想通貨)、メールアカウント、アフィリエイトアカウント、FX取引アカウント、蓄積データなどが挙げられます。これらには所有権や著作権を観念できませんし、債権というわけでもありませんが、それに経済的価値があれば相続財産に含まれます。
② しかし、相続人がデジタル遺産の存在に気づかない可能性がありますし、パソコンやスマホ等の端末のパスワードやアプローチの方法が分からなければ、デジタル遺産を捕捉し、現金化できません。
③ したがって、生前整理としては、あらかじめ金融資産化するか、相続人に対してデジタル遺産の存在を知らせ、パスワード等と共に現金化や名義変更の具体的な方法を指示するように勧めます。
④ オンライン上のデータの消去や処分を希望する場合には、エンディングノート、死後事務委任契約などにより必要な情報を添えてデータ処分(抹消)を依頼すべきですが、それも生前に行なっておく方が確実です。

【7】海外資産

① 相談者が海外資産を所有しているときも、その内容を明らかにしておく必要があります。本来相続については被相続人の本国法によりますが(法の適用に関する通則法)、遺産たる不動産には所在地法が適用されることもあります(英米・中国法など)。
② その場合は現地の裁判所で検認裁判を受ける必要があり(プロベート手続き)、当地在住の弁護士に依頼するなど複雑な手続きが必要です。よってこのような海外資産もあらかじめ処分することをお勧めします。

【8】特別受益の整理

① 相続では、頻繁に特別受益が問題になりますが、数十年も前の贈与では、遺言者もはっきり覚えていないことが多いでしょう。そこで、いつ、だれに、何のために、いくら贈与したのか、持戻し免除するのか否かについて、整理して記録を残すように相談者にお勧めします。

【9】債務の整理

① 相続開始時に債務が残っていると、その負担を巡って相続人がもめるリスクがあります。ですから、できるだけ繰上弁済しておくべきです。例えば、その借入金がアパートなどを建築する費用に使われたなら、遺言で建物を取得する相続人に負担させるのが合理的です。
② 借入金返済が厳しいなら、自己破産、任意整理などの方法により債務整理しておくことをお勧めします。相続開始時に債務が上回るのなら、迅速に相続放棄できるよう相続人に知らせておきます。